パルデンの会

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小沢裁判の 果てに?????

勝谷誠彦氏の有料ブログより


判決の内容について小沢さんの周辺では不満もあり、大マスコミや野党はあちこちほじくりかえして批判材料にしようとしているようだが、私はある種の裁判官の誠実さが出ている判決だと評価する。それまで検察や検察審査会の悪辣さを、さんざん見せつけられて来たからなおさらだ。裁判所はむしろ司法に対する不信をいくらかでも軽減するために判決文を書いたようにすら思う。
 <小沢元代表裁判「判決骨子」全文>
 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120426/k10014737421000.html
 <関係5団体における経理事務や日常的、定型的な取引の処理を含め、社会一般の組織関係や雇用関係であれば、部下や被用者が上司や雇用者に報告し、了承を受けて実行するはずの事柄であっても、石川ら秘書と被告人の間では、このような報告、了承がされないことがあり得る。
 しかし、被告人の政治的立場や、金額の大きい経済的利害に関わるような事柄については、石川ら秘書は、自ら判断できるはずがなく、被告人に無断で決定し、実行することはできないはずであるから、このような事柄については、石川ら秘書は、被告人に報告し、了承の下で実行したのでなければ、不自然といえる。>
 要するに「感想文」なのである。「フツーの市民感覚で言えば、知らないわけないでしょ」ということだ。さきほど「誠実」と書いたのはそういうことであって、こうした部分に触れなければ今度は裁判所が大マスコミにバッシングをされたことだろう。
 とはいえそこから大マスコミのように愚民の劣情をあおっての人民裁判の方に行かなかったのが今回の判決だ。
 <このような被告人の故意について、十分な立証がされたと認められることはできず、合理的な疑いが残る。
 本件公訴事実について被告人の故意及び石川ら実行行為者との共謀を認めることはできない。>
 「おい、うまい方法はないか」と犯意を持って小沢さんが指示を出したのではないと裁判所は認定したのであって、この結語で充分だと私は考える。小沢さんの証言が途中で二転三転したことなども「信用できない」といったニュアンスを呼んだのだろうが、これまたそうしたことを無視すれば逆に裁判所は不誠実であったと私は思う。
 もし私が裁判長であやば、逆に世間の価値観とは離れた判決を下していたかも知れない。それは私が「小沢さんとその周囲について知っているから」だ。「小沢さんなら、そういうこともあるだろうなあ」と納得してしまうからだ。
 このあたり、先日も紹介したが秘書だった石川知裕代議士の著書、
 『雑巾がけ小沢一郎という試練
 http://www.shinchosha.co.jp/book/610466/
 を改めて紹介しておきたい。今回の判決文と同書をあわせて読むと、さまざまな腑に落ちるところがあるだろう。興味を持たれたらこちらもおすすめだ。
 『悪党小沢一郎に仕えて』
 http://www.amazon.co.jp/dp/4022508914
 小沢判決を受けて「読んでおいたらいい本」を紹介するのは私くらいだろうな(笑)。しかしこれは大切なことだ。これから小沢さんはしばらくは、日本の政治のキーマンになって行くだろう。そのための「予習」でもある。日本人は大マスコミに踊らされやすいと同時に忘れっぽい。小沢判決にしてその前のバッシングにしても、このまま裁判が続かなければ「そんなことあったなあ」になっていきかねない。
 それがもっとも危険なことだ。この機会に、好きでも嫌いでもしばらくつきあっていかねばならない小沢一郎という人物についてしっかり勉強しておきたいではないか。
 『雑巾がけ』の中で石川さんが活写する小沢さんの「アバウトさ」が面白い。たとえば指示する時に「おいあれはどうなった」としか言わない。しかも即座に答えないと怒りだす。だから秘書は「あれ」についていつも頭の中に何個か用意しているのだという。
 そういうことを知って、今回の政治資金を巡る小沢さんと秘書とのやりとりを想像するとまた別のものが見えて来るのだ。
 だがこれはあくまでも「ツウ」の見かた。「世間」の価値観とは離れていることもよくわかる。裁判所はそのあたりをも上手にすくった。言いたい奴には「限りなくクロに近いグレー」と言わせる余地も残した。小沢さん周辺ではすっきりしないと怒っている人々もいる。
 しかし無罪は厳然として無罪である。
 ある意味での「三方一両損」的な「大岡裁き」であったと私は敢えて言いたいのだが、褒めすぎだろうか。

