チベット自治区:ラサに取材旅行 さえぎられた市民撮影
毎日新聞 2015年11月18日 21時19分(最終更新 11月18日 23時45分)
【ラサ(中国チベット自治区)石原聖】中国からの分離独立運動がくすぶるチベット自治区の中心都市ラサを訪れた。17日に記者会見したラサ市トップのチョエダク市共産党委書記は「各民族の教育や交流を深め、住宅手当など一連の措置を取ってきた」と述べるなど民族融和政策の進展を強調。同自治区成立50周年(9月1日)を平穏に迎えた実績をアピールした。
同自治区では2008年3月にラサで発生したチベット族と治安当局の大規模な衝突以来、海外メディアの自由な取材は認められていない。今回は中国政府が自治区成立50周年に合わせて16〜20日にプレスツアーを実施。米国、英国、ロシア、韓国、日本など10カ国のメディア計14人が参加している。
日本メディアに同自治区での取材が許可されたのは11年8月の丹羽宇一郎駐中国大使(当時)の視察同行以来。中国政府は今月、中国の人権問題を批判している米下院民主党のペロシ院内総務らのチベット訪問も許可しており、分離独立運動の封じ込めに自信を深めているとみられる。
同書記の会見では、海外メディア記者から08年の衝突からどのような教訓を引き出し、政策に反映させたかとの質問が出たが、書記は「ダライ(ラマ)による暴力事件でひどい打撃を受けた」と述べ、経済発展に力を入れたと強調するにとどめた。
書記の会見に先立ち、プレスツアーは歴代ダライ・ラマの居城だったポタラ宮を参観し、仏画ギャラリー兼絵師養成校「チベット・タンカ画院」を訪問。絵師を目指す最年少のペマ・ドルジェさん(13)は「絵の勉強を始めて4カ月」などと取材に答えた。チベット族の院長によると、ここで描かれた仏画は漢族の個人客らに1枚数百万元(1元は約19円)で購入されることもあるといい、中国でのチベット仏画ブームをうかがわせた。