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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成２５（２０１３）年１２月２３日（月曜日）
号外
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「改革は口だけ、実態は闇のなか」
△
期待された改革への取り組み、その具体的政策が三中全会（第十八期中国共産党第三回全体会議。２０１３年１１月）で披露される筈だった。世界のチャイナ・ウォッチャーは北京で開催された共産党トップ会合の決定を待っていた。
ところが発表されたコミュニケは「改革」という文言が四十五箇所並んだだけ。「司法の独立」はかすかに触れられたものの妥協の産物でしかなく、多くが失望した。そんなことより「国家安全委員会」を設置するなどと後ろ向きの政策だけが突出した。
すでに１８０００名の共産党幹部の腐敗分子(貪官、裸官)が海外へ逃げ、持ち出したカネは中国当局の公式発表で１０００憶米ドル、ＣＩＡ筋の推計は６０００億ドル（ＴＩＭＥ、６月１７日号）といわれた。最近の推定数字は１兆ドルで、共産党中央規律委員会が内部で報告している数字と華字紙が告発している。
近年頻発する連続爆破テロ事件で明らかになったことは中国共産党が一枚岩ではなく、強権による社会の安定という人工的な秩序が瓦解しつつあり、社会は不安で溢れているという「世界第二位のＧＤＰ」を誇る中国の逆さまな実態である。
第一に党内の権力闘争が収まらず、各派がてんでばらばらの行動、表現をしているという権力分散状況である。
習近平は「中国の夢」を提唱し「愛国主義による中華民族の復興」と言った。ところがナンバーツーの李克強首相は「中国の夢とはきれいな空気を吸い、安全な水を飲むことだ」と百八十度違うことを言っている。トップ二人が右と左を見ているのである。
第二は軍の動き、まさしく統制がとれていない現実が露呈しているのである。
タカ派軍人の劉亜州大将が主唱した内容は「天安門事件の反省を急ぐべきであり劉暁波を拘束したことは共産党自らを敵とした。司法は独立すべき存在で党の干渉をうけるべきではない。言論の自由を確保し、複数政党制に移行し、いずれ選挙を実施しなければならない。こうして政治改革を進めなければ次の革命に遭遇し、こんど被告席に座るのは我々になる」。
驚くべし、軍人が自由化を主唱していることになる。これは八月に劉亜州将軍が講演したもので、その講演内容が西側へ流れた。
第三は共産党高官たちの動揺である。こうなると次世代エリートの意識も急激に変化する。驚愕的な事態は党の中央学校でおきていた。中国共産党中央学校は習近平も胡錦濤も校長をつとめた名門、党のエリートが学ぶ所だが嘗てのマルクス・レーニン主義、毛沢東思想ばかりのカリキュラムが「過激なほどに改訂され、過去数年間、学生らは経済学、法律、宗教、軍事情勢、そして欧米の政治思想をも習っている。また汚職問題についても議論がなされる」（英紙『フィナンシャル・タイムズ』、９月２０日付け）
第四は大混乱を前にしての外国企業の撤退と居残り組の焦燥である。
第五に市場の反応だが、中国株式市場は過去数年低迷したまま、そのうえ中国企業のＩＰＯ（新規株主公開）が凍結されているのだ。
第六に国民心理の混乱である。農地を奪われた農民が五千万人、地方から都市へ流入した浮動層（大袈裟に言えば流民）が二億三千万人、大学新卒者（毎年７００万人）の三割強しか就労先がないという恐るべき現実！
かくて共産党機関紙、人民日報は１１月９日付けに論評を掲載して、「国内外の敵対勢力が共産党の崩壊を目論んで『党の魔物化を図っている』」などと主張した。
こうみてくると今後も連続する不測事態の始まりでしかなく、経済成長が低下して失業がますます増大し、不良債権の爆発を目の前にして、中国がますます安定を欠いてゆくだろう。この小冊は右の基本的観点からふたりで大いに語り合った。
二〇一三年師走 石平
宮崎正弘
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成２５（２０１３）年１２月２３日（月曜日）
号外
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「改革は口だけ、実態は闇のなか」
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期待された改革への取り組み、その具体的政策が三中全会（第十八期中国共産党第三回全体会議。２０１３年１１月）で披露される筈だった。世界のチャイナ・ウォッチャーは北京で開催された共産党トップ会合の決定を待っていた。
ところが発表されたコミュニケは「改革」という文言が四十五箇所並んだだけ。「司法の独立」はかすかに触れられたものの妥協の産物でしかなく、多くが失望した。そんなことより「国家安全委員会」を設置するなどと後ろ向きの政策だけが突出した。
すでに１８０００名の共産党幹部の腐敗分子(貪官、裸官)が海外へ逃げ、持ち出したカネは中国当局の公式発表で１０００憶米ドル、ＣＩＡ筋の推計は６０００億ドル（ＴＩＭＥ、６月１７日号）といわれた。最近の推定数字は１兆ドルで、共産党中央規律委員会が内部で報告している数字と華字紙が告発している。
近年頻発する連続爆破テロ事件で明らかになったことは中国共産党が一枚岩ではなく、強権による社会の安定という人工的な秩序が瓦解しつつあり、社会は不安で溢れているという「世界第二位のＧＤＰ」を誇る中国の逆さまな実態である。
第一に党内の権力闘争が収まらず、各派がてんでばらばらの行動、表現をしているという権力分散状況である。
習近平は「中国の夢」を提唱し「愛国主義による中華民族の復興」と言った。ところがナンバーツーの李克強首相は「中国の夢とはきれいな空気を吸い、安全な水を飲むことだ」と百八十度違うことを言っている。トップ二人が右と左を見ているのである。
第二は軍の動き、まさしく統制がとれていない現実が露呈しているのである。
タカ派軍人の劉亜州大将が主唱した内容は「天安門事件の反省を急ぐべきであり劉暁波を拘束したことは共産党自らを敵とした。司法は独立すべき存在で党の干渉をうけるべきではない。言論の自由を確保し、複数政党制に移行し、いずれ選挙を実施しなければならない。こうして政治改革を進めなければ次の革命に遭遇し、こんど被告席に座るのは我々になる」。
驚くべし、軍人が自由化を主唱していることになる。これは八月に劉亜州将軍が講演したもので、その講演内容が西側へ流れた。
第三は共産党高官たちの動揺である。こうなると次世代エリートの意識も急激に変化する。驚愕的な事態は党の中央学校でおきていた。中国共産党中央学校は習近平も胡錦濤も校長をつとめた名門、党のエリートが学ぶ所だが嘗てのマルクス・レーニン主義、毛沢東思想ばかりのカリキュラムが「過激なほどに改訂され、過去数年間、学生らは経済学、法律、宗教、軍事情勢、そして欧米の政治思想をも習っている。また汚職問題についても議論がなされる」（英紙『フィナンシャル・タイムズ』、９月２０日付け）
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二〇一三年師走 石平
宮崎正弘
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すでにばらばらな中国社会、共産党は指導部が分裂しており、軍人論客は自由化を急げと主張し、高官の海外逃亡によってＧＤＰの１０％の外貨が持ち出された。
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（まえがきより）