 それにしても。まあ無罪ならこう来るだろうと予想はしていたが、昨日からの大マスコミの往生際の悪さとみっともなさ、醜態はどうであろう。
 できるだけテレビは録画し、新聞は各紙を保存しておいた方がいいですよ。そして、似たようなことが起きた時に振り返ろう。
 メディアリテラシーとしては絶好の材料だ。心ある高校や大学の先生は、ぜひとも教材にしていただきたい。
 これまでの品性下劣な煽動屋としての大マスコミをいきなり見事に体現してくれたのが、無罪の第一報を受けての最初の定時ニュースとでも言うべき、昨日11時半からのフジテレビ『FNNスピーク』だった。
 http://www.fujitv.co.jp/b_hp/fnnspeak/index.html
 判決の概要などを報じたあとで「街の声」を拾いに繰り出す。これまでさんざん使ってきた手法である。いつも指摘してきたように、最大の問題点は「編集してオンエアできる」ことだ。意図的に順番をかえ、標本数も好きに出来る。「世論」を作れるのである。
 あれは銀座だろうか。レポーターはサラリーマンをひとりつかまえた。さあ、何て言わせるのか。「言わせる」というのは、編集してそれをトップに使うということがいわば局の意図であるからだ。こうだった。
 「えっ?本当ですか。一般市民として許せないですね」
  ある意味でこれは歴史的な映像ではないだろうか。小沢さんをもっとも口汚く罵ってきたのはフジサンケイグループだった。それが無罪判決直後に流した映像が「一般市民として許せない」。うん、これはいい「一般市民」をさんざん煽り「一般市民」による検察審査会まで使って小沢さんを抹殺しようとした大マスコミの「第一声」してはまことにふさわしい、と思わずテレビの前で私は笑ってしまったのだった。
 朝日新聞も愉快だ。こういう怪しいオピニオンはウェブにはアップしてくれないので面倒くさいが書き写す。
 まずは1面。社会部長の山中季広さんが書いている。これまでの大騒ぎを考えると主筆クラスの「大名取」が出てこなきゃいけないと思うのだが、恥ずかしいのだろうか。タイトルは、
 <勝者なき無罪判決>
 おおっ。私の「三方一両損」にどこか通じるではないか。記事はいきなり検察批判から始まる。
 <小沢一郎氏に対する無罪判決は、そのまま検察に対する有罪宣告と読むべきである。検察官十数人を投入した小沢一郎氏との「全面戦争」に敗れたうえ、強引で危うい取調べの実態まで暴かれた。>
 同盟を組んでいた検察がヘタ打ったんで、可愛さあまって憎さ百倍か。内ゲバである(笑)。それにしても<小沢一郎氏との「全面戦争」>はないでしょう。司法ってそういうものなの?そうと承知して、朝日は検察が書いた絵に乗ってきたのか。このくだり、とんでもない「自供」である。結語でも危ないことを書いている。。
 <この事件で一線の記者たちは、検察内部に全面戦争派と慎重派があることをつかみ、悩みつつも慎重な報道に徹した。それでも政界内外から「検察寄り」「有罪視だ」などと批判を浴びて、また悩んだ。>
 どの口で言う。これまでの記事を目の前に積み上げてやろうか。許しがたいのは検察内部の対立を知りながら、その事実を報じなかったことだ。「検察自身の主導権争いで、ひとりの政治家の運命が決められるのはおかしい」と書くのが「第四の権力」たるメディアの仕事ではないか。悩んでいる場合ではない。そんな惰弱な徒はとっとと記者をやめろ。発言者というものは、取材対象以上にあらゆる罵詈雑言を浴び、デマの嵐を受け、運がなければ抹殺されていくものだ。
 全く守ってくれる組織もコネもない三文コラムニストですら3年間そうしてきたのだ。「天下の」朝日新聞が泣き言を言うな。
 2面にようやく政治部長が登場した。曽我豪さんである。タイトルは、
 <市民感覚に根ざした政治を>
 出たよ。市民だよ。
 <そもそも、一裁判で司法が下す無罪か有罪かの判断で、国家運営の基盤をなすべき重要法案行方が変わったり、時の政権の力が浮き沈みしたり、つまりは立法と行政がふりまわされてしまう現実のほうがおかしい。>
 ちょ、ちょっと待った。正気で言っているのか。自分たちが書いたものって、朝日は読み返さないの。「ふりまわし」てきたのはあんたがたじゃないか。で、結語。
 <小沢氏の動向より、もはや政党政治の行方を追うべき場面である。>
 もう今日何度目かだが、どの口で言う。これまでの報道に対する反省はゼロの開き直り。じゃあ、今後は小沢さんを巡る政局をわあわあ騒がないんだな。この朝日の政治部長による宣言、よく覚えておきましょう。

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