劉暁波氏の危機を傍観した中共政府と左派系メディア・人権団体の矛盾
2017年07月18日 12時00分 デイリーニュースオンライン
こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。
2017年7月13日、中国人として初めてノーベル平和賞を受賞した民主派作家・劉暁波氏が末期の肝臓ガンにより、中国の病院で死去しました。生前の劉氏は中国の一党独裁体制を批判した「08憲章」を提案したため、「国家政権転覆扇動罪」に問われ服役中の身で、ガン治療のために遼寧省の刑務所から病院へ移送されていました。
■デマ情報を流す機関メディア
中国国民に「真面目に治療しています」、「劉氏は快方に向かっている」「国家転覆罪を犯した人物を治療する我が国は人道主義だ」といったイメージを植え付けるためだったのでしょうが、Twitter上には劉氏の友人と夫人の劉霞氏によるライブチャットとみられる動画が投稿され、動画には「(中共政府に)外科手術や放射線治療も禁止された」という劉霞夫人の涙交じりの声が収録されていました。
また、ほかの民主活動家が指摘したように、中国政府が公開した劉氏がCT検査を行う動画は多くの疑問点が存在しました。通常はCT検査を行う際、被験者は金属類を外す必要があるのですが、劉氏は眼鏡をかけたまま検査を行っていました。実際にCTスキャナーが稼働してないことが予想され、これは劉氏に治療を施していたことをアピールする中共政府のでっち上げと言われています。
今回の事態を受け、ドナルド・トランプ米国大統領(71)がG20の直前に劉氏の国外治療を呼びかけたことに対し、ニューヨーク・タイムズ中国語版は「トランプ大統領が(そのようなことを行ったら中国の反感を買うから)『劉氏の治療よりアメリカの国家安全と中国の貿易を優先するべき』と言った」と報道しました。
しかし、僕が様々なメディアの報道を調べた結果、トランプ大統領がこのような発言を行ったという記述は他に存在しません。おそらく、自称リベラルメディアであるニューヨーク・タイムズが、現在のトランプ政権を批判するために、劉氏の末期ガンという不幸を利用し、捏造報道を行ったのだと思います。
劉氏の死去後、彼の遺族が「劉氏の刑期がまだ終わっていないため、中共政府が遺骨を渡さない」とアメリカのメディアに告発しました。劉氏は国家転覆罪で懲役11年の罪に問われ、刑期は2020年までです。事実なら、劉氏は死後に埋葬される権利すら奪われることになります。
この話を受け、中国の民主活動家たちは「人が遺骨になっても懲罰を与え続ける中共の卑劣さを認識した」と批判し、「民主活動家のカリスマである劉氏の墓参りを禁止し、他の活動家たちの気概を削ぐ手口」という見解も寄せられました。
実際に李旺陽という民主活動家の墓には、毎年4月の清明節(中国のお盆)になると、他の活動家たちが礼拝に来るのですが、彼らはほぼ例外なく逮捕され、現在で墓参りを禁止するために、清明節の時期は中共政府から派遣された国家保安が警備を行っています。
劉氏の国外治療を訴えた日本の人権団体、NPO組織は、アムネスティ・ジャパンのみですが、この組織は海外のNGO組織の日本支部です。普段は死刑廃止、在日外国人犯罪の擁護、不法滞在の外国人に対する特別永住権、朝鮮学校に対する学費補助の制定など、様々な人権保護をとなえる日本の人権組織や左派系メディアは、今回の事態に関しては目をつむっているのです。
おそらく、中共政府との衝突を回避したいことと、劉氏の国外治療を呼びかけても、組織に金銭的な利益をもたらさないことが理由だと思います。また、中共政府は17年6月からテロ対策を名目に、新疆ウイグル自治区に住むウイグル人たちが所持するパソコン、DVD、USBメモリーといったデジタル記憶媒体を定期的に検閲する制度を開始しました。
そして、今年(2017年)のダライ・ラマ法王(82)の誕生日は、チベットの民族的祝日と重なって、多くのチベット人がダライ・ラマの誕生日と同時に祝いましたが、このことをきっかけに中共政府は、その祝日を禁止しました。
日本の人権組織・左派系メディアは、自分たちの利益と安全を第一に考える 商業団体に過ぎません。僕は日本やアメリカのリベラル派は、虚偽の人道主義を捨てて中国の人権問題に対し明確な抗議を行ってほしいと思います。
一方、劉氏の死去を報じた際のホームページはいつものように赤色の状態でした。中共政府は偉大な民主活動家の命を奪い、死後も哀悼することはありません。僕はこのような卑劣な組織が一刻も早く崩壊することを願っています。
著者プロフィール漫画家孫向文中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の33歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。新刊書籍『中国が絶対に日本に勝てない理由』(扶桑社)が発売中