度々指摘しているように、習近平政権の成立以来、中国は?小平時代以来の
「?光養晦」(能在る鷹は爪隠す)戦略を放棄して、アジアにおける米国主導の国際秩序の破壊と それにとってかわる中国中心の「新中華秩序」の樹立を目指そうと躍起になっている。
そして今、中国が中心となって進めている アジアインフラ投資銀行構想は、まさに日米主導のアジア経済秩序を引っくり返し、中国中心の「新秩序」を作り上げようとするための戦略と言える。
2014年4月のオバマ大統領の訪日において、「尖閣防衛」と「同盟関係の強化」を明確に訴えた日米共同声明が発表されたことはまさにその表れの1つであったと言えよう。
その一方、南シナ海において、 習政権がアジア覇権の樹立のために進めてきた、 「島嶼埋め立て」や諸国に対する挑発的行為などの一連の拡張的政策がアメリカの不興を買っただけでなく、アジア諸国の反発を招くこととなった。
今年4月に開かれたASEAN諸国外相会議が一致して中国による「埋め立て」の中止を強く求めたことからも、周辺諸国の憂慮と反発はよく分かる。
少なくとも南シナ海においては、中国こそが平和の秩序を破壊しようとする問題児として認識されているはずである。
つまり、これまでの2年間、 習近平政権は自らの進める覇権戦略のいわば「隠れ蓑」として日本との「歴史認識問題」を大いに利用してきた。
中国自身であるにもかかわらず、というよりもむしろ、まさにそれが中国自身であるからこそ、 中国政府としては自らの正体を覆い隠して諸国の目を誤摩化すためには日本の「歴史問題」をことさらに強調してそれを全面的に持ち出す必要があった。
アジア地域であることは言うまでもないが、もう1つの主戦場はやはりアメリカだ。
日本に対する警戒心を煽り立てることができれば、アメリカの中国に対する警戒がその分和らぐという算段もあり、歴史問題で日本に対するアメリカの信頼を揺るがせることによって日米同盟に亀裂を生じさせることが出来れば、習政権にとってなおさら万々歳の結果であろう。
アメリカとアジア諸国からの反発をかわして自らの覇権戦略を より進めやすくするための「環境整備」として、 歴史問題で日本を徹底的に叩くことはまさに習近平政権の既定戦術である。
今年9月3日、中国政府は「抗日戦争勝利70周年」を記念して周辺国首脳を招いて北京で大規模な軍事パレードを開催する予定だが、各国首脳を巻き込んでのこの大々的な反日イベントの開催はまさに、習政権による「環境整備」の一貫であり、その総仕上げでもあろう。
しかしここに来て、習政権のこの戦術が挫折してしまう可能性が出てきている。 中国の進める反日宣伝戦が国際的に失敗に終わってしまう流れが、米議会での安倍首相の演説によって作り出されたからである。