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「風評被害」の元凶は誰か、政府の情報開示法は誤り―

元凶はもちろん 民主党菅総理、そして民主党を選んだ 俺たちなんだ、だから俺たちが幕を引こう!!!!




風評被害」の元凶は誰か、政府の情報開示法は誤り――深尾光洋・慶応義塾大学教授

東洋経済オンライン 6月28日(火)10時51分配信
――福島第一原子力発電所の事故に関し政府の対応の問題点は。

 避難地域の拡大設定が後手に回ったことで、子供や妊婦など放射線の影響を受けやすい人たちを逃がすのが遅れ、潜在的な被曝者を増やしたと考えている。もちろん、妊婦の場合、避難そのものも危険は伴う。

 しかし、平時であれば放射能汚染の管理区域に指定されるような場所が、かなりの期間放置されたことが問題だ。放射線量のピークは水素爆発が相次いだ直後の3月14~16日だが、大量の放射性物質が大気中に放出されたこの時期に、十分な対応を取らなかった。

 IAEA(国際原子力機関)が3月30日に福島県飯舘村について「放射線量が高く避難すべき」と指摘したのに、4月11日まで意思決定を先延ばしにしたうえ、1カ月以内の「計画避難」という中途半端な指示を出している。子供や妊婦は早く避難させるべきだった。

■累積線量の発表が遅れ避難指示も後手に回る

 本来、被曝のリスクは時間当たりの線量ではなく、累積線量で考えるべきだ。しかし当初からマスコミは1時間当たりの線量を胃がんX線集団検診における被曝量などと比較して安全を強調し、誤った理解を広めた。政府がそのような発表の仕方をしたからだ。現在でも、インターネットの福島県のホームページではこのような情報発信が行われている。

 そもそも胃の検診はがんのリスクが高い中高年層がせいぜい年に1回受けるもので、子供や妊婦は病気が強く疑われるケースを除いては、受けてはいけない検査だ。

 累積線量で年間20ミリシーベルトを超える地域が計画的避難区域に指定されたが、これは平時において原発作業員が浴びる放射線の上限(5年平均)だ。これだと計画的避難区域では、年間数十回も胃の検診を受けるのと同じ状態になる。

 一般の人には子供や妊婦のように放射線の影響を受けるリスクの高い人もいるので、世界的にも年間1ミリシーベルトという上限が設けられているのだ。

 3月14~16日の大量の放射性物質放出後の数週間は、冷却が困難になった三つの原子炉、四つの核燃料プールを同時に海水で冷やすという、七つのお手玉を回すような難しい状況に陥った。仮に一つでも冷却に失敗していたら、チェルノブイリ事故のように、風下に大量の死の灰が降る可能性があった。本来、もっと広範囲の住民に対して避難勧告をすべき事態だった。特に風下の住民に対し、警告を発するべきであった。

 政府の情報開示の姿勢と日本のマスコミの報道には、不信感を持っている。首相官邸のホームページには、国際機関によるチェルノブイリ原発事故の報告の一部が載せられているが、肝心の「長期的には9000~1万人が、がんと白血病により死亡する」との見通しを載せていない。これは驚くばかりだ。

 危険を過小に見せようという政府の姿勢に、国の原子力政策にかかわった多くの専門家たちも加担し、テレビの報道番組で「安心です」と言い続けた結果、国民の信頼を失ったのではないか。

 気象庁や日本気象学会は、風に乗って広がる汚染を予測して避難を呼びかけるべきであった。しかし気象学会は学会員に対して、汚染情報を発表しないようにとの通達まで出した。学会の自殺行為だ。

 日本政府の情報開示に不信感を持った外国政府が厳しい態度を取り、外国からの観光客、留学生が逃げ出したのも無理はない。

■徹底した情報開示で農産物の市場回復を

――農産物をめぐる情報開示にも混乱があった。

 政府やマスコミは消費者の買い控えを「風評被害」と呼ぶが、あたかも消費者の行動が合理的でないかのような、まったく的外れな表現だ。政府の情報開示が不十分だから、不信感を持たれるのだ。

 食品について政府は、地域別・品目別の詳細な汚染情報を開示せず、政府が定めた安全基準より放射線量が多いものを出荷停止としただけで、それ以上の情報を出さない。また、放射能汚染のレベルが高まった3月17日に水道水の摂取制限や飲料・食品の出荷停止基準を大幅に緩めたことも不信感を増大させた。

 こうした状況では、できるだけ体内被曝したくないと考える消費者が原発に近い地域の農作物をすべて敬遠するのは当然で、まったく汚染されていないものまで価格が大幅に下がってしまう結果を招いている。

――政府が本来取るべき行動は。

 汚染による被害を最小限に抑え、農地の生産をある程度維持するための提言をしたい。以下は、現代経済研究グループ有志(※)による提言だ。

 すなわち、徹底した情報開示で市場機能を回復させることだ。放射能に汚染された地域の農地や港から出荷される生鮮食品については、ロットごとに汚染の水準を表示して販売する。表示を偽った業者には厳しい罰則を課すが、安全基準内であれば、汚染水準の開示を条件に出荷を認める。消費者は自分のリスクと汚染水準を見て購入すればよい。

 開示制度が信頼を得られれば、汚染度合いが非常に低い産物には、通常の価格がつくはずだ。汚染があっても基準を下回るものには、それ相応の安い値段がつく。これは風評による安値ではなく、市場が評価した正当な値段ということになる。

 安全基準を上回って汚染されている食品は出荷を停止し、その損失は東京電力が直ちに買い取りに応じることで補償すべきである。また、汚染によって価格が下落したものも、汚染されずに正当な価格がついている商品との差額を補償すればよい。

 このようなやり方で、汚染された食品が出回るのを防ぎ、汚染されていない食品が売れずに生産者が不当な損害を被ることも阻止できる。

(※)ほかに賛同するメンバーは次のとおり。伊藤隆敏(東京大学教授)、浦田秀次郎(早稲田大学教授)、土居丈朗(慶応義塾大学教授)、八田達夫(大阪大学名誉教授)、八代尚宏(国際基督教大学教授)。

(週刊東洋経済2011年4月30日号掲載 記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

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深尾光洋(ふかお・みつひろ) 慶応義塾大学教授。日本銀行で金融研究局(現・金融研究所)、外国局、調査統計局、OECD経済統計総局などを経て97年から現職。2010年5月まで日本経済研究センター理事長、現在、日本経済研究センター理事兼研究顧問(兼任)。