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チベットの悲劇描き続ける=自殺者の「顔」を歴史に-中国




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死者・行方不明者が2900人以上に上った2010年の中国青海省玉樹チベット族自治州地震を題材にした北京の画家、劉毅氏の絵(劉氏提供)

 

チベットの悲劇描き続ける=自殺者の「顔」を歴史に-中国

2015年09月08日 17時59分
提供:時事通信
 
 【北京時事】中国チベット自治区成立から50年を迎え、共産党・政府は8日、区都ラサで大規模な祝賀大会を開催した。一方で近年は、当局の チベット政策に抗議して、チベット族住民が焼身自殺を図る悲劇が続いている。北京の画家、劉毅氏は命を絶った一人ひとりの顔を描き、歴史に残す作業を続け ている。劉氏は「絵画を通じて真実を伝えたい」と語る。
 チベット自治区や四川、甘粛、青海省などのチベット族居住区では2009年2月以降、相 次ぎ焼身自殺を図った約140人のうち約120人が死亡した。当局の抑圧に不満を持つ僧侶らがラサで起こした08年3月の大規模抗議以降、チベット族に対 する締め付けは一層強まり、自殺者の多くは「(チベット仏教最高指導者)ダライ・ラマ14世の帰還を」などと叫んで自らに火を付けた。
 中国国内ではチベット族焼身自殺に関するニュースは報道されない。劉氏は海外のニュースサイトに報じられた自殺者の小さくぼやけた顔写真を拡大し、力強い線を走らせた。
 劉氏はこう話す。「中国現代芸術に最も欠けているのは真実だ。中国は非常に不公平で、正義の空間を広げなければならない。だから絵を通じて真実の記録を表現したい」。
  劉氏が描くのはこのほか、1989年の天安門事件で武力弾圧された民主化運動に参加した学生らや、08年の四川大地震の際、当局と癒着した建設業者による 手抜き工事で造られた校舎の倒壊により、埋もれて犠牲になった子供たち。権力によって虐げられた「悲劇」を描き続ける。
 一方、ラサで8日開催さ れた祝賀大会。ポタラ宮広場では巨大な中国国旗や、習近平国家主席ら歴代トップの写真を先頭に行進が行われた。兪正声全国政治協商会議(政協)主席は演 説で、「ダライ・ラマ14世などによる分裂破壊活動を挫折させる」と訴え、「チベットの未来は輝かしく、希望にあふれている」と強調した。 【時事通信 社】



中国:チベット政策自賛 自治区成立50年 経済成長強調、宗教では「抑圧」緩めず

毎日新聞 2015年09月08日 東京朝刊

 【上海・林哲平】中国チベット自治区が1日に成立50年を迎えたことに合わせて、習近平指導部が経済成長などの成果を強調して中国統治の正当性をアピールしようとしている。中国は一方で、独立につながる動きを警戒し、宗教政策について中央政府の管理強化を打ち出している。

 中国中央テレビ(CCTV)は6日、記念式典に出席するため、区都ラサの空港に到着した共産党序列4位の兪正声中国人民政治協商会議主席らをチベット族が中国国旗を振って歓迎する様子を放送、「民族の協調」を演出した。

 宗教的な抑圧に対するチベット族の反発が続く中、指導部が重視するのが経済だ。6日に発表したチベットに関する白書は、自治区の域内総生産額が50年間で281倍になったと自賛した。国営新華社通信によると、習近平国家主席チベット政策に関する8月の会議で「困窮している人の生活を改善する」と民生分野に重点的に取り組む姿勢を示した。

 一方、宗教政策では厳しい姿勢を見せる。習氏は会議で、チベット仏教の最高指導者でインドに亡命中のダライ・ラマ14世を名指しして、「社会の安定を破壊する行為には法に従って打撃を加える」と強調した。

 チベット族が不安を募らせているのが80歳を迎えたダライ・ラマの後継問題だ。チベット仏教には、高僧が死後に生まれ変わる「輪廻(りんね)転生」制度がある。中国は2007年、転生に政府の事前承認を求める条例を制定。後継者問題に介入することで自治区での影響力強化を狙っている。

