パルデンの会

チベット独立と支那共産党に物言う人々の声です 転載はご自由に  HPは http://palden.org

拉致問題アワー】ソウル国際会議報告と衆院委員会での訴え その4



その4

ところが金正日は一人で出てきたのです。北の人たちは、金正日の夫人が誰か
ということを知らないのです。金正男の母親、成恵琳の友だちが韓国に亡命して
いる。私も知り合いですが、その女性が平壌である時、成恵琳と会うことになっ
て、「今度私は金正日の公邸に入ることになったの」と言われています。その後、
その人は何の理由も示されないで収容所に入れられた。色々賄賂などを使って出
ることができた時に、「出てからもそのことを他人に言うなよ」という命令を受
けた。それではじめて収容所に入れられた理由が分かったということです。そう
いうことを手記に書いていますが、つまり夫人が誰かということを知ったために
収容所に入れられるくらい金正日の私生活は秘密なのです。ところが今度は、金
正恩が息子だということを宣伝しなければならない。

洪 西岡先生が言ったその人の夫は処刑されたのですが、処刑されたのは有名な
(拉致実行犯の)辛光洙の密告によるものです。そして二人は粛清された。金正
恩の場合は、まず人民に説明をしなくても父は金正日だということはみんな分か
りました。顔がおじいさんに似ているし。問題は、母が誰かが説明できないこと
です。私も興味深く見ていますが、果たして平壌当局はこれから金正恩の母をど
のように説明するのか。生まれた場所は今聖地化しているという話があります。
さらに、新しい三代目の指導者は結婚しているのか。子どもがいるのか。すべて
について北は、説明のしようがありません。こういう指導者を人民が受け入れる
ことはありえないことです。

実際どういうことが起きたかというと、1か月前から、金正恩の太った姿を登
場させます。わざとやったのかどうか分かりませんが、彼らは祖父の金日成を連
想させる作戦でやっているのでしょうが、どういうことが起きたか。今、北では
今日の韓国ドラマが明日は見られるという時代です。韓国では、「太ったクマ三
匹」という童謡があります。北朝鮮の中学生が、韓国のこの童謡を歌ったら保衛
部に連行されました。中学生が政治的な意識で歌ったかどうかは分からないので
すが、「おじいさんグマ、おとうさんグマ」というような風に歌ったのです。そ
して厳しい取調べを受けたそうです。まだ子どもですから釈放されたと韓国では
報道されています。

◆これから本格的な粛清が始まる

金正恩党中央軍事委員会の副委員長ですが、北朝鮮で軍内に私的な組織があ
るかどうかの厳しい検閲が始まったそうです。これから本格的な粛清が始まると
思います。つまり、今金正恩体制を作るためには、子どもの童謡にまで神経を使
わなければならない。軍では今、金正恩副委員長に忠誠を誓う集会が全国的に展
開されているそうですが、その結果は大規模な粛清につながると思います。

10月には労働党創建65周年記念で、特に金正恩の登場を祝賀する特別の配給が
ありました。いわゆる下賜品ですが、コメや肉や菓子の特別配給です。その直後、
多分備蓄が底をついたのか、南北離散家族の再会を続けたいならコメ50万トン、
肥料30万トンを出しなさいと言ってきました。

このすべての条件が満たされないと、金正恩体制が最終的に成功するかどうか
は分かりませんが、出発すら危うくなっているのです。

◆1回しか会えない離散家族再会、手紙もだめ、面会料一人7千万円

西岡 さっきの離散家族のことですが、日本人の常識では、離散家族が再会すれ
ば、その後手紙のやりとりくらいはできるだろうと思われるでしょうが、できな
いのです。再開して3日間会ったらそれで終わりです。住所の交換は許されない。
その後、誰かが亡くなったとしても、連絡できない。1回だけ会うだけで、ひど
い時はテレビ電話で会うだけです。それで北が費用を取ります。外貨稼ぎのため
に1回だけ会わせるのです。それも思想的に大丈夫と選ばれた人だけです。

以前は平壌とソウルでやっていたのですが、ソウルを見てしまうと、いくら思
想的にいい人でも動揺してしまうから金剛山でやることになった。金剛山の使用
料もドルで払う。1回会ったら終わりで連絡もできない。こんなのが面会と言え
るか。金大中以降の南北対話の成果とはこういうことです。

韓国政府は、拉致問題の方針は、離散家族の枠内で解決すると言っていますが、
離散家族問題も1回会うだけで解決しないのです。なぜこのようなことをするの
かというと、北朝鮮当局が、お金は欲しいけど情報が入るのは怖いということで
す。北の人民が動揺するのを抑えなければならない。ソウルを見てしまったら、
みんな金賢姫になってしまう。騙されていたことに気づくのです。そうでなくて
もみんな気づき始めている。ソウルに行ったらそこで脱北する人が出てくるかも
しれない。しかし止められないのは現金がほしいから。

