27日投開票の衆院選埼玉2区は、トルコの少数民族クルド人と地域住民との軋轢が表面化している川口市の大部分が選挙区だ。「地元国会議員が動いてくれない」との指摘も出る中、今回の選挙では突如、争点に浮上。公示日の15日、JR川口駅前では「クルド人問題を解決する」と公約する候補も現れた。
川口は外国人問題で有名になった
「ルール違反の外国人問題、おまかせください!」
日本維新の会前職の高橋英明氏(61)陣営の選挙カーから、運動員の女性がこう呼びかけた。前回は比例復活で初当選。今年2月の衆院予算委ではクルド人を念頭に地元の外国人問題を取り上げ、当時の岸田文雄首相に対応を求めた。
選挙カーの上でマイクを握った高橋氏は経済再生などを訴えた後、クルド人らも混じる通行人に向かって「この川口は外国人問題で全国的に有名になってしまった」と切りだした。
「ルールを守らない外国人はいったん国に帰ってもらって、きちんとした在留資格で来てもらう。支援団体もそういうことを手助けすべきだ」と指摘し、警察官の増員などを訴えた。
この機会だから申し上げる
9選を目指す自民前職で前経済再生相の新藤義孝氏(66)は、選対本部長に奥ノ木信夫市長を迎え、駅前広場に自民、公明両党の県議や市議ら約25人を集めて出陣式。150人以上の聴衆に向かって経済再生などを論じた後、「もう一つ大事なことは治安の確保だ」と地元の課題に話題を転じた。
「いわゆるクルド人問題。この機会だから申し上げるが、難民認定申請を繰り返し、10年も20年も川口にいる人たちが増えてしまった」と、自身の選挙で初めてクルド人問題を明確に取り上げた。
新藤氏は自身の政策チラシにも「クルド人問題の解決」と明記。この日の演説で、6月施行の改正入管難民法で難民申請中の強制送還停止が原則2回までに制限されたことについて「法改正まで5年かかった」と実績として触れ、「ルールを守ってこその共生だ。川口をあやふやな出入り自由の街にはさせられない」と声を張り上げた。
なぜ外国人問題に触れるのか
一方、共産新人で元県議の奥田智子氏(55)は川口駅頭で第一声を上げたが、約13分間の演説で外国人問題に触れることはなかった。
演説後、奥田氏になぜ触れなかったか尋ねたところ、「逆に聞くが、なぜ触れるのか。演説の内容は私が選べる。触れない理由はあえて言わない」。地元のクルド人問題への対応については「国の政治が悪すぎる。それに尽きる」と入管政策を批判した。
立民新人で歯科医師の松浦玄嗣(もとつぐ)氏(52)も川口駅前での出陣式では外国人問題について言及しなかったが、配布した政策チラシに「外国人労働者の処遇に明確な法整備を求める」と掲げた。
取材に応じた松浦氏は「外国人を労働者としてなし崩し的に受け入れるから問題になる。川口で起きていることは10年後、20年後、必ず国全体の問題になる。外国人を移民として受け入れるのか、鎖国するのか、ロボットやAIに頼るのか、政治家は国民と議論しなければならない」と語った。
早く目に見える成果を
このほか、埼玉2区には諸派新人で不動産会社社長の津村大作氏(50)が立候補。7月の東京都知事選にも出馬した津村氏は今回、強制送還を拒む不法滞在者の入管施設への収容を一時的に解く「仮放免制度」の廃止を訴えている。
クルド人の危険運転などに困っているという地元の男性会社員は「選挙で取り上げられるようになったのは一歩前進だが、市民の間ではまだまだ『政治家は何もしてくれない』との思いが強い。早く目に見える成果を挙げてほしい」と話していた。
▽埼玉2区立候補者(届け出順)
奥田 智子55元県議 共新
高橋 英明61党県代表 維前
新藤 義孝66前経済再生相 自前