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世界が称えた日本のUNSUNG HERO(謳われることなき英雄)
五年に一度、世界から51人だけが選ばれるUnsung Heroes of Compassion。弱きもの、虐げられたものの傍に立ち、苦楽を共にしながら人道的支援活動を続ける”名もなき英雄たち”を称えるこの賞に、2014年日本人として初めて一組の夫婦がそれぞれ選出された。
ハーバードからチベットへ
トモは幼いころから世界を飛び回っていた。横浜で生まれた後、国際銀行家である父の仕事の都合でイギリスへ渡る。小学校は再び日本で通い、中学からはアメリカ・ボストンへ。そのまま地元のハーバード大学に進学し、世界への強い興味から文化人類学を専攻し、また医療の道も考えていた。
大学一年の夏はフィジーでコミュニティ・サービスのスタッフとして働き、二年の夏はボツワナで文化保護NGOのインターンとして活動。三年時にはオックスフォード大学へ半年間留学し、夏には外資系投資銀行の東京オフィスでインターン生活。学生でありながら家付き月給55万円という破格の待遇を味わう。
4年時には正式にオファーも受けるが「自分がやりたいことはこれではない!」と確信し、卒業後は”フリーター”に。目標が見いだせない日々が過ぎ、ある日突然長年の”憧れの地”であった中国へ渡ることを決意する。北京で英語講師をしながら中国語教室へ通うが、SARSが中国全土を襲いNYへ避難。
世界の中心NYで多くの刺激を受けた後、再び中国へ渡りチベットを支援する国際開発NGOの四川省オフィスへ就職。チベット族の学校建設・職業訓練を通じて、雄大なチベットの自然と文化に出会う。近代化が猛スピードで進む中国において、チベットが本来の姿を保ちつつも持続可能な成長を続けられるよう働き続けた。
チベットからハーバード、そして世界へ
二年間の任務を終え、「これが自分のやりたいことだ!」と確信したトモは、国際開発の世界へ進むためにハーバード・ケネディ行政大学院で公共政策学を学ぶため再びボストンへ。卒業後はユニセフ(インド)、セーブ・ザ・チルドレン(コートジボワール)、英国大手財団Children’s Investment Fund Foundationにて世界の子供たちの保健・教育・権利に重点を置いたプロジェクトの企画推進・評価等を行う。
太平洋の気候変動に挑む
そこで見たものは想像を超えた途方もない現実。多くの島々が急激な気候変動による環境の変化に脅かされていた。卒業後は大手コンサル会社のプライスウォーターハウスクーパーズに就職。ビジネスの世界で多くを学んだ後、気候変動問題に取り組むためにハワイ大学の大学院で学び、2009年のサモアでの地震・津波被害の救援活動に従事。2011年3・11以降は日本で支援活動を展開した。
海面上昇で国家が水没の危機にあるツバルを救うTuvalu Overviewにも参加し、太平洋地域のスペシャリストとして活躍。二度目の出産を間近にした2014年秋にインドネシア・バリ島へ。夫のトモや友人たちと立ち上げたNPOアースカンパニーにて、ハワイ時代に出会った親友ベラが目指す”東ティモールのグリーンスクール”計画を支援している。
謳われることなき英雄
カリフォルニアが産んだ奇跡のワインとして名高い「GRACE FAMILY(グレース・ファミリー)」創業者のディックとアン夫妻。自らの事業の収益の大半を人道支援や慈善活動に投じることで世界的に有名なこの夫妻と、チベット仏教法王のダライラマ14世によって創設されたのがUnsung Heroes of Compassion、”弱きものとともにある、謳われることなき英雄たち”だ。