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大前研一:吉田証言を取り消した朝日新聞、慰安婦問題で国民に謝罪せよ




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大前研一:吉田証言を取り消した朝日新聞慰安婦問題で国民に謝罪せよ

nikkei BPnet 8月27日(水)8時53分配信

 朝日新聞が8月5日付朝刊で、従軍慰安婦問題を取り上げた自社の報道を検証する特集記事「慰安婦問題を考える 上」を掲載した。その中で、韓国・済州島で女性を強制連行したとする吉田清治氏(故人)の証言に基づく記事について、「証言は虚偽だと判断し、記事を取り消します」とした。

■これは謝罪ではない

これを受けて自民党石破茂幹事長は同日、「地域の平和と安定、隣国との友好や国民感情に大きな影響を与えてきた報道だ。検証を議会の場でも行うことが必要かもしれない」と述べ、朝日新聞関係者の国会招致を求める可能性に言及するなど、朝日新聞の責任追及の声はほかにも広がりを見せている。

朝日新聞の一連の特集記事を読んで私が感じたのは、これは「謝罪ではない」ということだ。訂正・謝罪記事であるかのように見せかけているが、実際には吉田証言だけを悪者に仕立てて、従軍慰安婦をめぐるこれまでの朝日新聞の報道姿勢には問題がなかったと開き直っている。吉田証言が虚偽であったとしても、従軍慰安婦問題の「本質」は変わらないというのが朝日新聞のレトリックである。

しかし、吉田証言を最大の根拠にして朝日新聞従軍慰安婦問題を報道してきたのだから(朝日新聞は吉田氏について少なくとも16回記事にしている。初掲載は1982年9月2日)、その吉田証言と従軍慰安婦問題を切り離すことには無理があるだろう。朝日新聞は虚偽の証言に基づいて従軍慰安婦問題を記事にし、それによってとくに韓国の世論を動かすことになった。また、いわゆる靖国参拝問題も最初に焚きつけたのは朝日新聞の記事だった。

■国民に迷惑をかけた“捏造記事”

言ってみれば、朝日新聞の報道が原因で、現在の最悪の日韓関係が生じたようなものである。「日本は歴史を正しく認識していない」と韓国はすぐに言ってくるが、その韓国の人々の「歴史認識」なるものは朝日新聞の記事がきっかけとなっている。

仮に朝日新聞従軍慰安婦の記事を大々的に書いていなければ、韓国は従軍慰安婦問題を大きく取り上げることはなかっただろう。朝日新聞が記事を書く32年前までは、従軍慰安婦“問題”などというものは存在していなかった。

その意味で、吉田証言に基づく朝日新聞の“捏造記事”は、国家・国民に対してものすごく迷惑をかけたということになる。であれば、記事の訂正をするよりも、朝日新聞はまず日本国民に謝罪すべきである。

今回の朝日新聞の訂正記事は、日本国民への謝罪という点ではまったく不十分だ。これだけ日本国民の名誉を傷つける大きな問題を引き起こし、韓国にも誤解を与え、さらにその誤解をベースに反日嫌日という世論が韓国に形成されてしまったことに対し、朝日新聞は大きな責任を感じなければならない。

さらに、アメリカの韓国ロビーの働きかけでアメリカにまで従軍慰安婦像が建てられ、いつの間にか世界中で「性の奴隷(sex slave)」という女性問題に“昇華”してしまっている。


■真摯に反省しなければならない



「現在の日韓関係悪化の原因はすべてわれわれの誤報にある」というところまで踏み込んで責任を認め、誠実に謝罪しなければ、今回の誤報問題には決着がつかないと思う。きちんと決着をつけないまま、吉田証言は虚偽だったが従軍慰安婦問題の「本質」は変わらないと言ったところで、誰も朝日新聞の言い分には耳を傾けないだろう。

また、朝日新聞は「できることならば誤報記事を書いた32年前に戻ったつもりで歴史を作り直したい」という気持ちで臨むべきだ。もしあの“捏造記事”を書いていなければ、日韓関係はこのようになっていただろうという想像力も含めて、真摯に反省しなければならない。

ところが、朝日新聞は自分たちの反省もそこそこに、ドイツとフランスはどうして仲良くなっているのか、といった記事を書き飛ばしている。要するに、戦後の日本は反省が足りない、という恨み節を投入することで自分たちの責任を誤魔化そうとしているのだ。

結局、エリート・ジャーナリストとしてのプライドが邪魔しているのだろう。あるいは古いことなので現役の自分たちの作り出した問題ではない、という意識なのか、「ごめんなさい」と素直に詫びることができない。


■廃刊に追い込まれてもおかしくない



産経新聞の報道によると、女子挺身隊と慰安婦は別物という認識を22年も前に朝日は持ちながら、それを報道せず、いつの間にか小学生まで慰安婦として強制連行されたという韓国の言い分に荷担していた、という。この件は朝日のソウル特派員の報道を日本の本社サイドが恣意的に削除した可能性が指摘されている。当時の朝日新聞の上層部の偏向を知る上でも、吉田証言と女子挺身隊に関する究明が朝日自身によって進むことを期待したい。

記事が正確だったかどうかというだけでなく、誤った記事によって韓国からの不当な請求・要求を招いてしまったという事実を、朝日新聞のエリート・ジャーナリストたちは直視すべきだ。また河野談話に関する日韓両国の事前打ち合わせ疑惑なども韓国に対しては分かる限りの実態解明を進めるべきだ。

朝日新聞を国会招致する可能性に言及した石破氏の発言などをとらえて、「言論弾圧だ」と反発している人もいるようだが、私も石破氏と同様に国会で朝日新聞の責任を追及すべきだと考えている。

これが普通の国だったら、朝日新聞は廃刊にまで追い込まれているはずだ。政府だけでなく、何よりも怒った国民は“捏造”新聞社の存続を許さない。


■「マルコポーロ」事件より深刻な問題



ただ、日本のインテリ世論というのは朝日新聞が支配しているので、朝日新聞が廃刊に追い込まれることはないだろう。

しかし、インテリ世論への影響力が弱いメディアの場合は、日本でも“捏造記事”がきっかけでその姿を消している。たとえば、1995年2月号で『ナチ「ガス室」はなかった』という記事を載せた月刊誌「マルコポーロ」(文藝春秋社)は廃刊に追い込まれ、同時に文藝春秋社長も辞任している。

私個人としては、朝日新聞従軍慰安婦記事は、「マルコポーロ」の記事よりもはるかに深刻な問題だと思っている。国家・国民への悪影響、今日に至るまでの隣国韓国との関係悪化、アメリカの女性団体まで巻込んでしまった、というシリアスな問題だ。

同時に、韓国の朴槿惠(パク・クネ)大統領の発言を分析し、朝日の言う「強制」性がなかったとすれば、韓国世論や歴代の大統領の発言はどのように変わっていただろうかを推測・公表する作業を進めてもらいたい。

朝日新聞戦後民主主義」と言われるくらい朝日はインテリの左翼化に与してきた。そうした世論に守られて特別扱いされている朝日新聞だが、それに安住することなく、新聞社として国民にきちんと謝罪し、目指すべき新しい方向を国民の前に提示してもらいたい。

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