「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成28年(2016)6月1日(水曜日)
通算第4915号
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トランプ陣営、はやくも組織内部が雑然・騒然、統制がとれていない ファンドマネジャー不足、選挙の軍師同士の対立
***********************アメリカ大統領選挙予備選はいよいよ終盤にさしかかり、党大会を前にして状況は刻一刻と変化している。
すでにドナルド・トランプ候補が必要な代議員の過半数を獲得しており、党大会は彼の指名追認の場となるだろう。
トランプ陣営の集金マシーンが動き出した。ビリオネアだけに、これまでは自己資金100万ドルを投じて全米を自家用飛行機トランプフォースワンで疾駆してきたが、いくら派手な記者会見で宣伝費を浮かせても限界がある。
レースから撤退した候補者の膨大な借金の一部を肩代わりしたりして支持者に引き込んだりしているため、予想以上の出費が必要となった。
ラスベガスのイスラエル・ロビィで「カジノ王」といわれるアーデルマンがトランプ陣営についたことは大きいが、かと言って、ウォール街はまだ誰もトランプ支持を鮮明にしておらず、ましてや献金した有名バンカーもヘッジファンドもいない。
共和党主流派、穏健派は依然としてトランプに距離をおいて、ひややかにトランプのポピュリズムの怪しさを眺めているというのが実情である。
冷淡な空気が支配しており、党内でも、彼の支持を表明した議員は上院議員がふたり、下院議員が三名という寂しさだ。
なぜ、こうまでトランプは共和党から嫌われているのか?
第一に彼の政治家としての資質に疑わしきことが多く、その打算的な処世にも、多くの人々が納得できない。
日本にたとえて言えば「そのまんま東」とか「横山ノック」が立候補し、ポピュリズムという嵐によって当選する可能性が高いのだが、果たして「大統領」がそれで良いのかというモラルの問題が付随する。
第二に彼はビリオネアではあっても、同時に「借金王」であり、借り入れ総額は450億ドルと見積もられている。彼の個人資産は本人の自慢では150億ドル、実際は86億ドル前後と見られるのだが、トランプは借金を膨らませつつ、不動産王に成り上がったことを寧ろ自慢し、こうした誇大宣伝のはったり屋的な性格に多くが疑問視していること。
まっとうな銀行は彼の「トランプ・タジマハール・カジノ」(アトランティックシティ)など、怪しげなホテルへの貸し付けを断っている。つまり、かれの胴元はマフィア絡み、「闇の世界」との関連が云々されている。
ちなみにアトランティックシティは「米国の夕張」といわれるほどに市財政が逼迫し、倒産の危機に直面している。ニュージャージー知事がはやくからトランプ支援に回っているのも、この問題が絡む。(同ホテルを撮影に行ったが、アトランティックシティはゴーストタウン化していたことに衝撃を受けた)。
▼トランプ帝国の闇
第三に不動産王の内実の怪しさである。世界中に建てているトランプタワー、トランプホテルの多くは、じつはフランチャイズで、かれは「トランプ」という商標のロイヤリティを受け取り、運営はまったく違う会社、デベロッパーも異なる。
ということは契約上のトラブル、金銭的ないざこざ、係争ごとは常におこり、たとえばアゼルバイジャンに建設中だったトランプタワーは90%工事が進捗した段階で「中断」されている。
パートナーは独裁者アリエフ大統領の側近で、原油代金の相場が崩れたため、工事費の調達が難しくなったからだ。
同様なことはシカゴなどでも起きている。
第四にマフィアとの面妖な関係である。
第二にも述べたように、借金の借入先、あるいは海外プロジェクトのパートナーには、マフィアに関係する怪しげな人物が多数出入りしていることだ。
しかしアメリカの大衆は気にしない。ポピュリズムとはそうしたものである。
さて選挙本番をひかえて、選対本部の陣容を見ても寄せ集め集団ゆえにいざこざ、グループ対立があとを立たず、トランプの方針と対立する幹部は「おまえはクビだ」といわれてかなりの幹部がすでに解雇された。
選対本部を仕切るのはポーランド系ユダヤ人と言われるが、組織に整合性がなく、統率できる選挙プロがほとんど見あたらない。共和党のプロが合流に二の足を踏むのも、このポイントにあると言われる。
本番をひかえて、トランプ陣営内の異様性、その選挙プロ不在の脆弱性が突出してめだつようになった。
◇○○み○○○や△○○ざ○○▽き□▽◇