中国チベット自治区で2008年3月に起きたチベット暴動から14日で16年が過ぎた。
四川省成都市内に、チベット仏教の仏具やチベット語書籍を扱う商店が並ぶ地域がある。2月中旬に訪れると、重装備の警官らが交差点の四方を固めるように警戒し、チベット族の僧侶や住民らに目を光らせていた。監視カメラも多い。
仏具店内では、チベット語より中国語表記が目立つ。買い物に訪れた僧侶の男性は、「我々が信仰と文化を守らなければならない」と小声で語った。
中国には約700万人のチベット族がいるが、同化政策は急速に進む。国連人権理事会の昨年の報告によれば、子供向けの寄宿学校では、中国語のみの授業が大半で、チベット語や文化の教育が排除されている。米政府系のラジオ自由アジアは今年1月、子供らがチベット文化や宗教を学ぶための課外活動への参加が禁じられていると伝えた。
先に閉幕した全国人民代表大会(国会)で採択された政府活動報告でも、習政権は「宗教が社会主義社会に適応するよう積極的に導く」と明記した。信仰より共産党への忠誠を優先させる「宗教の中国化」を進める方針も示した。
国際社会は非難を強めている。ロイター通信によると、ボルカー・ターク国連人権高等弁務官は今月4日、自治区などでの人権侵害の是正勧告をしたが、中国外務省報道官は「一部の西側の国がデマを流している」と反発した。
習政権が人権状況の改善に応じることはなさそうだ。昨秋公表したチベットに関する白書の英語版の地名表記では、従来の「チベット」ではなく、中国語「西蔵」の発音にあたる「シーザン」を使った。中国の一部であると強調し、米欧の「干渉」を排除する構えだ。
◆ チベット暴動 =2008年3月14日、区都ラサで、中国の統治や信仰の自由への抑圧に不満を持つ僧侶や市民が政府機関などに放火、破壊した。四川、甘粛省などのチベット族居住地域に拡大し、当局の鎮圧には軍も動員された。インドのチベット亡命政府によると、死者は200人以上。