パルデンの会

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中国の自称・愛国層と日本の左派・リベラル系の”奇妙なる類似性”

中国の自称・愛国層と日本の左派・リベラル系の”奇妙なる類似性”

中国の自称・愛国層と日本の左派・リベラル系の”奇妙なる類似性”
海外にまで浸透している「五毛党」の脅威 (C)孫向文/大洋図書


 こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。
 2017年5月25日、アメリカ・メリーランド大学の卒業式において登壇した中国人留学生の楊舒平という女性は、「アメリカの空気は中国より良い。私がアメリカで、性的な差別や人種差別、政治について自由に意見を語ることは夢ではない」と発言し、卒業生たちから盛大な拍手が沸き起こりました。
■一人の女子留学生を非難する愛国層たち
 楊氏は中国・昆明で生まれ育った過去を持ち、壇上では同時に抑圧された幼少期の体験を語りました。彼女のスピーチは表現・発言の自由が認められたアメリカ社会を称賛したものですが、卒業式に参加した中国人留学生たちは「売国奴め!」「お前と俺たちを一緒にするな!」「お前は中国人と名乗る資格がない!」と一斉に野次を飛ばしました。
 さらに昆明の人々の反応をネットで確認すると、「故郷の恥だ!」「私も昆明の人間だけど彼女の言葉は納得いかない」と、批判の声が巻き上がっていました。在米中国人や故郷の人々から一斉に非難を浴びた楊氏は、「大変申し訳ございません。留学体験の素晴らしさを語っただけで、祖国を貶める意図はありませんでした」と公開謝罪しました。
 今回の事態を見て、僕は「五毛党」(中共政府に有利な情報を書き込むネットユーザーの総称)の意見が海外にまで浸透していることを実感しました。

 他の例を挙げると、2010年、中国教育部はカナダのカルガリー大学を教育機構認証リストから削除しました。理由はカルガリー大学が、現在、中共政府から実行支配されているチベットダライ・ラマ法王に栄誉学位を授けたためです。
 その動向を受け、中共政府は「カルガリー大学はチベットの独立を応援した」と非難し、同大学の中国人留学生たちも「中国を侮辱するな」と一斉に批判活動をはじめました。
 僕も五毛党による被害を受けました。2013年に『中国のヤバい正体』(大洋図書)を刊行した際、在日中国人や中国のネット上には「漢奸売国奴」などと僕を罵倒する言葉が吹き荒れました。

 さらに驚いたことに、左派・リベラル系を自称する日本人たちからも「漢奸孫向文」「右翼」「ネトウヨの反中ビジネス便乗」という批判が寄せられたのです。『中国のヤバい正体』内で僕が提唱した意見は中国の人権問題、大気汚染、危険な食品問題の改善といったもので、どちらかといえばリベラル寄りのものです。それにもかかわらず、僕を右翼とレッテルを貼る日本の左派・リベラル派の対応に大きな矛盾を感じました。
 
楊舒平氏の言葉を非難する意見がある一方、中国からは「か弱い彼女に権力はない」「彼女がどうやって国を売るんだ?」と擁護したり、「愛国ならPM2.5を吸い込め!」などと非難した層を揶揄する意見も寄せられました。
 さらに五毛党を批判するために、昆明の街の大気汚染を受けて2、3枚風邪用マスクを重ねて歩いている通行人の写真を微博に投稿しました。現在の中国では五毛党のようなヒステリックな愛国層を、「中国を侮辱する」という意味の「辱華」(ルー・ファー)と同音の、「つるつるのおっぱい」という意味の「乳滑」という揶揄目的の言葉が流行しています。
 中国の問題を指摘する外国人や海外に住む中国人を五毛党らが批判した際、「乳滑了」(中国を侮辱しました)というツッコミがただちに寄せられます。つまり、現在の中国ではヒステリックな愛国層を否定する運動が発生しているのです。また、イギリスのリベラルメディアBBC通信は、今回の騒動について「文化大革命紅衛兵とそっくりだ」と批判しました。
 中国の問題を指摘する人々を攻撃する「自称」愛国層の中国人、南京大虐殺従軍慰安婦などありもしない問題を取り上げて日本政府に謝罪を要求する一方、中国の問題を非難しない「自称」リベラル層の日本人は、自国を貶める「売国奴」に過ぎません。僕は彼らの存在が日本と中国の発展を妨げていると思います
著者プロフィール
漫画家
孫向文
中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の33歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。新刊書籍『中国が絶対に日本に勝てない理由』(扶桑社)が発売中。