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コラム:中国の「火薬庫」は香港にあらず

コラム:中国の「火薬庫」は香港にあらず

2014年 10月 10日 12:35 JST
 

Julia Famularo


[8日 ロイター] - 香港で民主化要求デモが続く中、その動きが中国本土のチベット自治区新疆ウイグル自治区に飛び火するのかどうかが注目されている。香港のように、こうした地域もかつて自治拡大が約束されたが、今なお完全な実現には至っていない。

1931年の中華ソビエト共和国憲法大綱は、領土内の少数民族に対し、分離する権利と自決権を認めていた。しかし、1949年に中華人民共和国が成立する時までには、毛沢東はこうした権利を撤回。少数民族の住む地域を併合し、チベットウイグル自治を認めるとした。だが、中国政府は約束した権利と自由を与えず、法の支配を守っていないという批判を受けている。


中国は、新疆ウイグル自治区チベット自治区に「一国二制度」を適用しようとはしてこなかった。1984年に施行された民族区域自治法は理論上、自治の権利をすでに保障しているため、一国二制度は適当ではないと主張している。
だが実際には、中国当局はチベット族ウイグル族に、民族的、宗教的、言語的な制約を課している。
かつて当局が無害だとみなしていた伝統的アイデンティティーの発露が、今では破壊活動の1つとみなされつつある。中国政府は国家への揺るぎない忠誠を求め、広範囲な愛国的、教育的活動を通じて「民族の団結」を訴えている。
しかしながら、この政策は効果があるとは言えず、持続しないことが証明されつつある。

習近平氏が2012年11月に中国共産党トップの座に就いて以降、抗議活動や混乱が劇的に増加。チベット自治区では、少なくとも127件の焼身自殺が発生した。その多くが自由拡大やダライ・ラマ14世の帰還を求めて自らに火を付けたが、中国当局は犯罪とみなした焼身自殺を図った人の友人や家族までが、政治的に迫害されたり行方不明になったりしている。


一方、新疆ウイグル自治区では62件の暴動事件が発生。その大半は民族間の暴力か、個人もしくはウイグル族の小集団と警察との衝突だった。当局は今年5月、「対テロ戦争」を展開すると宣言した。

少数民族が平和的に不満を表現できる効果的なメカニズムが導入されない限り、緊張は続くとみられている。だが、新疆ウイグル自治区チベット自治区、そして香港のデモや混乱の責任は「敵対的な外部勢力」にあると中国政府は断固として主張する。
こうした中国自治区は一触即発の「火薬庫」となっており、対話や改革がなされなければ、1つの衝突が大爆発を引き起こしかねない。
では、香港のデモが火付け役になり得るだろうか。そうはならないだろう。
インターネットを使いこなす上海市民の一部なら可能かもしれないが、平均的なチベット族ウイグル族が、デモや市民運動に関する情報を入手することは困難だ。
また、現地住民へのあからさまな政治圧力により、そうした問題についての議論もしにくくなっている。うわさを流布したとして逮捕される可能性もあるからだ。
ウイグル族チベット族の集団が自治区内の主要都市を占拠しようとするなら、当局は容赦しないだろう。催涙ガスだけでは済まない可能性が高く、自治区の指導部と交渉する機会が得られるとは考えにくい。
香港のような抗議活動がすぐに広がる可能性は低いが、中国政府の政策が逆効果を生み、暴力につながりかねない社会不安は今後も尽きないだろう。

亡命ウイグル人組織「世界ウイグル会議」のラビア・カーディル議長は「中国との対話」を模索し続けるとし、「われわれが独立を強く求めるなら、血の海を見ることは明らかだ。その場合、ウイグル族漢民族も同様に犠牲となるだろう」と語っている。

*筆者は米シンクタンク「プロジェクト2049研究所」のリサーチ・アフィリエイトであり、ジョージタウン大学で現代東・中央アジア政治史専攻の博士候補。
*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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