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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成30年(2018年)5月9日(水曜日)
通巻第5695号
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嘗て孫政才は共青団のライジング・スターだった。トップ25名の政治局員として将来を嘱望され、43歳で農林大臣、そして吉林省書記、2012年11月には薄煕来失脚のあとをうけて(リリーフは張徳江だった)、重慶特別市の書記に任命された。一説に江沢民派に近付いたことにより、その人脈の推挽とされたこともある。
ところが、2017年7月、突如、孫は重慶市書記を解任され、後継は陳敏爾になった。
習のバックがあればこその「つくられた業績」と酷評する人が多い。
なぜか妙齢の婦人たちがロビィとして介在したと騒がれた。賄賂の額面は2670万ドル(大物にしては少なすぎるのでは?)。4月12日に死刑の求刑がされ、5月8日、天津地方裁判所は「無期懲役」の判決を言い渡した。
共青団(団派)は孫を守りきることが出来なかった。
孫夫人の取り巻き、とくに温家宝夫人が影のボスと言われ、令計画夫人等とつくった「夫人倶楽部」のメンバーとして、ビジネスに手を突っ込んでいたことが、検察の目にとまって容疑が浮かんだというのが当局の説明である。孫の汚職が芋づる式に捜査されたことになっている。
しかしネットでは、習近平の罠ではないかという意見が書き込まれるとすぐに削除され、真相はまったくの闇。ともかく将来のリーダーとして、孫は胡春華とともに若くして政治局員入りしたため、習近平にとっては邪魔者に映り、狙われていたのである。
こうした一連の失脚劇に背後にちらつくのは温家宝一家の汚職である。すでにニューヨークタイムズが何回もすっぱ抜いたように、温家宝元首相の夫人と長男の利権構造が暴かれており、この関連で、孫政才はスケープゴーツにされたようである。
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW
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いま、「石平歴史学」の三部作が出現した
他国を巻き込み、内ゲバを繰り返す朝鮮半島の得意技♪
石平『結論! 朝鮮半島に関わってはいけない』(飛鳥新社)
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石平氏の最新作である。
さきに本欄で評者(宮崎)は、石平氏の『なぜ中国は民主化したくてもできないのかーー「皇帝政治」の本質を知れば現代中国の核心がわかる』(KADOKAWA)と『なぜ日本だけが中国の呪縛から逃れられたのかーー「脱中華」の日本思想史』 (PHP新書)の二冊を取りあげ、かなり精密な分析をした。
この新作を加えて、これで「石平歴史学」三部作が出現した。まずは祝意を述べたい。
本書の骨格は、朝鮮半島の特質的手法、というより朝鮮民族の伝統芸である「内ゲバ」と「外国を巻き込む」という特徴的な歴史を簡潔に叙述している。
朝鮮半島二千年の歴史をパノラマ絵巻のように振り返りつつ、そのときそのときの政局を明確に腑分けして、朝鮮民族のDNAに染みこんだ事大主義、無責任、逃避癖、讒言の得意技をたくみに整理整頓した歴史のまとめである。
いまも特質は同じであって北朝鮮では叔父も実兄も粛清して邪魔者を消した。祖父の金日成は中国派、ロシア派、民族派を次々と粛清した。
韓国も「従北派」の文在寅大統領は、前任の朴権惠と李明博を逮捕して裁判にかける。その前の盧武鉉は自殺し、その前任者すべてが刑務所か、暗殺か、亡命か。なぜこんなことが繰り返されるかと言えば、二千年かわることのない朝鮮民族の体質、つまり内紛の残虐性をぬぐい去ることが出来ないからだ。
そのうえ「周辺国のわれわれにとって他人事ではない。朝鮮半島の歴史を見ていると、自分たちの内紛あるいは内戦に、周辺国や他民族を巻き込むのはむしろ彼らに一貫した習性である」と石平氏はまとめるのだ。
「白村江の闘い」とは、高句麗の脅威に対応するために百済が随に応援をもとめたことから日本が巻き込まれ、その同情による派兵という、日本独特の情緒的防御作戦は、随の大軍という、予期せぬ援軍の出現のため日本軍が敗れた。しかしもともとは新羅と百済の内戦に日本が巻き込まれたからだ。
「隋は百万人の大軍を派遣して高句麗征伐を再開した。しかしこの時も、高句麗が国の命運をかけて徹底的に抗戦した結果、隋の煬帝の軍事行動は失敗」した。この挫折が煬帝の権力基盤を弱体化させ、王朝の崩壊を早めた。
