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【社説】より転載
中国とバチカン 誰のための歩み寄りか
2018年10月2日
無神論の共産党が統治する中国とバチカンは長く対立関係にあり、一九五一年に断交した。中国が独自に任命した司教七人をバチカンが承認するとの暫定合意により、国交正常化に向け弾みがつくと期待する声が中国とバチカンの双方にあるのは事実だ。
だが、中国は国民の宗教信仰の自由の保障をうたってきたが、実際には宗教の国家管理を強め信仰の自由を制限してきた。
中国が司教の任命権を手にすることで、非公認だった「地下教会」に対する国家管理が強まり、真の意味での信教の自由が脅かされる可能性が高いのではないか。
中国がこうした宗教弾圧をやめない限り、信仰の自由が将来的に保障されるとは誰も信じられないであろう。
バチカンは欧州で台湾と外交関係を持つ唯一の国である。台湾の蔡英文政権の発足後、中国は経済援助などを武器に、五カ国を台湾との断交に追い込んだ。バチカンとの接近は台湾への圧力が大きな狙いであるのは間違いない。
一方、バチカンは計千二百万人の信者を擁する中国を布教活動の大きな市場と期待しているのだろうが、中国の宗教管理の苛烈さを甘く見ているのではないか。
中国とバチカンはそれぞれの思惑を胸に秘め歩み寄った。だが、それは自らの良心にのみ従う信仰の保障を希求する信者のための選択なのだろうか。