パルデンの会

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フェリー事故に隠された韓国人の心理 見えてきた「難しい隣人」を理解するためのヒント


 ダイヤモンドオンラインより転載
【第329回】 2014年5月27日 真壁昭夫 [信州大学教授

杜撰すぎるフェリー事故に隠された韓国人の心理 見えてきた「難しい隣人」を理解するためのヒント

雲隠れする海運会社のオーナー
フェリー事故対応の驚くべき杜撰
乗客・乗員470名あまりのうち、300人にも上る犠牲者・行方不明者が出た韓国のフェリー事故から、約1ヵ月が過ぎた。多くの人命が失われた痛 ましい事件であり、軽々しく朴大統領の責任や韓国企業の安全対策の不備をあげつらうような、不謹慎な発言をするつもりは全くない。まずは、尊い命を失った 犠牲者の冥福を心からお祈りする。
 事件発生後の約1ヵ月の間、事件についての意見を、韓国の友人や海運事情に詳しい日本人などに、可能な限り聞いてみた。それによって得られた見方や印象を、筆者なりに整理してみたい。
 様々な人にヒアリングをしてみて最も頭に残っていることは、今回の不幸な事件の背景には複雑な事情が潜んでいるということだ。事件の当事者である海運会社の実質上のオーナーは、宗教団体の教祖的存在であるという。
 宗教団体の教祖一族が、なぜ海運会社を経営していたのか疑問が湧く。宗教団体の地位を利用して安価な給与で従業員を集めていたとの報道もある。1 つの見方として、当該海運会社は目先の利益を優先し、ほとんど安全対策を行っていなかったように見える。一方で、経営者一族は多額の財を成していた。
 朴大統領は事後的に法律を改正してでも、海運会社のオーナー一族の資産を差し押さえ、今回の事故の保障資金に当てると発言している。しかし、すでにこの企業は倒産しており、肝心のオーナーは出頭要請を完全無視して雲隠れしている。
 こうした事態が先進国で発生することは、おおよそ考え難いであろう。まさに驚愕に値する。犠牲者の遺族や国民からの怒りは、想像に難くない。その怒りの矛先は主に朴大統領に向かっており、同氏への支持率は50%を割る水準まで下落している。
 そうした一連の事態を冷静に見ると、韓国の等身大の姿が少しわかるような気がする。
目的のためには犠牲も止むを得ない?
謎の多い海運企業と乗組員の行動
 事故の当事者となった海運企業について調べると、実はかなり単純、明快な企業だった印象が強い。事故を起こした船舶は、かつてわが国で運行されていた。その船を購入して、効率を上げるという目的のためだけに、自分たちの都合に合わせて改造したと見られている。
 海運の専門家によると、「改造が船舶の航行に大きな危険を伴うことは、専門家であれば誰でも理解できるはず」と指摘していた。それが正しいとする と、当該企業は危険を承知で、稼ぐことに優先順位を付けた。しかも航行に関しては、リスクを伴うほど過重な積み荷を載せていたという。
 企業が収益を意識するあまりリスクを取ることは理解できるが、今回の事故ではそのリスクが過剰であることは明らかだ。つまり、適正な経営上のリスク管理がなされていなかったということだ。おそらく当該経営者には、本来の意味での経営者としての資質がなかったのだろう。
 事故発生時の乗組員の行動にも、大きな疑問が残る。日本の専門家の1人は、「乗組員が乗客を残したまま下船することは考えられない」と言ってい た。しかも、船が傾いて危険な状況になっているにもかかわらず、船室に残るような指示をしている。結果的に、その指示に従った多くの人が命を落とすことに なった。
 そうした謎の多い行動を考えると、韓国の社会には、特定の目的を達成するために、他のことを犠牲にすることも厭わないという、何らかの考え方があるのかもしれない。そうでなければ、経営者の雲隠れや、乗組員の不可解な行動を説明することができないような気がする。
