台湾の声より転載
【産経主張】重病の劉暁波氏 中国は即時解放を認めよ
日本政府も人権問題にうるさい日本の左派勢力もぜひ中国政府に抗議するように。
人権に国境なしのはずだ
「台湾の声」編集長 林 建良(りん けんりょう)
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【主張】重病の劉暁波氏 中国は即時解放を認めよ
2017.6.29 産経新聞
大国を自称する中国のこれが実態である。
獄中でノーベル平和賞を受賞した中国の民主活動家、劉暁波氏が末期の肝臓がんと診断され、遼寧省の刑務所から省内の病院に移送された。
家族は高度な治療が受けられる北京や外国への移送を希望したが、受け入れられなかった。
夫人が「手術はできなくなった。放射線治療も化学療法もできない」と窮状を訴える映像が広がっている。
米国務省やノーベル財団は劉氏の即時釈放を求めた。だが、中国外務省の報道官は「いかなる国も中国の内政にあれこれ口出しする権利はない」と拒絶した。
全くわかっていないようだ。問われるのは、内政上の干渉にあたるか否かではなく、基本的人権に関することだ。中国は直ちに劉氏の釈放や出国を認めるべきだ。
劉氏が民主派の知識人ら約300人と発表した「08憲章」は、自由、人権など人々が享受すべき普遍的価値を掲げている。共産党独裁の終結も挙げたことから、「国家政権転覆扇動罪」に問われたとみられる。
劉氏を懲役11年の重刑に処したこと自体、人の尊厳を踏みにじった暴挙であり、一党独裁の異常性を改めて示している。
劉氏の重刑が確定した2010年、中国の国内総生産(GDP)は日本を抜き世界2位となった。だが、急速な経済発展が政治体制の改革を促すことはなかった。海外からの人権批判を抑える高圧的な姿勢を助長したように映る。
経済成長がもたらした豊かな財源の下、国防費をも上回る治安維持費が計上され、中国国内の人権弾圧は一層激しくなった。
習近平政権は「反テロ法」「国家安全法」などの治安法令を施行し、インターネットを含む言論の抑圧や人権派弁護士らの投獄が相次いでいる。
中国の憲法は言論の自由などをうたうが、実体を伴わない。米国務省は人身売買に関する年次報告書で、4年ぶりに中国を最下位ランクとした。
国際社会はこの深刻な事態を注視すべきだ。ドイツでの主要20カ国・地域(G20)首脳会議は、劉氏の問題を含め、中国に人権状況の改善を迫る場としてほしい。
隣国である日本も、中国の人権問題について口を閉ざしていることは許されない。
EU、中国の人権侵害を批判できず 強まる影響力の前に口を閉ざす民主主義陣営
Jun 28 2017 中国の人権侵害を批判する国連でのEU声明が、ギリシャの反対で初めて見送られた。声明発表にはEU加盟28ヶ国すべてが賛成する必要があり、声明をまとめられなかったことで、人権擁護を掲げ各国に言論の自由や死刑廃止を求めるEUには打撃となった。
ギリシャをはじめ、中国に経済援助を受ける国々にとって、中国批判は困難だ。また、貿易などでつながりを深めているEU自体も、関係悪化を恐れ批判には慎重な姿勢を取らざるを得ない。まさに金で影響力を買う中国の台頭が、民主主義を牽引する国々を悩ませている。
◆経済大国中国の影響力増大。EUも及び腰
ギリシャの外相は、声明は「非建設的な中国批判」として反対を表明した。中国は、ギリシャ、ハンガリー、クロアチア、ポルトガルなど、経済状況の厳しい欧州諸国に多額のインフラ投資をしている。特にギリシャの場合は、緊縮財政を国際債権団から求められていることから、中国の経済的支援は不可欠であるため、今回の声明阻止という行動につながったとウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は指摘しており、貧しい国々への投資で、人権問題への批判封印を勝ち取ったという見方を示している。
ギリシャの外相は、声明は「非建設的な中国批判」として反対を表明した。中国は、ギリシャ、ハンガリー、クロアチア、ポルトガルなど、経済状況の厳しい欧州諸国に多額のインフラ投資をしている。特にギリシャの場合は、緊縮財政を国際債権団から求められていることから、中国の経済的支援は不可欠であるため、今回の声明阻止という行動につながったとウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は指摘しており、貧しい国々への投資で、人権問題への批判封印を勝ち取ったという見方を示している。
