パルデンの会

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「今売れ、質問はあとだ」。人民元さらに下落の展開へ    上海株は「官」だけが買って、投資家には「株を売るな」


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宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成27年(2015)8月18日(火曜日)
  通算第4630号
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 「今売れ、質問はあとだ」。人民元さらに下落の展開へ
   上海株は「官」だけが買って、投資家には「株を売るな」
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 天津大爆発によって、市場が壊れ始めた。
 いま機関投資家の行動は、人民元のさらなる下落に備え「
いま売れ、考えるのはあとでいい」(フィナンシャルタイムズ、8月18日電子版)とばかり、人民元資産(株、債権、投信、通貨)の投げ売り状況になったようである。

 株式は「凍結」状態で、
売ってはいけないという出鱈目な指令がでており、上海、深センでは外国人の売買は事実上、取引がないが、連動する香港株式市場と、米国に上場しているアリババなどのNY株式市場では、売り買いが自由。ジョージ・ソロスが保有する中国株の殆どを売却していたように、誰もが「見切り」を付けた。

 だめ押しが天津大爆発で、
トヨタは生産再開の見通しが立たないと嘆くが、逆に、この機会を利用して「撤退」準備に入った方が賢いと言うものだろう。トヨタ社内には、そういう意見がないのだろうか?

 ほぼすべての経済政策は暗唱に乗り上げ、
しかも経済失策の責任問題となると、経済政策の大半を担当官庁の国務院から中央の「子組」習近平が取り上げてしまった以上、経済の停滞、失速の責任は李克強首相ではなく、習近平その人にかかってくる。

 せっかく反腐敗キャンペーンで庶民の人気を得てきたが、
インフレ、失業、輸出減という現状から、次の不満の爆発は反習近平路線へと繋がりかねない。
 習の路線は「毛沢東路線」への復帰である。
つまり改革開放に歯止めをかけて、計画経済に戻ろうという姿勢だから、今後の諸問題は、このポイントへ舞い戻って考えることになる。
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人民元安ショックで日銀緩和? 市場に思惑じわり
経済部 浜美佐

2015/8/17 12:26
 夏休みモードの市場にショックを与えた中国人民銀行による突然の人民元切り下げから明日で1週間。市場でじわりと高まりつつあるのが日銀による追加緩和期待だ。期待の裏には人民元切り下げが日本の物価押し下げにつながるという読みがある。原油価格の下落に続き、4~6月の実質GDP速報値が3四半期ぶりにマイナスに転落したのもこうした見方を助長する。来年前半に物価目標の達成を目指す日銀に、冷たい秋風が吹いてきた。
 先週中国人民銀行が元切り下げに踏み切ったのを受け、市場は大きく動揺した。中国経済が想定以上に悪化しているのではないかとの警戒から、中国をはじめアジアの株価や通貨は全面安となった。ただ今回の措置は中国政府が以前から推し進めてきた元の国際化の流れや、行き過ぎた元高を是正するなどの目的もあったとみられる。SMBCフレンド証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは「連日の切り下げによる短期的なショック療法はいったん終了したとみてよい。元安で中国経済は下支えされ市場は落ち着きを取り戻す」と指摘する。
 一方、市場参加者の間で懸念が高まりつつあるのが、日本経済、とりわけ物価への潜在的な影響だ。「中国がデフレを“輸出”する可能性が高い」。こう警鐘を鳴らすのはバークレイズ証券の森田京平チーフエコノミストだ。仮に中国企業が今回の元切り下げをきっかけに、輸出物価の引き下げに動いた場合、日本の輸入品の価格が下落し、消費者物価指数(CPI)に下げ圧力がかかる。デフレから脱却しようとする日本の物価を中国からの安い輸入品が抑える格好だ。
 元安になったからといって、必ずしも中国企業が輸出価格を引き下げるとは限らない。ただ原油価格の下落で中国企業の生産コストが下がり、輸出価格を下げても採算が合うようになってきた。過剰生産設備を抱える中国企業の多くが輸出数量を増やして、少しでも稼働率を上げたいと考える可能性も高い。輸出価格引き下げに向かいやすくなっているのは確かだ。森田氏は「人民元が対ドルで10%減価し、それが中国の輸出物価の下落に直結すると、日本のCPIは最大で0.1%ほど押し下げられる可能性がある」と試算する。
 さらに、今朝内閣府が公表した2015年4~6月期の実質国内総生産(GDP)速報値は年率換算で1.6%減と3四半期ぶりにマイナス成長となった。国内の景気停滞に加え、直近の安倍晋三政権の支持率の低下も、政府・日銀が金融緩和も含めた何らかの景気対策を打ってくるのではないかとの見方につながっている。
 もっとも、日銀の黒田東彦総裁の発言を聞く限り、追加緩和が近づいていることを思わせるフシはない。日銀が先週公表した7月の金融政策決定会合議事要旨でも、中国・新興国を中心とした外需の弱さが指摘される一方、内需には強気な見方が多かった。
 だが市場参加者はこうした日銀の「公式見解」には半信半疑だ。「昨年10月の追加緩和の直前まで日銀からの情報発信が一貫して強気だったことを忘れた日銀ウオッチャーはいない」。こう苦言を呈するのはJPモルガン証券の足立正道シニアエコノミストだ。足立氏は「日銀は国内経済の弱さは一時的と繰り返すが、データを丁寧に追いかけている海外投資家が日本経済の弱さを懸念しても何らおかしくない」と指摘する。
 現時点で年内緩和を見込む声は市場の半数に届かないが今後出る物価統計次第で急速に増える可能性がある。そうなれば円相場が動く恐れもありそうだ。



