甘粛省のチベット族居住地域にある学校で、「普通話を話そう」と漢字で書かれた横断幕(6月上旬) 中国共産党は7月、創設100年の節目を迎える。一党支配のもとで米国の覇権に挑むまでになった強権国家は、国内外で様々な摩擦やひずみを生んでいる。きしむ大国の今を報告する。 【写真】中国の言いなりになる「秀才」長官 首都北京から西に約1700キロ・メートル離れた甘粛省のチベット族居住地域。山あいのチベット仏教寺院で、チベット族の女性13人が、電球の光が届かない暗い一角を見つめ、涙ぐみながら一心に手を合わせていた。 (写真:読売新聞) 女性らの視線の先にあるのは、公安当局が所持することすら禁じている、チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世の肖像写真だ。この一角は当局が天井の四隅に設置した監視カメラのちょうど死角になる位置なのだという。 えんじ色の法衣を着た50代の男性僧侶が監視カメラを気にしながら、胸に手を当てて小声で言った。 「危険なのは承知している。それでも信仰は守り抜きたい。ダライ・ラマは心の中にいるのだから」 チベット仏教寺院は2014年時点で全国3600か所。人口約630万人のチベット族の間では、活仏としてのダライ・ラマへの信仰は今なおあつい。共産党にとって、これほど敬愛を集めるシンボルは、国の分離・独立につながるリスクにほかならない。ダライ・ラマは「分裂主義者」と決めつけられ、信仰の抑圧が進んできた。 党の指導を信仰に優先させる「宗教の中国化」を掲げる習近平(シージンピン)政権下で、チベット族居住地域の街頭や寺院には「監視カメラが増え、締め付けは厳しさを増した」(チベット族男性)という。当局者が住居を捜索し、ダライ・ラマの写真を隠し持つ人を見つけ、見せしめで処罰するケースも多い。 この集落近くでは、コンクリートの壁に「中華民族の共同体意識を強固にしよう」と習国家主席の政治スローガンが大書されていた。チベット族が通う民族学校の校門には「普通話(標準中国語)を話そう」と呼びかける横断幕があった。 チベット自治区ラサで大規模暴動が起きた08年以降、「母語(チベット語)が主、普通話が従」だった言語教育は「普通話が主」に改められた。ウイグル語を母語とし、イスラム教を信仰するウイグル族も含め、少数民族を「中華民族」の名の下で多数派の漢族に同化させる動きが進む。 「私たちには死ぬ自由もない」と嘆くチベット族女性もいた。チベット族居住地域で数年前まで、強権統治への抗議として焼身自殺が相次いだが、少数民族政策の成果を強調する当局はそれも許さない。ハイテクを駆使した監視が進む今では、「自殺しようとガソリンを買ったら、すぐに把握される」という。 共産党政権は少数民族の「自治」を掲げ、憲法は「信仰の自由」をうたう。だが、分裂を何よりも許さない一党支配下で、それらは有名無実化するばかりだ。 ◆ダライ・ラマ14世=1935年、中国青海省で生まれ、故13世の生まれ変わりとして4歳で即位した。チベット族が中国軍と衝突した59年のチベット動乱をきっかけにインドへ逃れ、ダラムサラに亡命政権を樹立。非暴力による平和解決を求め続け、89年にノーベル平和賞を受賞した。 我々の社会にあるのは勧善懲悪 悪い事、盗み人殺し、嘘をつくと 地獄で罰せられること それを理解できない日本人がおり、それを利用するのが 半島人や 大陸人なのである、 チベット族「死ぬ自由もない」、監視カメラの死角で礼拝…[中国共産党100年]きしむ大国
習政権、少数民族の同化加速