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国際社会を罵る中国


殺虫剤をかけられた 獣の息の根を止めるには 内から更なる抵抗の火が必要である

国際社会を罵る中国 劉氏平和賞、独断的な持論展開

2010.12.8 21:30 産経新聞
 【北京=川越一】中国の民主活動家、劉暁波氏へのノーベル平和賞授賞式を10日に控え、中国政府が態度を硬化させている。国家政権転覆扇動罪服役中の劉氏への授賞を「圧力」と断じ、「主権への干渉だ」などと国内外に向けて“持論”を展開している。
 10日にオスロで行われる授賞式は、史上初めて受賞者や代理人、親族不在で行われる。中国政府は劉氏本人や妻、劉霞さんばかりか、出席を希望する関係者の出国も制限。中国外務省の姜瑜報道官は7日の定例記者会見で、中国政府の方針に疑念を示す国際社会を「自作自演の反中の茶番劇をやっている」と罵(ののし)った。
 姜報道官は「ノーベル賞員会の決定に反対する中国の立場に100以上の国・組織が支持を表明している」との主張を繰り返している。ロシアやイランなど19カ国が授賞式を欠席するが、いずれも中国と政治的、経済的な結びつきが強い国々だ。中国政府は「根拠がある」といいながら支持国リストの公表を拒んでおり、「100以上の国・組織」の多くが、中国の援助に頼る発展途上国である可能性が高い。
 中国政府がことさら「10日」に神経をとがらせるのには理由がある。同日は、劉氏への授賞理由となった「08憲章」発表から2周年にあたる。授賞式をきっかけに民主化機運が高まることを警戒しているとみられる。
 姜報道官は「劉暁波問題を借りた言いがかり、内政と司法主権への干渉に断固として反対する。器量が小さい反中の人々の妨害は受けない」とけんか腰で牽制(けんせい)。インターネット上には、「ノルウェーは無脳な米国の傀儡(かいらい)」「ゴミのような賞。反共の政治の道具」など、政府の姿勢に感化された書き込みが寄せられている。


【劉氏平和賞】民主化促進こそ日本最大の安保 池上雅子ストックホルム大教授

2010.12.8 21:17

 中国の民主活動家、劉暁波氏のノーベル平和賞受賞は待ちに待った朗報だ。欧米の識者やNGOの間では、中華人民共和国建国60周年、チベット蜂起50周年、流血の天安門事件20周年という象徴的な2009年に劉氏が平和賞を受賞するだろうとの期待が高かった。北欧では、中国が選考委員会を恫喝(どうかつ)しているという兆候やうわさがあり、昨年はそうした圧力に屈したことをカムフラージュするためにオバマ米大統領の唐突な平和賞受賞となったという見方すら出た。

 胡錦濤政権は言論情報統制を一貫して強化しており、国際人権団体によれば中国国内には5600人の良心の囚人がいるとされる。劉氏夫人のように自宅軟禁されている犠牲者は数限りない。当局の不当な土地接収への抗議や法輪功で弾圧された人々の弁護を引き受けた人権派弁護士・高智晟氏は4年前に逮捕され、激しい拷問の後、いまだに消息を絶ったままだ。彼の妻子は北朝鮮脱北者ルートで命がけの中国脱出をした。

 近年、中国政府は世界中の大学内に孔子学院をつくり海外における中国研究教育を北京政府が統制、政府系論客を頻繁に海外に送り出すのみならず西側の多くの研究者や専門家を取り込んで「多極化」「平和的発展」「G2(米中協働)」などの修辞概念を喧伝(けんでん)し中国台頭が抵抗なく受け入れられる国際世論を醸成しつつある。

 「世界革命」普及を図った旧ソ連のモスクワ・コミンテルンを彷彿(ほうふつ)とさせる一方、マスメディアの取り込みや教育文化事業の活用など米国の洗練されたソフトパワーの手法も取入れている。こうした中国の国際的影響増大に伴い、世界的な民主主義の退潮や深刻な人権侵害が拡大している。

 共産党一党独裁体制を維持する中国は市場経済を導入した今も共産党政府機関が国富と主要産業の大半を掌握するレーニン主義国家だ。共産党政府が一元的に権力・資源を掌握する凝集性が、対外的には経済・軍事・外交手段を効果的に総合した膨張主義を可能にしている。「1949年以降中国は米国に次いで最も多く武力紛争を引き起こした国で、しかも苛烈(かれつ)な武力手段に訴える傾向がある」という米ハーバード大の中国研究の権威、ジョンストン氏の研究もうなずける。

 民主化は程遠いにしろ、中国の政治自由化すなわち共産党一党独裁の終焉(しゅうえん)は、中国の対外的膨張を抑止する効果がある。換言すれば、中国の民主化は道義的に正しいのみならず、中国脅威にさらされる日本にとって最大の安全保障なのだ。

 その中国の暴走を止める千載一遇の機会が89年の天安門事件だった。中国経済開放改革の真の立役者だった趙紫陽総書記が失脚しなければ、おそらく「中国のゴルバチョフ」となって共産党一党独裁体制を終焉(しゅうえん)に導いていたであろう。だからこそ、軍部と共産党保守派の全面的支援を受けたトウ小平氏(当時党中央軍事委員会主席)は戦車で民主化運動を粉砕し、趙氏を粛清した。趙氏はその逝去まで15年間も自宅軟禁下に置かれた。

 ところが西側諸国は「中国のアウン・サン・スー・チー」となった趙氏の受難を黙殺し、トウ小平氏ら中国共産党指導部への接近にきゅうきゅうとしていた。短期的利益追求が長期的安全保障を損ない、外国資本の産業投資が共産党政権を支えてきた。巨額の対中国経済援助投資の結果は、品質価格低下と模倣品氾濫による日本製品ブランド失墜、価格破壊の中国製品過剰供給による長期デフレ、そして日本を脅かす軍事大国の出現だった。中国共産体制の矛盾が限界に達しつつある現在、日本は同じ過ちを繰り返してはならない。

 かつて日露戦争時、駐露公使館付武官だった明石元二郎大佐(後に大将・台湾総督)はストックホルムを拠点に巨額の機密費を駆使、当時ロシア支配下にあったフィンランドの地下独立運動をはじめ欧州全土の反帝政勢力を支援結集し、後方攪乱(かくらん)で帝政ロシアの対日戦争継続を困難にした。明石大佐の知謀を想起し、中国内外の批判勢力と連帯して中国民主化を促すことが、日本、ひいてはアジア全体の平和と真の繁栄につながるのではないだろうか。

 ■いけがみ・まさこ 東京都生まれ。ストックホルム政治学部教授。同大アジア太平洋研究所(CPAS)前所長。東大大学院人文社会系研究科とウプサラ大学平和紛争研究所で博士号取得。
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