三井物産と三菱商事は2日、権益を持つ極東ロシアの資源開発事業「サハリン2」の資産価値を6月末に3月末比で計2177億円減額したと発表した。サハリン2を巡っては、ロシア政府がいまの運営会社から新設する別会社に権利などを移す方針を掲げる。ロシアで事業を続けられるか見通しにくくなっており、資産の評価額を見直す。
三井物産は2022年3月期にもサハリン2の資産価値を441億円減額していた。三菱商事も同じく約500億円を減額した。ウクライナ侵攻によるロシアの格付け低下などが理由だ。四半期ごとに資産価値を減らさざるを得ないほど不安定な事業環境といえる。
三井物産は今回、資産価値を1366億円減額した理由について「ロシアの格付けがさらに低下したことに加え、(サハリン2について運営を新会社に移管する)大統領令が出たことで将来得られる見込みの配当について不確実性が高まった。資産評価を保守的に見積もった」(重田哲也最高財務責任者=CFO)と説明した。
811億円を減額した三菱商事は「大統領令の発出によるサハリン2の(事業継続の)不確実性の高まりを受け、複数シナリオに基づいて価値を評価した」(野内雄三CFO)とした。両社とも総資産に占める減額割合は1%未満にとどまり、財務への影響は限定的とみられる。
日本はサハリン2から年間約600万トンの液化天然ガス(LNG)を輸入する。日本のLNG輸入量の約10%を占め、重要な調達拠点の1つだ。三井物産はサハリン2の運営会社サハリンエナジーに12.5%、三菱商事は10%をそれぞれ出資する。
プーチン大統領は6月末、サハリン2について、新たにロシア企業を設立してサハリンエナジーの権利・義務を移管する大統領令を出した。いまの出資会社は新会社設立後、1カ月以内に同じ持ち分で移ることに同意するか判断を迫られる。同意するにはロシア側の条件に従う必要があるが、現時点でどんな条件なのかもわからない。
萩生田光一経済産業相は2日の閣議後の記者会見で「現時点で新会社が設立されたとの情報はなく、引き続き注視したい」と述べた。ワシントンで開いた外務・経済担当閣僚協議「経済版2プラス2」の初会合でもサハリン2に言及したと話し、「権益を維持したいと説明し、日本の立場を理解してもらった」と強調した。