洪 北のことを申し上げたのは、こういう事情が分からないと、例えば北は拉致
問題にどう反応したかを我々が把握しないといけない。

韓国政府が離散家族の面会で北に支援した代価は、一人当たり平均9億ウォン
です。7千万円くらいですね。1回だけの面会料が一人7千万円です。ただの1回、
動物園の檻の中の動物を見るような面会で一人7千万円払ってきました。

西岡 太陽政策以降の支援額÷面会者数ですね。

洪 そうです。まだ、
今年3月の天安艦撃沈事件への報復がなされていないので
すが、ソウルの一部では、来週、金持ちの20か国(G20)がソウルに集まり、ま
た横浜に行きますが、金正日の配下が、天安艦撃沈事件の出口戦略として、離散
家族再会をやったのです。南北が離散家族面会を再開したから、天安艦のことは
終わったことにしましょう、ということです。その時期に丁度、国際拉致解決連
合のソウル大会が開催された。

◆韓国では拉致問題はまだ超党派になっていない、「戦争になる」と親北

西岡 韓国政府は、統一部が後援を付けたのです。北を刺激して離散家族の面会
ができなくなると怖がってやらなかったかもしれませんが、もう「被害者家族を
支援する」という法律ができていることもあり、また国会議長や院内総務が会っ
てくれた。しかし、限界は、韓国の第一野党である民主党は誰も出てこなかった。
つまり、韓国では拉致問題はまだ超党派になっていないのです。民主党ともっと
左の民主労働党は拉致よりも対北支援が重要という姿勢を未だに貫いています。

洪 民主主義制度というのは、国会で議論した上での多数決です。第一野党の民
主党は議席の3分の1もないのですが、これが徹底的に物理的に抵抗すると、議論
ができない。その民主党を、金正日を支持する多くのメディアが応援する。例え
ば、2004年に盧武鉉大統領を憲法によって国会で弾劾しました。すると左翼のメ
ディアは「これは議会クーデターだ」と宣伝しました。

西岡 私もその時ソウルに行ってテレビを見ていました。国会で議員が投票する
と、野党の民主党の議員が前に出て、「国民のみなさんすみませんでした。また
クーデター勢力がこのように悪夢を呼び起こしてクーデターを行いました。街頭
に出てください」と言いました。しかし、議会を軍隊が占拠したらクーデターで
すが、議会で多数決をするのがクーデターだと言うのです。するとテレビが、
「クーデターだ、クーデターだ」と言って、「クーデターが起きた。だから投票
に行ってください」と言うのです。国会議員選挙の前でした。「投票に行ってハ
ンナラ党に鉄槌を加えてください」と言うのです。クーデターが起きたら選挙な
んかないはずですから、ただ選挙運動をやっていただけなんです。

洪 その時ハンナラ党がきちんと対応しなかったために、2か月後の選挙で野党
に転落します。「クーデターだ」と煽動した側が大勝利しました。ポピュリズム
とか宣伝扇動は恐ろしいものです。今の時代は有権者の投票行動が一番問題です。

西岡 もう一つあります。「天安艦爆沈は北がやった」と韓国政府が発表した後
に、統一地方選挙がありました。ソウルなど大都市の市長、道知事、地方議会を
一緒にやりました。従来の韓国の政治では北朝鮮が強硬なことをやると、ハンナ
ラ党系、つまり全斗煥大統領の流れを汲む与党が勝ってきました。例えば大韓機
事件の後は「意図的に与党側がでっちあげをしたので盧泰愚が勝ったのだ」と北
が言いました。従って今回もハンナラ党が勝つと思われたのに、韓国の政治史で
は初めて北が挑発をしたのに与党が負けた。

これはなぜか。「なぜ軍事挑発が起きたのか。太陽政策をやめたからだ。北朝
鮮が機嫌をそこねて挑発をしたんだ」と。つまり、「ハンナラ党政権が太陽政策
をやめると北は何をするか分からない。戦争になる。ハンナラ党には南北対話が
できない。北が拒否する。だからハンナラ党だと戦争になる」と言ったのです。
「戦争は嫌だ」と多くの人が騙されて、結果として負けた。北にやられたのに中
途半端にしかけしからんと言わなかったので負けたのです。

朝鮮学校の教科書は平壌の統一戦線部が検閲し、印刷する

洪 似たような現象は、今、日本が北に制裁措置をとっていながら、朝鮮総連
高校に国庫補助するというのは、話にならないことなんです。教育の内容は見な
いということに賛成する方と反対する方は、日本ではどちらが多いですか。

西岡 今日の衆議院の拉致特別委員会に参考人として呼ばれました。資料を持っ
てきていいということでしたので、朝鮮高校の教科書に拉致問題がどう書いてあ
るか、大韓機事件をどう書いてあるかを配って紹介しました。これは萩原遼さん
が翻訳したものですが、拉致問題については金正日が認めたことを書かなければ
ならないわけです。それは書かず、「日本当局は『拉致問題』を極大化し、反共
和国、反総連、反朝鮮人騒動を大々的に繰り広げることによって、日本社会には
極端な民族排他主義的な雰囲気が作り出されていった」とだけ書いてあります。