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中国「反日」で消えそうな「パンダ誘致」…ここまでの“外交カード化”に反発強まる


中国「反日」で消えそうな「パンダ誘致」…ここまでの“外交カード化”に反発強まる

産経新聞 1月12日(月)9時6分配信

 仙台市太白区八木山動物公園ジャイアントパンダを誘致する計画が暗礁に乗り上げている。奥山恵美子市長は震災復興の一環として平成23年10月に中国からパンダを借り入れる計画を正式表明。中国首脳から貸与に前向きな発言があったが、尖閣諸島問題で高まった対日感情の悪化などで話は立ち消えに。ついに市民の一部からは反対運動まで始まり、パンダの来仙に“白黒”付かない状況が続いている。

(木下慧人、写真も)

■話はトントン拍子に進んだが…

パンダ誘致は震災からの復興の目玉として計画された。誘致することで被災地に活気をもたらそうとする考えだ。貸与要請のきっかけは同年5月下旬、被災地を訪問した中国の温家宝首相(当時)と被災児童の交流を仙台市奥山恵美子市長が耳にしたこと。9月に程永華駐日大使と面会し、パンダを八木山動物公園への誘致したいとする願望を伝えると、程大使は「中国政府に気持ちを伝える」と返答した。同年12月には中国・北京で開かれた日中首脳会談で野田佳彦首相(当時)と会談した温首相からも「積極的に検討していきたい」と前向きな発言が出た。事実上のゴーサインだった。

 課題の一つに財源があった。パンダのレンタル料や飼育費用を合わせると年間1億円とも言われる。

仙台は東日本大震災で約1千人が死亡、行方不明となった紛れもない被災地で、沿岸部では復興工事が今も続く。政令市として東北地方の中では体力がある自治体とはいえ、余力があるわけではない。年間数億円にも上るとみられるレンタル料は、復興の妨げとなる可能性もある。

そんな時に助け舟を出したのが大手芸能事務所「ジャニーズ事務所」だった。同事務所が設立した「マーチングJ財団」は24年6月に、資金的な支援を表明。「パンダ舎の建設費用」「日本への輸送費」「5年間の保護資金、損害賠償保険料、エサ代」を肩代わりしてもらうことになった。市も受け入れ態勢を整えるために「市ジャイアントパンダ導入プロジェクト会議」を開催。八木山動物公園では入り口付近にパンダ舎を建設する計画を打ち出し、100万人の動員(23年度は47万人)、経済効果を約50億円と見込んだ。パンダを受け入れる準備は着々と進んでいた。

順風満帆に進む計画に夢が膨らむ仙台。震災復興としてのパンダといえば阪神大震災後の12年に神戸市立王子動物園に中国から2頭のパンダが貸与された歴史がある。杜の都のパンダ誕生も秒読みかと思われたが、想定外の障壁があった。

尖閣問題で音沙汰なくなる…反対運動まで

仙台では歓迎ムードが高まる中、両国間では懸案が持ち上がっていた。24年9月に尖閣諸島を国有化したことを受けて、中国で反日感情が高まった。これを受けてパンダ誘致をめぐる動きは自然とストップ。市建設局総務課の湯村剛係長は「そもそも中国と本格的な協議が始まっていない段階だった」と話す。中国側との正式な協議は開始されずに現在に至っている。プロジェクト会議も24年8月の第2回会合を最後に、2年以上も開催されていない。「会議で話す内容がないので、開くことはありません」と湯村係長。せっかく作った計画も“獲らぬパンダの皮算用”となりつつある。

進まぬ交渉の中、誘致案に反対する意見も出た。市民団体「仙台にパンダはいらない仙台市民と宮城県民の会」の及川俊信代表は昨年12月、市議会へ誘致中止を訴える請願書を提出した。最終的に市議会で不採択が決まったが、市議会内部でも超党派でパンダ誘致について疑問をもつ議員もいるという。及川代表は「パンダが政争の具になっている」と訴えた。中国共産党の機関誌「人民日報」の国際版「環球時報」では昨年1月7日に、尖閣諸島の領有権の主張を理由に、仙台市へのパンダ貸し出しを否定的に報じていることなども問題点に挙げ、「仙台市が誘致を継続することで、中国がパンダを政治的・外交的な手段として利用していることに加担することにつながるのでは」と危惧する。

ジャイアントパンダ絶滅危惧種としてワシントン条約で保護されている。条約では商業取引を原則禁止しており「復興のシンボル」「観光への波及効果」などは理にかなっていないと指摘する。

もちろん市当局も条約の存在は承知しており「誘致は繁殖・研究目的で、他の効果は付随的なもの」と反論。一方、日中の外交問題については「そもそも議論が始まっていないので、関連はわからない」とした。

■「終わった話かと…」市民も困惑 パンダは来るの?

そもそも、市民はどう感じているのか。同市青葉区の女子大生(23)は「まだ計画は続いているんですか?終わった話だと思っていた」と驚く。23年末の日中首脳会談以降、具体的な話はないため、市民からすれば「過去の話」になってしまっていた。

同動物公園を訪れていた同区の女性(56)は「パンダはかわいくて大好き。来ればうれしい」としつつも「(財団の)支援があるとはいえ、震災復興に回したほうがいいのでは」と危惧する。

最近の仙台で「パンダ」といえば、昨年7月6日に生まれた「レッサーパンダ」の双子、「コウメ」「スモモ」を指す。「ジャイアントパンダ誘致は震災直後なら盛り上がっていたが、今は時間がたってしまったと思う」と“賞味期限切れ”を指摘する。

今年12月には仙台市に新たな地下鉄の東西線が開通し、八木山動物公園駅も作られ、アクセスは格段に向上する。東北地方に初めてのパンダともなれば観光の目玉になることは間違いない一方で、肝心の中国からの反応がない。好転する要素も昨今の情勢からは考えにくく、このままでは自然消滅するしかなさそうだ。