パルデンの会

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「人権弾圧」こそ中国が生き残る唯一の“道”


門田隆将氏のブログより
  • 2013年10月29日 23:38

「人権弾圧」こそ中国が生き残る唯一の“道”

講演で倉敷にいる。倉敷格子や倉敷窓など、特徴的な「町屋建築」が軒を連ねる倉敷の美観地区には、不思議な魅力がある。かつて天領(幕府の直轄地)だった文化と商業の地・倉敷の風情は、やはり独特のものだ。
宿が、ちょうどこの美観地区と背中合わせの倉敷国際ホテルだったので、この倉敷川沿いの歴史と伝統の風情を満喫させてもらっている。
ちょうど倉敷出身の星野仙一監督率いる東北楽天が王者・読売巨人軍を相手に堂々と日本シリーズを闘っているだけに、今日、乗ったタクシーの運転手も「楽天が勝てるかどうか、気が気じゃありません」と、力が入っていた。
楽天の健闘で東北全体が盛り上がっているそうだが、遠くここ倉敷でも、日本シリーズの一投一打に熱狂している人は多い。出身地というのは、本当にありがたいものである。

さて、今日は、昨日起こった天安門での自爆テロ事件について、少し書いてみたい。中国共産党にとって、天安門に掲げられている毛沢東の肖像に向かって何者かが自動車で突っ込んで炎上させ、テロを敢行したという衝撃は、とてつもなく大きい。世界注視の場所で、自爆テロが起こったのだから、当然である。

報道によれば、新疆ウイグル自治区での弾圧への抗議という見方が一般的だ。中国共産党による少数民族弾圧は、もう54年間も亡命生活を送るチベットダライ・ラマ14世を見てもわかるように、「徹底」かつ「酷薄」なものである。
これら少数民族弾圧がいかに苛烈かは、これまでにもアムネスティ・インターナショナルの報告で繰り返し明らかにされている。
新疆ウイグル自治区では、イスラム教を信仰する人間が投獄されたり、抗議の焼身自殺をする者がいたり、さらには、拘束中のウイグル人の死亡事件など、枚挙に暇がない。思想強化をはかるため、習近平体制がスタート後、ウイグル族への警察部隊の射殺事件も相次いでいるという。

私は、隠しても隠しても現われる中国共産党の人権弾圧について、どうしてもその行く末を考えてしまう。それは、日本人を徹底的に貶め、批判し、日本の領事館に投石し、日本料理店や日本車を焼き打ちする中国人が、実は中国共産党によって徹底的に弾圧されているという「現実」であり、同時にその彼らの将来を「考える」という意味である。

ちょうどタイミングよく今発売の月刊誌『WiLL』(12月号)に、遠藤誉氏(筑波大学名誉教授)が「“朱建栄教授拘束事件”の真相」と題して、興味深いレポートを発表していた。
これは、7月17日に故郷・上海に戻った東洋学園大学教授の朱建栄氏がもう3か月以上も国家安全部に拘束され、いまだに解放されないことの裏事情を記述したものだ。
朱氏と言えば、日本では中国と中国共産党の立場で論陣を張る中国人として知られる。だが、その朱氏にしても、当局の厳しい人権弾圧の対象となったのである。
遠藤氏は、朱氏が拘束される直前まで、朱氏から直接メールをもらっていたことを明かしている。朱氏は、「参考消息」と題して不定期に中国に関するニュースをメール送信していたそうだ。
その中に、機密情報に属するものが含まれており、それが思想強化を押し進める習近平体制の虎の尾を「踏んでしまった」のである。
遠藤氏によれば、今年5月、中国ではイデオロギー統一強化と言論規制に関する非常に大きな動きがあったそうだ。それが、5月13日に発布された「中弁9号文件」である。
ここで西側の価値観によって「中国の特色ある社会主義的価値観を国内外から汚染させるな」という指示を軸に「七不講(七つの語ってはならないこと)」が決定されたという。

その中には、「西側諸国の憲政民主を宣伝し、中国の特色ある社会主義制度を否定すること」や「改革開放に疑義を抱き、中国の特色ある社会主義の性質に疑義を持つこと」などが入っていた。要するに、共産党体制に反対するような「言論」や「思想」は認めない、ということである。

これに反した朱氏は、故郷・上海に戻った後、身柄を拘束され、徹底的な思想改造を受けているというのである。遠藤氏は、ネットユーザーが「5・9億人」もいるネット空間を「静かに」させるために、「お前たちも“七つの語ってはならないこと(七不講)”に抵触するようなことをすれば拘束されるぞ」と脅すためのものだった、と指摘している。

このレポートをちょうど読んだ当日に、天安門での自動車突入・炎上事件が発生した。言論の自由も、思想の自由も、さらに言えば、人として当然の幸福追求の自由すらない「異様な国家」の有り様がそこから見えてくる。

自分の国である日本を叩き、ひたすら中国共産党の代弁者でありつづける日本の一部の新聞は、果たしてこの言論・思想の自由すら存在しない国をどう擁護していくのだろうか。8500万人の共産党員が13億人民を監視していく中国。逆に見れば、「弾圧」がなければ、すなわち思想や言論の自由が認められれば、そもそも「中国は崩壊」してしまうのである。

つまり、「人権弾圧」こそ中国共産党が生き残る唯一の“道”であることがよくわかる。天安門自動車炎上事件と朱建栄拘束事件の陰に潜むものを、我々は冷静に見ていかなければならない。

ソ連ゴルバチョフのように、自ら共産党独裁に終止符を打つような人物が中国に生まれるはずもなく、「弾圧」と「改革開放」という壮大なジレンマの中、中国は矛盾を抱えて歩んでいくしかないのである。国内の不満を外に逸(そ)らせるために、そんな国によって「日本」や「尖閣」が利用されるのでは、たまったものではない。