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「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和六年(2024年)10月6日(日曜日)
通巻第8446号
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犯罪集団、地下銀行は暗号通信、違法両替商、ダミー預金
マネーロンダリングの実態解明、依然として道半ば
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FBIが中国人スパイやロシア・マフィアに対する捜査で、主眼としているのは表向き、麻薬密輸である。しかし真の狙いはマネロンである。
地下銀行を通じて、流れ込み、流れ出る巨額はアメリカ経済をゆすがしかねないほどの規模であり、それも年々歳々拡大し、手口は巧妙となってネットでは暗号が使われ、しかも暗号ソフトはロシア製が卓越しており、ハッカー技術は中国の軍の部隊が実績を誇る。
この稿を書きながら筆者が連想したのは、最近のハリウッドのスパイ・アクション映画の印象的な場面だった。たとえばデンゼル・ワシントンの『エクタリアン』シリーズでは、マネロンのアジトはぶどう園である。必ず登場が、おきまりの怪しげなバアだ。
マギーQ主演の『マーベラス』では、連絡網に使われたアジトは古書店、クリーニング店、食肉加工場だった。マーク・ウォールバーグ主演の三重スパイを描いた『マイル22』ではフードセンターなどだった。
まさしくNYホークル州知事の元秘書だった中国人女スパイ、孫文の夫君は食肉加工の経営者だった。台湾代表が申し込んだNY知事との面会を、かってに断って中国の外交に貢献したなどは『微罪』でしかない。それくらいのことで豪邸を購入し、ハワイに別荘が建てられるほどの報酬はない。夫君はダミー口座など83の銀行通帳を保有していたという。FBIの狙いはマネロンの隠れ蓑が食肉工場ではないかと踏んでいるようだ。
ロシア・マフィアがマネロンの舞台としていたのはキプロス、マルタ、ドバイである。ロシア人富豪たちの在欧資産、3000億ドル強が凍結された。これらは口座の存在がばれたからで、ほかに相当額が地下銀行を通じて隠匿されていると推測できる。
2024年10月になって、ロシアの法執行機関は、「ユニバーサル匿名決済システム」(UAPS)と暗号通貨取引所「CRYPTEX」を提訴した(『モスクワ・タイムズ』、10月2日)
中国人経営のバイナンスも手入れを受けたし、ロシア実業家デュロスの暗号通信アプリ「テレグラム」もマフィア、ギャング、テロリストが利用していたが、それを放置したとしてフランス官憲はデュロスを拘束している。
暗号通信によるマネーロンダリングは世界で猖獗している。
こうした匿名決済システムは、サイバー犯罪者に送金やマネーロンダリングのサービスを提供していた。「CRYPTEX」 は、顧客確認のコンプライアンス要件を満たす個人情報を提供しなくても口座が開設できるほどに杜撰だった。犯罪集団にはコンピューとのプロが雇用されており、銀行業務に関する豊富な知識を利用し、2013年にUAPS、CRYPTEXなど33の関連サービスを創設した(CRYPTは暗号の略)。
表向き、通貨両替、ビットコイン等の暗号通貨取引、送金と現金の授受。うらでは偽造口座の銀行カードや個人口座の転売など違法行為を行っていた。犯罪収入を合法化するためマネロンの巧妙化であり、そうしたイノベーションを実現したのが、サイバー犯罪者やハッカーだった。
ロシアでは、これまでに判明した不法行為で1120億ルーブル(11億8000万ドル)の取引がなされ、ギャング団の収入は米ドル換算で3890万ドルと計算された。
さきの中国人スパイ夫妻のマネロン捜査は、これからが本番である。
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