人々たち、ISILと同じリスクではないのか??????????
日系企業も大揺れ 中国、反腐敗の大波(ルポ迫真)
- 2015/2/3 3:30
- ニュースソース
- 日本経済新聞 電子版
ノーネクタイで紺のスーツに身を包んだ男の名は潘勝●(桑の又が火)(64)。20年以上にわたって日立の中国でのエレベーター事業をけん引してきた人物だ。EBCでのもてなしに満足げな笑みを浮かべていた潘は中国に帰ると、その後の成り行きを悟ったかのように身辺整理に動き出した。
潘は中国で日立のエレベーターを扱う子会社、日立電梯中国の総裁を務めつつ、同社に出資する国有企業、広州広日集団のトップも兼ねていた。だが昨年10月16日付で潘は広日集団の職を「定年」を理由に突如辞した。年が改まった1月6日。共産党の広東省規律検査委員会が潘を「重大な規律違反と違法行為」の疑いで調査していると発表すると、潘は表舞台から姿を消した。
「労働者上がりの僕が日立に日本語や技術を学ばせてもらいトップになった。こんな男は(階級社会の)中国にいないよ」。周囲にそう漏らした潘が何の容疑で拘束されたかは今もわからない。日立は「事実関係を調査中」とだけコメントし、関係者は「潘に連絡が取れず、決裁を仰げない。事業が滞ってしまう」と戸惑う。約2週間後、潘の側近で、日立のエレベーター子会社の要職も務めた広州広日集団の副総経理まで拘束された。
習近平(61)指導部が進める反腐敗運動は党幹部や官僚にとどまらず、現地に進出する日本企業にも芋づる式に追及の手を伸ばしている。
押し問答の末に浮かんできたのは特定の取引先に対する便宜供与をあぶり出そうとする当局の強固な意志だ。取引先はすでに摘発を受けた役人の親族の会社だった。割引は見返りを求めた賄賂ではないか。日本人総経理は「知らなかった」と言うが、それで済むのか。日本人の経営者の管理責任はどこまで問われるのか。日々、社内に疑心暗鬼が膨らんでいる。
「採用のプロセスが適切だったのか、すぐに調べろ」。上海の米系企業の人事・労務担当者に今、中国人の就職の経緯を洗い出すよう号令がかかる。中国を牛耳る党・政府関係者に接近するため子息の「コネ入社」も珍しくなかった。子息の一族が反腐敗の網に引っかかったら……。担当者は万が一のリスクを最小化しようと必死だ。
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習主席は腐敗を「決して容認しない」と語る。中国で腐敗に絡む処分は昨年、共産党員だけで2万人余りと伝わり、追及は地方や企業にも及ぶ。粛正の大波を追った。