ロイターは、今回の事件はEUと中国のぎこちない関係も強調してしまったと述べる。EUは、気候変動や保護貿易主義に関し、トランプ政権と戦うためのパートナーとして中国を歓迎している。しかし、ビジネスでの結びつきが強まるにつれ、中国政府の人権派弁護士や活動家に対する弾圧について、正々堂々と意見を述べにくくなっているとロイターは指摘している。
EUは1996年から中国との人権対話を行い、人権問題を改善するよう訴えているが、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)によれば、年々対話自体が形骸化してきている。HRWを含む10の人権団体は、このまま意義のない低レベルな儀式に終わるのであれば、中国の人権問題が改善されるような明確な指標ができるまで交流は一時停止すべきだと訴えている。
EUは1996年から中国との人権対話を行い、人権問題を改善するよう訴えているが、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)によれば、年々対話自体が形骸化してきている。HRWを含む10の人権団体は、このまま意義のない低レベルな儀式に終わるのであれば、中国の人権問題が改善されるような明確な指標ができるまで交流は一時停止すべきだと訴えている。
◆市場をブロック。人権問題への経済的報復
すでに経済大国となった中国との関係において、人権問題がどれほどやっかいなものであるのかを示すのが、ウェブ誌『クオーツ』のノルウェー・サーモンに関する記事だ。国家権力の転覆を企てた罪で禁固11年の判決を受けた中国の人権活動家、劉暁波(リウ・シャオポー)氏に、ノルウェーのノーベル賞委員会が2010年の平和賞を贈ったことから、中国とノルウェーの関係が悪化し、ほぼ中国のサーモン市場を独占していたノルウェー・サーモンの中国への輸出量が急下降した。中国にとってサーモンの輸出を阻止することは、目に見える形での「ノーベル賞のリベンジ」として重要だったと指摘されている。
すでに経済大国となった中国との関係において、人権問題がどれほどやっかいなものであるのかを示すのが、ウェブ誌『クオーツ』のノルウェー・サーモンに関する記事だ。国家権力の転覆を企てた罪で禁固11年の判決を受けた中国の人権活動家、劉暁波(リウ・シャオポー)氏に、ノルウェーのノーベル賞委員会が2010年の平和賞を贈ったことから、中国とノルウェーの関係が悪化し、ほぼ中国のサーモン市場を独占していたノルウェー・サーモンの中国への輸出量が急下降した。中国にとってサーモンの輸出を阻止することは、目に見える形での「ノーベル賞のリベンジ」として重要だったと指摘されている。
結局2016年12月に、ノルウェーの外相が中国を訪問し両国は和解。その後ノルウェーは中国との水産物における貿易協定を結び、2025年までに総額14億5000万ドル(約1600億円)のサーモン輸出を目指しているという。クオーツは、2015年にはノルウェー政府のメンバーは誰一人としてダライ・ラマと面会しなかったと指摘し、「チャイナ・フレンドリー」な努力が和解につながった、という専門家の意見を紹介している。また中国側は、ノルウェーは「2国間の互いの信頼が損なわれた理由について深く反省した」と上から目線だったという。
◆沈黙は中国をつけ上がらせるだけ。世界は声をあげるべき
騒動の原因となった劉氏は、末期がんと診断され、現在刑務所から釈放され病院で治療を受けている。劉氏と妻は北京の自宅に戻るか海外に行くことを望んでいるが、中国側はあくまでも病気による仮釈放としており、「解放なき『解放』」とする中国法の専門家のコメントをガーディアン紙の社説は掲載している。
騒動の原因となった劉氏は、末期がんと診断され、現在刑務所から釈放され病院で治療を受けている。劉氏と妻は北京の自宅に戻るか海外に行くことを望んでいるが、中国側はあくまでも病気による仮釈放としており、「解放なき『解放』」とする中国法の専門家のコメントをガーディアン紙の社説は掲載している。
Text by 山川真智子