天安門事件から30周年 東京都内の記念集会で活動家らが日本の対中宥和路線を牽制
2019.06.02
《本記事のポイント》
1989年6月4日、平和的な抗議運動を続けていた学生たちが天安門広場で虐殺された。
それから30年の歳月が流れる中、5月31日に東京都内で「六・四天安門事件30周年記念集会」が開催された。
パネラーとして中国側からは、当時、天安門広場の学生運動指導者の一人で、アメリカに亡命し天安門民主主義大学学長を務める封従徳氏と、2008年に劉暁波氏とともに「08憲章」の草案作りに携わった元北京大学の教授でアメリカ在住のエコノミストの夏業良氏、日本からは国際政治学者の藤井巌喜氏が登壇した。
記念集会を始めるに当たって、天安門広場で亡くなった方々への黙祷が捧げられた。
夏業良氏 日本の対中宥和路線を批判
最初に「中国経済の現状と民主化の行方」と題して講演を行った夏業良氏は、米中貿易戦争ではアメリカが勝つと断言。中国の不動産市場、金融市場を見ると、中国経済の勢いは落ちているため、中国がアメリカに報復すると破滅に向かうと述べた。また中国が米中貿易交渉の切り札にしようとしているレアアースの禁輸も、中国の資源に頼らない体制をつくればよいため、有効なカードにはならないとした。
封従徳氏 平和裏な民主化要求運動を弾圧した中国共産党
封従徳氏は、天安門広場に集まった10万を超える学生たちのデモは、きわめて平和的なものであったと述べ、一枚の写真を見せた。
天安門事件直前の光景を映した写真(封従徳氏の天安門事件の資料を掲載したサイト http://64memo.com/ より)
学生と軍隊そして、女の子が平和そうに並んで映っている。学生運動が「動乱」だったから軍を投入して制圧したという中国共産党の主張は正しくないことを証明する写真といえる。米国務省のオルタガス報道官が5月30日に述べたように、天安門事件では、平和的に抗議していた人々が「徹底的に虐殺」されたのである。
封従徳氏は当時を振り返り、「わたしたちの過ちは、民主化の要求をすれば、政府は改革を行うという夢を抱いていたことです。しかし、その夢は打ち砕かれました。天安門事件後も、西側諸国は経済を発展させることで中国は民主化するという甘い期待を抱きました。しかしこれはまったくの誤解でした」と述べ、天安門事件の教訓から、中国共産党に対してはリアリストであるべきだと強調した。
だが一方で、封氏は理想主義(アイデアリズム)も忘れてはおらず、次のように語った。
「中国共産党はナチスやソ連のように崩壊に向かうと思います。それがいつになるのかは予測ができません。なぜなら共産党政府は暴動を封じ込めるためにあらゆる資源を投じているからです。しかし数パーセントの中国の若者たちにインターネット等で影響を与えられれば、数万、数十万の若者が立ち上がることができます。彼らを導く目標をしっかりとつくり、第二の天安門事件とならないよう、つかんだチャンスを着実に民主化の力にしていきたいと思います」
藤井巌喜氏 日米同盟を強化して中国を打ち破るのは人類の使命
藤井氏は、こう述べた。
「経団連のトップや財界の親中路線から日本のAIなどの最先端技術が流出することがあってはならない」
日本の政治家も中国の民主化を応援すべき
天安門虐殺事件後、経済制裁を受けて国際的に孤立した中国に、いち早く手を差し伸べてしまったのが日本だ。この日本に続いて欧米諸国は、中国への投資を急いだ。経済的に豊かになれば中国は民主化すると考え、中国で儲けることを正当化し、天安門事件の流血の惨事にも目を瞑った。
このような日本や西側の甘い対応が、現在の中国を育ててしまったといっていい。
中国の民主化を実現することは、亡命生活を強いられる中国人の活動家への救済のみならず、安全保障上の脅威に直面する日本の国益そのものだ。本集会には、中国人の活動家、チベットやモンゴルの人々、中国人留学生らが集い、活況を呈したが、日本の政治家の参加は皆無。そのことが彼らの失望を招いているのは否めない。
(長華子)
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