習近平があれほど金正恩を嫌い、南北朝鮮の統一を嫌がるのは高句麗の再来を恐れるからである。そして隋が四度も高句麗成敗に失敗した経過を教訓としているからだ。
隋の崩壊を継いだ唐王朝も、じつに三回、つまり随・唐で合計七回も高句麗遠征を繰り返し、いずれも失敗した。
その挙げ句、半島の内戦に巻き込まれてしまったのが日本だった。
元寇では、元朝のお先棒をかついでフビライを焚きつけ、日本侵略に先頭切ってやって来たのは高麗であり、尚武の精神に溢れた鎌倉武士によってさっさと追い返された。
日清戦争の原因も朝鮮王朝の内紛に巻き込まれた結果、おこった。
朝鮮戦争ではスターリンと毛沢東が金日成の謀略に引っかかり、またアメリカは李承晩に騙されて参戦し、苦戦したという説を石平氏は採る。
この特質的な朝鮮民族の習性を理解すれば、現在の半島危機にアメリカも中国も巻き込まれることを嫌がるのは当然であり、日本は半島がどうなろうと関わる必要はまったくないと説くのである。
なるほど、じつに納得のいく、説得力に溢れた歴史指南書である。
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読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 読者之声
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記
とき 6月22日(金) 午後六時半
ところ 文京シビックセンター 三回会議室
講師 原川貴郎(産経新聞記者)
演題 「中国が再生産する南京大虐殺」
参加費 1000円(学生500円)
主催 南京戦の真実を追究する会(会長 阿羅健一)
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(読者の声2)金正恩がまたしても大連を訪問したというニュースがありますが、狙いは何でしょう?
(BN生、山形)
(宮崎正弘のコメント)上記石平新作書評にもヒントがあるようです。中国を巻き込むために全知全能を絞っているという焦りが見えてきます。
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『アクティブ・ニヒリズムを超えて』(文藝社文庫)
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この本は八年前、日米安保条約改定から半世紀を閲けみした時点で戦後史を振り返り、日本という国家がいかに精神的に堕落し、知的頽廃の縁をさまよって理想を喪失したのかを論じ合った劇談である。
「アクティブ・ニヒリズム」を西部氏は「ひたすら何かのアクションへ自分を駆り立ててしまえという衝動」と言った。安保反対運動も全学連も、西部氏の中ではチャレンジであり、保守への目覚めも「転向」ではなく「天性」のものだった。
また三島論も文学論からは離れて精神、歴史のポイントを鋭く衝かれている。
対談収録の議論は二回にわたったが、終わると決まって新宿の酒場に繰り出し、果てしない続きと演歌と軍歌のカラオケになった。妙に懐かしく時おりその光景が浮かぶ。(宮崎正弘「文庫本へのあとがき」抄)
6月5日発売決定!
詳しくは後日、この欄に告示します。予約募集も近日中に開始します。
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<宮崎正弘の書き下ろし単行本>
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『米国衰退、中国膨張。かくも長き日本の不在』(海竜社、1296円)
『連鎖地獄―日本を買い占め、世界と衝突し、自滅する中国!』(ビジネス社、1188円)
『西郷隆盛 ――日本人はなぜこの英雄が好きなのか』(海竜社、1620円)
『米国混迷の隙に覇権を狙う中国は必ず滅ぼされる』(徳間書店。1080円)
『吉田松陰が復活する』(並木書房、1620円)
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<宮崎正弘の対談・鼎談シリーズ>
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宮崎正弘 v 石平『私たちの予測した通りいよいよ自壊する中国』(ワック、994円)
宮崎正弘 v 渡邊哲也『激動する世界経済!』(ワック、994円)
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宮崎正弘のホームページhttp://miyazaki.xii.jp/
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