奥山恵美子仙台市長は10日の定例記者会見で、東日本大震災の集中復興期間が終了する2016年度以降の復興予算をめぐり、竹下亘復興相が全額国費負担の枠組みを見直す考えを示したことに「復興事業に時間がかかる事情を考慮せずに『残りは自助努力』というのは非常に理不尽だ」と反発した。
【インタビュー】竹下復興相の再生ビジョンとは
19年ラグビーワールドカップ日本大会の開催地に選ばれなかったことに関しては「残念だが立候補後に示された契約条件をみると、市の財政負担が青天井になると解釈できた。契約内容も外部に公開できず、市税投入に理解を得られない可能性があった」と述べた。
立候補の際、財政負担の軽減や情報開示など6項目を日本大会組織委員会に要望したことについては「自治体の説明責任を果たすためで委員会も了解した」と妥当な判断だったと強調。誘致姿勢が消極的との指摘には「契約条件の丸のみが積極的というのなら、最初からそう言ってほしい」と反論した。
【日本の議論】中国「反日」で立ち消えそうな仙台「パンダ誘致」…ここまでの“外交カード化”に反発強まる
http://www.sankei.com/images/news/150112/prm1501120018-n1.jpg仙台市太白区の八木山動物公園へジャイアントパンダを誘致する計画が暗礁に乗り上げている。奥山恵美子市長は震災復興の一環として平成23年10月に中国からパンダを借り入れる計画を正式表明。中国首脳から貸与に前向きな発言があったが、尖閣諸島問題で高まった対日感情の悪化などで話は立ち消えに。ついに市民の一部からは反対運動まで始まり、パンダの来仙に“白黒”付かない状況が続いている。(木下慧人、写真も)
パンダ誘致は震災からの復興の目玉として計画された。誘致することで被災地に活気をもたらそうとする考えだ。貸与要請のきっかけは同年5月下旬、被災地を訪問した中国の温家宝首相(当時)と被災児童の交流を仙台市の奥山恵美子市長が耳にしたこと。9月に程永華駐日大使と面会し、パンダを八木山動物公園への誘致したいとする願望を伝えると、程大使は「中国政府に気持ちを伝える」と返答した。同年12月には中国・北京で開かれた日中首脳会談で野田佳彦首相(当時)と会談した温首相からも「積極的に検討していきたい」と前向きな発言が出た。事実上のゴーサインだった。
そんな時に助け舟を出したのが大手芸能事務所「ジャニーズ事務所」だった。同事務所が設立した「マーチングJ財団」は24年6月に、資金的な支援を表明。「パンダ舎の建設費用」「日本への輸送費」「5年間の保護資金、損害賠償保険料、エサ代」を肩代わりしてもらうことになった。市も受け入れ態勢を整えるために「市ジャイアントパンダ導入プロジェクト会議」を開催。八木山動物公園では入り口付近にパンダ舎を建設する計画を打ち出し、100万人の動員(23年度は47万人)、経済効果を約50億円と見込んだ。パンダを受け入れる準備は着々と進んでいた。
仙台では歓迎ムードが高まる中、両国間では懸案が持ち上がっていた。24年9月に尖閣諸島を国有化したことを受けて、中国で反日感情が高まった。これを受けてパンダ誘致をめぐる動きは自然とストップ。市建設局総務課の湯村剛係長は「そもそも中国と本格的な協議が始まっていない段階だった」と話す。中国側との正式な協議は開始されずに現在に至っている。プロジェクト会議も24年8月の第2回会合を最後に、2年以上も開催されていない。「会議で話す内容がないので、開くことはありません」と湯村係長。せっかく作った計画も“獲らぬパンダの皮算用”となりつつある。
進まぬ交渉の中、誘致案に反対する意見も出た。市民団体「仙台にパンダはいらない仙台市民と宮城県民の会」の及川俊信代表は昨年12月、市議会へ誘致中止を訴える請願書を提出した。最終的に市議会で不採択が決まったが、市議会内部でも超党派でパンダ誘致について疑問をもつ議員もいるという。及川代表は「パンダが政争の具になっている」と訴えた。中国共産党の機関誌「人民日報」の国際版「環球時報」では昨年1月7日に、尖閣諸島の領有権の主張を理由に、仙台市へのパンダ貸し出しを否定的に報じていることなども問題点に挙げ、「仙台市が誘致を継続することで、中国がパンダを政治的・外交的な手段として利用していることに加担することにつながるのでは」と危惧する。
今年12月には仙台市に新たな地下鉄の東西線が開通し、八木山動物公園駅も作られ、アクセスは格段に向上する。東北地方に初めてのパンダともなれば観光の目玉になることは間違いない一方で、肝心の中国からの反応がない。好転する要素も昨今の情勢からは考えにくく、このままでは自然消滅するしかなさそうだ。
©2015 The Sankei Shimbun & SANKEI DIGITAL All rights reserved.
「仙台にパンダ呼ぶため募金したんじゃない!」 ジャニーズ事務所の「復興支援」に批判
マッチが5年で約50億円を全額負担表明
真彦さんがスポーツ紙各紙に明かしたところによると、2011年夏に仙台市立八木山動物公園のパンダ誘致計画が被災者からの批判もあってとん挫したことを知った。そこで、事務所の復興支援プロジェクト「Marching J」の募金をファンらの目に見える形で使えると考え、誘致資金に回せないかと提案した。そして、水面下で中国などと交渉するとともに、12月22日には野田佳彦首相に直談判した。野田首相も前向きな姿勢を示し、25日の日中首脳会談でパンダのつがいを貸与する方向になった。
ただ、パンダを呼ぶのには多額のお金がかかる。1頭年約4000万円のリース代のほか、中国からの輸送費約5000万円、飼育舎建設費、えさ代、人件費などと負担しないといけない。それでも、ジャニーズ事務所は、5年で50億円ほどもかかるという費用をすべてまかなうというのだ。募金で足りない分は、関連4社からの寄付金を充てるとしている。
こうした募金の使い方について、ネット上では、疑問がいくつも出ている。「復興に使うと言って金を集めて、パンダに使うってのは使用目的を詐称してる」「中国に金が流れるだけじゃねーか」「被災者の為になる事に使えよ・・」などだ。また、所属のSMAPが11年9月16日に北京コンサートをしていたことから、「次は嵐を呼んで貰えるようにする為の作戦」といったうがった見方まであるようだ。
パンダ来日は、5年ほどもかかる可能性
仙台市の建設局次長は、取材に対し、反対意見について、「ジャニーズ事務所への意見ですので、私どもではコメントしようがありません」と話す。事務所が中国との関係強化に利用しているのではとの指摘には、「どんなお気持ちでやっているのか私どもでは分かりません」として、コメントするのを避けた。