2022-01-06 SONYのEV参入は「大決断」か、愚挙か? 世界経済。中国経済。日本経済 ☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆☆◇◆◇☆◆◇◆☆◇◆◇☆◇◆◇ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~「宮崎正弘の国際情勢解題」 令和四年(2022)1月6日(木曜日) 通巻7180号 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ SONYのEV参入は「大決断」か、愚挙か? ダムは決壊した。次世代技術の流れは面妖な方向へ。*************************************** 1月3日、NY市場でアップル株の価時価総額が3兆ドルを突破した。 じつは同日、テスラ株も14%の暴騰、時価総額が1・2兆ドルとなり元に戻った。先月、テスラのイーロン・マスクが保有する株式の10%を売却したため、テスラ株は1243ドルから886ドルに下落していた。テスラは2020年に50万台生産した。2021年は93万台、このうち、31万台が中国国内の販売実績だったが、20万台が中国でリコールとなった。EVの販売は2022年前半に絶頂を迎えるだろう。そして22年の後半から売れ行きは鈍るか、激減するだろう。理由は簡単で、中国政府のEVへの補助金制度が終わるからだ。 皮肉なことに全米自動車販売で、トヨタがGMを抜いた(1月4日)。フォードを抜き、クライスラーを寄せ付けず、「黄金の時代」を築いたGMが、まさか黄色い猿と罵った国に追い抜かれたのだ。 しかし何故に自動車がガソリンからEVに変わるのか。ガソリン車が深化したハイブリッド車が全盛期をむかえようとしていた時に、横合いから吹き荒れた竜巻は地球温暖化だった。熱病のように世界で気象問題が人類の危機だと煽られ、流れが変わった。これが嘘だったことは明らかなのに、流れ出した激流は、もはや止めようがない。ダムが決壊したとき、防ぐ方法はないように。インテルもSONYも、他社との提携とはいえ、EVに乗り出すという。極めつけはアップルのEV進出である。他方、事実上倒産している恒大集団は昨年、EVに進出し、まだ一台も車を作っていないのに上場し、カネを集めた。まるで詐欺師の手口である。嘗ての禁酒法しかり、禁煙運動しかり、フェミスズムからヘイトスピーチ禁止、LGBTなど、基本の流れ方、熱病のような熱狂と興奮は客観的で科学的、合理的考察を吹き飛ばす爆発力がある。 ▼米中経済戦争の決戦場次世代技術の争奪戦、開発レースが熾烈に進んでいるが、米国と中国の技術覇権戦争という本質が顕現してきた。第一に従来、ペンタゴン主導だった新技術開発が、インターネットの民間企業によるイノベーションによって、軍民汎用から民間主導に置き換わったことである。宇宙衛星までが民間企業の躍進ぶりだ。 1997年までインターネットという言葉はなかった。GAFAMの興隆は、ネット社会実現以降であり、いまや選挙までSNSによって甚大な影響を受け、活字媒体はおおきく後退した。次はメタバースだと市場関係者は騒ぐ。第二に従来、技術後進国だった中国が先進国から技術を盗み出すことによって、米国の追いつき、宇宙開発では、あろうことか中国が優位に立った。超音速ミサイルとて、もし真実だとすれば、米国を追い越したこと意味する。暗号通貨、スパコンから量子コンピュータ。中国の猛追は凄まじい。すなわち中国は国家中枢が立案した戦略的長期計画に基づき、集中して目的を達成できるという専制政治の強みがあり、自由主義社会とは体質が異なる。民主主義社会は中央集権的な整合性を摂れないという脆弱性、意思決定の遅行性というアキレス腱がある。第三に「貿易」「投資」「研究」のデカップリング現象だろう。米国は貿易が恒常的な赤字体質であるのは物作りを放棄し、工場を海外へ移動した。したがってハイテク兵器の部品も国内で調達できなくなった。補給を間断なく効率的に埋める世界サプライチェーンは疫病と経済制裁の欧州で機能しずらくなった。投資はウォール街がシティから主導権を奪い、株、債券、FX、商品市場で世界を牽引し、さらには研究、イノベーションは米国が圧倒的に優位に立っている。このデカプリングのひずみが各所に現れている。第四に通貨の変容、つまり支払いが手形、クレジットカードから、ディヴィッド・カード、電子決済、スマホ決済が主流となって後発組のほうが有利となる。膨大なデータが集約されると、これを国民監視、統治の絶対的武器として活用する全体主義国家、対してプライバシー保護でデータを保護しようとする民主国家という二極化である。第五は世界覇権の性格が艦船、戦闘機、火力、核兵器、軍事援助、無償支援など従来型から、シルクロードに象徴されるように当該国家指導部を巻き込んだ政略主導の形態に移行し、SNSネットワークへ戦場が移動しつつあることだ。日本は嘗ての世界一も数えるほどになった。衰退一途なのか、巻き返せるのか。 ◎▼◎▼◎▼◎▼◎●△●△●△●△●△