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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成27年(2015)12月6日(日曜日)
通算第4741号
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中国富豪の激しい浮き沈み
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宮崎正弘
(本文章は「北風抄」(北国新聞、11月16日付けからの再録です)
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はたして逃げ切れるか?
「中国不動産情報センター」の調査結果に拠れば中国大手不動産企業45社のうち、75%が減益となり、25%は赤字経営に陥ったという(10月14日)。
「売れ残りの在庫処分には8年から10年を要するだろう」と不動産専門家はみている。
北京では不動産の売れ残りが新築ビルの30%を占めるとも見られ、当局は頭金の低減、各種ローンの延長など、泥縄の対策を講じているが、まったく焼け石に水だ。
工事中断のビルが目立ち、夜はゴーストタウン化していることは、いまや世界周知の事実である。
不動産取得税、取引税で成り立っていた地方政府は歳入が激減しており、これは中央政府の歳入激減に繋がる。「中国の財政危機は過去三十年で最悪」(張智威ドイツ銀行ストラテジスト)。
なにしろ売れ残りだけでも、NYマッハンタンのテナント総面積の六倍というのだ。
このバブル破綻を早くから予知し、ピークのときに中国大陸で開発しためぼしい物件全てを売却して英国で不動産開発に乗り出したのが香港財閥第一の李嘉誠だった。李はうまく逃げ切った。
残る富豪らはどうしたか?
大連に本社がある「万達集団」は伝説の起業家、王健林が率いる。王は習近平に近い政商でもある。
万達集団は不動産ビジネスで急成長したが、王健林はバブルが始まる前から、不動産部門の比重を劇的に減らし、米国の映画館チェーンを買収し、ハリウッド映画界への進出を目指して映画製作会社の買収を物色した。
また深センでも中国最大の映画館チェーンである子会社を上場させ、さらに香港では巨大なショッピングモールを建設し、あまつさえ上海などにディズニーランドを模したアミューズメントセンターの経営に乗り出した。
中国のヤングに焦点を当てて娯楽産業への投資を増やし、つぎにスポーツ施設の建設を始めるという多彩な、新鮮なビジネ・モデルを構築してきた。
このように王健林は中国経済の次の着地点を誰よりも早くかぎ出して強気の投資を繰り返してきたのである。
KFCは中国子会社に売却し、米国本社は撤退を決めたが、逆に店舗を増やすのはスタバなど、つまり今後の中国は中産階級以上のエリート層がまだまた消費意欲ありと踏んでいるわけだ。
上海株暴落と人民元切り下げを契機に外国資本はほぼ一斉に中国から撤退態勢にはいり、海外華僑のあらかたは資金を引き揚げた。
げんに日本の財界は数年前から「チャイナ・プラス・ワン」を標語に中国での生産活動を縮小もしくは撤退し、アセアン、インドへ進出を加速させてきたが、逃げ遅れた企業も夥しく、上海株暴落に連動してJFE、コマツ、資生堂、伊藤忠などは株価下落に見舞われた。
『フォーブス』中国版の今年度富豪第一位は「万達集団」の王健林だった。独特の収獲とカンが冴えているようである。