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張氏処刑に拉致解決の「機」


★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2013.12.20-2)

張氏処刑に拉致解決の「機」
探れ 西岡力-参考情報


以下は、本日平成25年12月20日の「産経新聞」の【正論】蘭に掲載され
西岡力救う会会長の論文です。参考情報として送らせていただきました。

■張氏処刑に拉致解決の「機」探れ 西岡力-参考情報

【正論】張氏処刑に拉致解決の「機」探れ 東京基督教大学教授・西岡力

北朝鮮金正恩第1書記の後見役とされた張成沢国防副委員長の処刑は、日本
拉致問題にどんな影響を与えるのだろうか。

≪ピンチと同時にチャンスも≫

安倍晋三首相は直後の16日に、「(北朝鮮に)今とっている政策を変えなけ
れば将来はないという決意をさせるため圧力をかけている。チャンスがあればい
つでも話し合いたいと思っている」と政策の堅持を強調した。体制が持たなくな
るほどの圧力をかけて北朝鮮を交渉に引きずり出し、「8人死亡、拉致問題解決
済み」という姿勢の変更を迫る戦略だ。「張氏の粛清がどういう変化をもたらす
か注意深く見て分析したい。変化が拉致問題の解決につながるのであれば決して
そのチャンスを逃してはならない」とも語った。

私は、今回の処刑で拉致問題解決のチャンスとピンチが同時並行的に現れてき
たと捉える。

チャンスは、金一族の秘密資金を標的にした経済制裁の効き目が確認された点
に見いだせる。外貨枯渇で内部矛盾が強まったことが処刑の背景にはある。その
見方に立てば安倍戦略の前段はかなり成功していると評価できる。

軍部と張勢力の間には外貨獲得事業をめぐる対立があった。今回ほぼ同時進行
で情報を入手し能力の高さが再確認された、韓国国家情報院の北朝鮮情報専門家
はその辺の事情をこう分析する。

張成沢除去は、金正恩主導というよりは、軍と朝鮮労働党組織指導部、国家安
全保衛部など保安機関の強硬派が主導し、金の許可を得てなされたと見るべきだ。
張は金登場後、3代目偶像化作業に約5億ドルを使うなどし、外貨調達が難しく
なると軍が運営する外貨稼ぎ事業を内閣に移管させ、反対する李英鎬総参謀長を
粛清した。軍からするとメシの種を奪う挑発だった。北朝鮮軍は外貨を稼いで部
隊を運用するだけでなく、それで将校の退職金も準備していた。張成沢が軍の怨
(うら)みを買ったのが今回の事件の最も大きい原因だ。本質は利権めぐる権力
闘争だ」(「趙甲済ドットコム」12月17日)

≪背景に軍と張派の外貨争奪≫

北朝鮮の独裁体制は、年間数十億ドルの外貨を非正規に得ることなく維持でき
ない、構造的弱点を抱える。核・ミサイル開発に必要な資材や部品、幹部らの暮
らしを支える高級な食材、日用品、ベンツなどの贅沢品の輸入で膨らむ貿易赤字
を穴埋めするためだ。

その外貨は、労働党39号室などが海外の秘密口座で管理している金一族の秘
密資金から充当されていた。財源は1980年代から90年代半ばまでは朝鮮総
連からの秘密送金だった。内閣調査室が90年代初めに調査したところ、最盛期
には年間18億~20億ドル相当が送られていた。しかし、第1次安倍政権が拉
致解決への圧力として開始した「厳格な法執行」により、総連資金はほぼ遮断さ
れた。

韓国の金大中盧武鉉両政権は98年から10年間で計100億ドル相当の支
援をした。だが、李明博政権以降は北朝鮮の挑発に対し厳しい経済制裁をかけ、
韓国からの外貨支援は開城工業団地以外はほぼ止まった。中国は最低限の重油
石炭、トウモロコシなどは与えているものの現金は渡さない。

今回の処刑の背景に、日本と国際社会による厳しい経済制裁の結果、細った外
貨獲得源をめぐり張勢力と軍部が争ったという構図が透けて見える。経済制裁
効いていて、北朝鮮は困っている。制裁を解除させるには拉致問題を動かさざる
を得ない。解決のチャンスもそこにある。

だが、体制内で強まる内部矛盾はまずは、張成沢氏処刑という陰惨な形で噴き
出した。短期的に軍部や党の強硬派の力が強まると、挑発的行動で対外威嚇して
支援を手にしようという恫喝外交を展開してくる危険性が高い。拉致問題にとっ
てはピンチとなる。

≪被害者安全確保へ警告発せ≫

数年以内に核弾頭の小型化に成功し、韓国国内の従北勢力の反米活動を極大化
させて米韓同盟を弱体化させ、対南戦争を仕掛け「赤化統一」しようと、最後の
あがきをする可能性も排除できない。その場合、対日交渉は融和路線だとして切
り捨てられよう。

さらに今後、張成沢派の大粛清が行われたりすれば、国内が不安定化して誰が
対日交渉を担うかすら分からなくなるかもしれない。人民暴動、クーデター、内
乱などの混乱が発生することも十分考えられる。すでにこの10月、米大手シン
クタンク、ランド研究所は、金正恩政権の崩壊はいつ起きるかを議論する段階で
はなく、すぐにも起き得ることを前提に準備すべき段階だと提言している。

拉致被害者の安全を確保し、全員の救出につなげるためにも、米韓両国と事態
への対応策のすりあわせを重ね、正確な情報収集に努める一方、北朝鮮の中枢部
との意思疎通のパイプを維持、確保するという取り組みが求められる。被害者の
現況を最大限把握し、被害者の安全を損ねるようなことがあれば日本政府は絶対
に許さない、という明確なメッセージを水面下で出し続けることも必要だ。(に
しおか つとむ)