人民元切り下げが示す中国経済の苦境と
世界への悪影響

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第392回】 2015年8月18日

突然の人民元切り下げの実態は
なりふり構わぬ輸出テコ入れ策

 8月11日、突然、中国人民銀行は2%近い人民元の切り下げに踏み切った。その後13日まで3日連続で切り下げ、その間の下落幅は4.5%に達した。
 今回の措置は、表向きIMF国際通貨基金)の勧告に従った人民元改革と称しているものの、実際には、中国政府の輸出のてこ入れを狙った景気刺激策の一環と見る。
 足元の中国経済の減速感は、ここへきて一段と鮮明化している。中国国内では、生産能力の過剰感が高まっており、企業間の取引価格の水準を示す今年7月の卸売物価指数は、前年同月比マイナス5.4%と3年5ヵ月連続で下落した。
 そうした経済低迷に危機感を持つ同国政府は、これまでにも金利の引き下げやインフラ基金の創設など矢継ぎ早に手を打っているものの、不動産バブルや債務の積み上がりなどの問題があり、期待したほどの効果が上がっていない。
 それに加えて7月の同国の輸出が前年同月比でマイナス8.3%と大幅に落ち込んだことを受けて、中国政府がなりふり構わず人民元の為替レートを切り下げたというのが実態だろう。
 実質的な通貨切り下げを、人民元改革の一部と説明することで相応の体面を保つことを考えたと見られる。
 世界最大の貿易黒字国である、中国の為替レート切り下げの影響は小さくはない。人民元が切り下げられたことで、アジア諸国などの通貨は弱含みになるだろう。それは、結果的に通貨の切り下げ競争につながる可能性が高い。
 現在の世界経済の状況を考えると、通貨切り下げ競争によって最終的に強含むのは米ドルになるだろう。重要なポイントは、米国経済がそれに耐えられるか否かだ。

人民元は円に比べ4割強含み
中国の輸出産業には大きなマイナス

人民元に係る為替制度には大きな二つの特徴がある。一つは、基本的に人民元中国人民銀行の厳格な管理下にあることだ。
人民元とドルを交換する場合、人民銀行が毎日提示する交換レート=基準値から、上下2%の範囲に限定されている。つまり、人民銀行の基準値から上下2%を超える取引は、実際上できないということだ。
 ところが、人民銀行が提示する基準値の計算方法は公表されていない。言ってみれば、人民銀行が勝手に基準値を決めることになる。そのため、提示されたレートが実勢を反映していようといまいと、それから上下2%内での取引しかできないのである。

 そうした中央銀行の恣意的な基準値の提示や厳格な為替管理体制に対して、米国など主要国から人民元が実勢を反映せず、過小評価されているとの批判を受けることが多かった。またIMFからは、現在、ドル・ユーロ・円・英ポンドで構成されるSDR=特別引出権の算出対象通貨に人民元を加えるべく、人民元の為替制度改革を要請されていた。

 もう一つは、人民銀行が算定する毎日の基準値は、従来、ドルとほぼ連動するように算出されていたことだ。そうした仕組みはソフトペッグ制度と呼ばれ、当該通貨は基本的にドルが上がると上昇し、下がると下落するという同一方向に動く仕組みだ。