 その謎を解くカギの1つが、韓国人の友人が指摘した「韓国人は国と役人を信用しない」という言葉にあるのかもしれない。彼は、韓国が高成長を実現するためにサムスンや現代などの財閥系有力企業を支援することで、韓国経済全体に歪みが生じていると指摘した。
財閥偏重主義や企業と役人の癒着
「韓国人は国と役人を信用しない」
 韓国経済に占める財閥系企業の比重は、かなり高い。財閥系の有力企業が大きく成長したお蔭で、韓国経済全体に大きな恩恵があったことは確かだ。しかし、その恩恵が多くの人々に平等に分配されたかというと、必ずしもそうではなかった。
 財閥系企業で働く人とその他の人の経済的格差は大きく、それは新卒学生の多くがサムスンなど有力企業に殺到する事実を見ても明らかだ。今まで、韓 国政府はそうした事実を黙認してきた。こうした経緯の中で、韓国人の中に弱肉強食の価値観が植え付けられ、弱者を顧みない風潮が生まれたのかもしれない。
 また、今回のような事件に際し、勝ち組に入れなかった一般庶民が「国が財閥系企業の擁護者であることが大きな原因の1つ」と考えるのも当然かもし れない。しかも、今回のように強い世論に押される格好で、事後的に法律を変えることも辞さないという、主要先進国で発生しそうのないことが、韓国で起きよ うとしている。
 もう1つ、韓国の友人たちが話題にすることは、役人と企業との癒着の問題だ。一部の役人は役所を退職後、主要企業に天下りする慣行があるため、本 来企業の行動を監視する立場の役人が企業に対してとても寛大なスタンスを取ることがあるという。それでは、安全を犠牲にしても収益獲得に走る企業に歯止め をかけることは、難しいかもしれない。
 さらに、政府系機関が事なかれ主義に走るため、どうしても行動が遅くなる可能性があるという。そうした傾向は韓国だけに限ったことではないだろうが、船の沈没までの映像を見ていると、指摘されるような問題があったと思わざるを得ない。
 今回の事故における、一連の不手際に対しての犠牲者や国民の怒りは、主に朴大統領に向かっている。それは支持率の低下を見ても明らかだ。そこにも、難しい隣人である韓国を理解する鍵があるように思う。
 今回の事故の最終的な責任は、朴大統領が涙ながらに語った通り、最高責任者である大統領に帰着するのだろう。しかし、大統領1人の責任が全てということはありえない。事故背景には様々な要素が絡んでいる。
 収益優先主義で業務を続けてきた海運会社をはじめ、役人の意識の問題、政府の経済政策、さらには韓国人のカルチャーなど、色々なファクターがあるだろう。それにもかかわらず、怒りの炎は大統領に向かっているようだ。
なぜ朴大統領に怒りが集中するのか?
難しい隣人、韓国を理解するために
 韓国人の友人の1人は、「韓国人は性格が激しく、熱くなりやすい人が多いため、どうしても怒りが一点に向かいやすい」と指摘していた。それが印象に残っている。もちろん、彼の指摘が全て正しいとは限らない。ただ、他にも何人かの人からそうした話を聞いたことがある。
 たとえば、ソチ・オリンピックのフィギュア―スケートで韓国人選手の得点が思ったように上がらないと、「審判がおかしい」という指摘があっという間に盛り上がり、連盟への提訴にまで発展する。
 サッカーの日韓戦で、わが国選手が韓国選手から睨みつけられたという話を聞いたこともある。わが国の選手が憎いわけではないのだろうが、「韓国チームが日本に負けるわけにはいかない」という強い心理が働いていたのかもしれない。
 そうした韓国の人々の伝統的な心理を考えると、多くの尊い人命が失われた今回のような事故では、どこかに怒りの矛先が集中する可能性が高いのだろ う。国内の経済格差や役人と企業の癒着などに対する人々の不満のマグマが蓄積していることと合わせ、その矛先は最高責任者である大統領に向かうことになっ たと考えられる。
 そうした見方が正しいとすれば、足もとでさらに付き合い方が難しさを増している隣人、韓国をより理解するヒントになるだろう。