中華圏が16日に
春節(
旧正月)を迎え、日本にも大型連休を利用した多くの観光客が訪れた。存在感を増しているのは、来日が2回以上のリピーターだ。全国の観光地をくまなく回るような旅程より、その時の興味や関心に基づいて行き先を選ぶ人が目立つ。食やレジャーといった「コト消費」重視の傾向も強まっている。街頭で旅行者に聞いてみた。
春節を祝う人でにぎわう中華街(16日、
横浜市)=AP
上海在住の大学院生(25)は日本に来るのが今回で10回目という。会社員の友人男性(25)と来日し、「日本はとても便利で大好き」と笑顔を見せた。全8日間の旅程で東京に3日間、
仙台市に5日間滞在する。仙台では日本で2回目となる
スノーボードを楽しむ予定だ。今回は具体的な買い物の計画はないという。
「
磯丸水産に行きます」。訪日が3回目という29歳の女性は、楽しみにしている旅の目的の一つに海鮮居酒屋チェーンを挙げた。
兵庫県の
有馬温泉や神戸の
異人館など定番の観光地にも期待する一方、日本人が普段行くような店に関心を持つ。7日間の旅程で買い物の予算は7万~8万円と比較的控えめだ。
日本経済新聞社は16日、JR東京駅前や渋谷駅前、大阪・道頓堀などで中華圏からの訪日客に聞き取りをした。20組弱の限られた取材だがおよそ3分の2が日本に来るのは「2回目以上」とした。10回以上も3組いた。買い物予算を20万円以上とする人と15万円以下の人はほぼ同数だった。
楽しみにしている場所や店を聞くと「かに道楽」「
ドン・キホーテ」「歌舞伎町」「焼肉一丁」など具体的な店舗名や地域名が挙がった。中国で普及する対話アプリ「
微信(
ウィーチャット)」などで訪日経験者のオススメ情報が共有しやすくなっていることが背景にあるとみられる。
来日は3回目という57歳の男性はこけ寺として有名な京都の
西芳寺に向かう。「口コミで気持ちが休まると聞いた」。
福建省から来た男性の黄炎さん(58)は初来日だが大阪や京都でなく
岐阜県の「
白川郷」を目的地に挙げる。雪の多い時期の
白川郷は「中国でもとても人気が高い」という。
数年前に急増した中国人観光客は当初、何十万円もするブランドの宝飾品や大量の家電を購入する人が目立った。近年は買い物が一巡したリピーターが魅力のある別の観光地を探しているようだ。取材では中国の預貯金が170万円ほどで今回の買い物予算が1人数十万円という人もいた。普通の会社員が家族の大切なイベントとして来日し、多額のお金を落としている構図が浮かぶ。
土産品も多様になっている様子がうかがえ、北京から来た王芯さん(26、女性)は「人気女優が持っていた加熱式たばこのアイコスを買ってきてほしいといろんな人に頼まれた」と話した。中国のネット販売では品切れ状態という。
中国の
春節に絡む大型連休の公休は15~21日の7日間。中国政府系
シンクタンク「中国旅行研究院」によると今年の
春節期間に海外を訪れる旅行客は650万人と過去最高を更新する見込み。人気の旅行先で日本はタイに次ぐ2位だった。比較的距離が近く交通インフラも整う日本は限られた休みを有効に使いやすい。四季があり魅力的な地域が季節ごとに変わることもリピート客の増加につながっているようだ。