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パナマ超す運河、中国資本の野心

世界新秩序 米中を追う)パナマ超す運河、中国資本の野心

2014年6月23日05時00分朝日新聞



 100年前、米国がその「裏庭」とも呼ばれる中米につくったパナマ運河は、太平洋とカリブ海大西洋を結ぶ海運の大動脈の役割を果たしてきた。同じ中米ニカラグアで、この夏、パナマ運河を大きく上回る規模の運河建設が動き出す。担うのは、中国資本だ。
 5兆円規模と見込まれる総工費は、ニカラグア国内総生産の約5倍。反米姿勢で知られる同国のオルテガ大統領が、貧困脱出を掲げてこの構想をぶち上げ、昨年6月、公開入札なしで香港ニカラグア運河開発投資有限公司(HKND社)と工事請負契約を結んだ。
 約半年前、運河の建設地として有力視されるラスラハス川の周辺で、中国人らしき数人のグループが地元住民に目撃された。軍用車やヘリコプターで移動し、川を撮影、測量した。銃を持つニカラグア兵10人以上が警護していた。

 6月上旬、そこはうっそうとした熱帯の樹木に覆われていた。茶色く濁った川面の幅は数十メートル。雨期以外は干上がる場所もあり、放牧された馬が川底を歩く。「タンカーが通れるはずがない」。川沿いのレストランで働くファティマ・デュアルテさん(42)は、壮大な計画への疑問を口にした。

 運河の総延長はパナマ運河の3倍以上。建設に必要な拡幅・浚渫(しゅんせつ)工事は大がかりで困難とも指摘される。
 HKND社の総裁で通信機器大手の信威通信産業グループも率いる王靖氏(41)は19日、「調査はほぼ終わった。7月末には見通しを説明したい」と北京のグループ本社で語った。「運河は40万トン級の大型船が航行でき、世界の海運の1割がここを通る。国際貿易は必ず大きく活性化するだろう」と強調。巨額の建設資金は「全世界から集める」と自信を見せた。
 一方、オルテガ大統領の側近、ポール・オキスト秘書官は「HKND社は中国の銀行や企業とつながりが深い。万一、資金繰りに問題が生じても、資金を調達できる」と語っている。
 米国は、1999年に施政権をパナマに移譲するまで運河を管理した。いまも影響力を残し、兵器や麻薬の密輸に目を光らせる。ニカラグアの運河建設計画には「コメントしない」(国務省当局者)としている。
 ニカラグア議会はHKND社に運河開通後50年間の管理・運営権を与え、さらに50年間の延長も認めた。完成した運河が完全にニカラグアのものになるのは、おそらく100年後になる。
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 威光がかげる米国と膨張する中国。今回は中米やアフリカなどでの動きから、新たな秩序の行方を探る。
 (春日芳晃、田村剛、小山謙太郎)