 ソフトペッグ制度だったため、2011年以降、ドルの上昇とともに人民元も上昇傾向を辿り、人民元は円などの通貨に対して約4割強含みの展開になっていた。自国通貨が上昇することは、当該国の輸出産業にとって条件が厳しくなることを意味する。それは、輸出依存度の高い中国経済にとって無視できないマイナス要因だ。

進まない構造改革と鮮明化する景気減速
背に腹は代えられず輸出振興を選択

 従来、中国経済の主なエンジンは輸出と設備投資だった。特に、リーマンショック以前は、同国は世界の工場として輸出の大きく伸びる時期が続いた。
 ところがリーマンショック以降、世界経済が失速したことで輸出の伸び悩みが顕在化した。それに対して胡錦濤政権は、景気刺激の目的で4兆元=邦貨換算で70兆円を超える大規模な景気対策を打った。

 その景気対策中国経済は一時的に回復基調を歩んだが、結果として、過剰生産能力を抱えることになった。粗鋼やセメントなどの過剰供給能力の売り先として、新興国のインフラ投資を見込んでアジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設を意図したものの、AIIBの活動が開始するのは早くて今年末近くになる。

 元々、習近平政権は、振れが大きくなりがちな輸出への依存度を減らす一方、相対的に安定した国内の個人消費中心型へのモデルチェンジを図った。しかし、国内で主に消費活性化を担う中間層がなかなか育たないこともあり、モデルチェンジにはまだ相当の時間を要する。
 過剰生産のはけ口として、新興国のインフラ投資を見込んで創設予定のAIIBが活動を開始できるのは、前述の通り早くて今年末近くと言われている。それでは、足元の中国経済の減速ぶりを見ると、効果が実現するタイミングが間に合わない。
 足元の中国経済については様々な見方があるものの、最近発表になる経済統計を見る限り、かなり厳しい状況に追い込まれているのは確かだ。経済状況が悪化すると、国民の間に不満が蓄積するのは避けられない。
 一部の中国経済専門家には、「これ以上景気減速が鮮明化すると、習政権に対する不満が顕在化して政権維持が難しくなることも考えられる」との見方もある。政府としても背に腹は代えられず、人民元を実質的に切り下げて輸出振興を図ることを選択せざるを得なかったのだろう。

勝者なき通貨切り下げ競争と
米国景気への悪影響の懸念

 中国国内からは、「人民元を10%程度切り下げるべき」との声が出ているようだ。今後、欧米がクリスマス商戦に向けて、中国からの雑貨品等の輸入の手当てを行う時期に向けて、人民元が下落することの意味は小さくはない。
 問題は、今回の実質的な人民元切り下げによって、世界経済の微妙なバランスを崩す可能性があることだ。中国が自国通貨を切り下げると、一部のアジア諸国などもそれに追随することが想定される。

 既にベトナムは為替変動の範囲を広げることで、通貨ドンの実質的な切り下げを可能にすることを発表した。他にもそうした国が出てくることが考えられる。特に、現在のように、世界的に過剰生産能力が存在し、企業間物価指数に下押し圧力がかかりやすい状況では、その連鎖が広がり最終的に為替の切り下げ競争へと発展することが懸念される。

 為替の切り下げ競争が現実味を帯びてくると、国際市場の勝者なき競争が激化し、結局、世界経済全体の足を引っ張ることも考えられる。
 また、今回の人民元切り下げの措置で、「資源多消費型の中国経済が相当厳しい状況に追い込まれている」との見方が広がると、資源などのコモディティ価格の低迷が続き、一次産品の生産国には無視できない逆風が吹くことになる。
 さらに懸念されるのは、人民元の切り下げの影響が米国にも及ぶことだ。人民元が切り下げられるということは、ドルが一段と上昇することを意味する。ドルが上昇することは、米国の輸出企業にとっては経済環境が悪化することだ。
 そうした状況の中で、2009年央以降回復を続けてきた米国経済が、これからも回復基調を維持することができればよい。しかし、ドル高・原油安の逆風の中で、同国企業の業績の伸び悩みの兆候が出始めている。
 今まで世界経済を牽引してきた米国経済に、人民元切り下げをきっかけに上昇トレンドの息が切れるようなことがあると、世界経済は大きな試練を迎えることが考えられる。そのリスクを過小評価するのは適切ではない。