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人口約740万人の香港にとって、大きな人口流出となる、英国へ11万人、返還時を上回るペース

香港から第2の移民ラッシュ 英国へ11万人、返還時を上回るペース

香港=奥寺淳
 
 
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香港発ロンドン行きのフライトの出発時間が迫り、英国に移民する香港人カップルが見送りに来た人たちと抱き合って別れを惜しんでいた。香港空港ではこうした光景が、連日繰り返されている=2021年8月20日、奥寺淳撮影
 

 7月1日に英国から中国への返還25周年を迎える香港が、「第2の移民ラッシュ」を迎えている。その最大の目的地は、「中国政府が約束した高度な自治を壊した」として移民を受け入れる英国。昨年1月末からの14カ月間で11万人以上に特別ビザが発給された。25年前の返還時を上回るペースで移民が進んでいる。

 英国政府によると、香港人向けの特別ビザ発給を始めた昨年1月31日以降、今年3月末までに受け付けた申請は約12万3400件。このうち、11万3672件がすでに許可された。

 英国政府は、特別ビザ発給後の5年間で、25万~32万人が移民してくるとも予想している。

 英国移民コンサルティング会社「英倫移民」によると、移民を決める最大の理由は、「子供の教育のため」だという。香港では、2020年6月に反中国的な動きを取り締まる香港国家安全維持法国安法)が施行され、学校教育でも中国の良い面ばかりを教える傾向が強まった。

 さらに、当局による民主派やメディアの弾圧が相次いだことも、香港人の移民を加速させている。

 国安法の施行後に移民受け入れを増やしたのは英国だけではない。カナダ政府も香港人の人権を守るため、昨年2月からカナダの大学などで学んだ人の家族も受け入れ、労働ビザも出す制度を始めた。最初の1年で約8500人に対して許可を出した。

 オーストラリアによる移民ビザ発給も、20~21年度は4312人と前期の3倍に急増。オーストラリアへの移民コンサルティング会社ロイ・ホワイトの黎美紅・移民部総監は「今年に入っても、オーストラリアへの移民の問い合わせは確実に増えている」と話す。

 英国、カナダ、オーストラリアの3カ国だけでも、国安法施行後に少なくとも約12万6千人の香港人に移民の許可を出した。台湾やシンガポールに移民する人も少なくない。すでに外国籍をもっている香港人も含めれば、香港を離れた人数はさらに多いとみられる。

 最初の移民ラッシュは、香港が中国に返還される1997年までの間だった。それまで毎年数万人ずつ流出し、約10年間で計50万人が移民したとされる。今回の移民ラッシュでは、最初の1年をみると、返還時を上回るペースといえる。人口約740万人の香港にとって、大きな人口流出となる。(香港=奥寺淳