 1995年には、ダライ・ラマが宗教指導者パンチェン・ラマ11世に指名した6歳の少年が行方不明になる事件が発生。別の少年を11世として認定した中国政府に国際社会の批判が集まった。
 英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)によると、6日に記者会見した自治区党幹部は、行方不明の少年について「普通の生活を送っていて、邪魔されることを望んでいない」と述べ、当局の監視下で暮らしていることを示唆した。

 中国政府の抑圧的な宗教政策へのチベット族の反発は根強い。チベット族居住地域では僧侶や住民による抗議のための焼身が続いている。インド北部ダラムサラチベット亡命政府は1日、ダライ・ラマが訴えている「高度の自治」を改めて主張する声明を発表。「ダライ・ラマの転生者を中国政府が選ぼうとすれば、国際的批判を招く」とけん制した。



「落第」習近平を待つアメリカの評価

2015年09月08日(火)16時20分
ニューズウイーク
 中国の習近平国家主席は9月25日前後にアメリカを訪問する。ホワイトハウスでは建物の南に位置する広場「サウスローン」で歓迎式典が行われる予定だ。
 中国国内で、習近平は反汚職キャンペーンという「金棒」で政敵を叩き潰すだけでなく、党中央に新設した「財政経済指導小組」など10数個の小組トップを自ら兼務。政府機構は骨抜きになり、7人の政治局常務委員による協力と分担は彼の独断に取って代わられた。

「法治」も落第だ。浦志強弁護士や高瑜記者の逮捕など人権活動家に対する弾圧が加速しており、7月にはさらに大規模な弁護士拘束事件も発生。多くの人たちがいまだに釈放されていない。習近平の反汚職キャンペーンは法的手続きをまったく無視して続いており、腐敗幹部に対して共産党は「家法」である「双規(編集部注:共産党内部で法律に基づかず人身の自由を制限し、隔離・審査する制度)」を使って捜査・拘束を続けている。そして反汚職キャンペーンでは「大トラ」も「小バエ」も摘発されているが、決してこの国の本当の統治者である「赤い家族」の後継者たちには及んでいない。

 経済では、過去に例のない株価騒動が起きた。株式市場のパニックは株だけにとどまらず、深刻な危機に直面していた中国経済の前途を暗澹たるものにした。さらに中国政府が株式市場を救うために取った措置は世界を落胆させた。政府の強力な市場介入は価格崩落を止める効果がなかっただけでなく、悲観的な中国人投資家の市場撤退を招いた。

 社会の安全でも習近平のメンツがつぶれる事態が相次いだ。天津の化学倉庫の大爆発に続いて全国各地で化学工場の爆発事故が発生。国民の安全への信頼はすっかり失われ、もともと自分が中産階級に属していると思っていた人たちも、底辺レベルに暮らす貧しい人たちと自分たちが実はそう違わないことに気付いた。自宅の目の前で起きた大爆発で家族を失い帰る家もなくなった人々は、炭鉱事故の政府責任を追及する遺族や「陳情者」に直接教えを請うたが、彼らが直面したのはやはり政府の冷たい態度だった。

 宗教では、共産党は今でも法輪功に対する弾圧をやめず、チベット問題でも強硬姿勢を続け、ダライ・ラマの中間路線を拒否している。最近はキリスト教に対する弾圧も強め、浙江省などで1000あまりの教会の十字架を破壊した。

 アメリカ政府も、習近平の脅威を感じている。中国政府のハッカー組織はアメリカ政府職員の情報を大量に盗んだが、それ以前にも中国はハッカーやスパイを使ってアメリカの企業情報や軍事情報を入手していた。アメリカの対中政策には大きな変化が起きている。それまでアメリカは、中国の経済発展をまず助け、国民収入が一定レベルに達するのを待って政治改革が起きれば、世界は文明的になった中国を迎えることができる――そう考えていた。

 しかしこの数十年間に起きたことは、アメリカの対中政策の専門家を大いに落胆させた。政権を握って以降、口では「民主」「法治」と言いながら、習の実際の行動がまったく別物だったからだ。アメリカは今後、中国との協力を求める姿勢から中国の台頭を抑制しようとする姿勢に変わるだろう。もともと好意的だった中国専門家たちの中国の前途についての見方も、悲観的に変わりつある。2016年の大統領選を前に立候補予定者たち、特に共和党の立候補予定者たちは全員が中国を批判し、さらにその多くが習近平の訪米中止を叫んでいる。現在のオバマ大統領は交流継続を第一に考えているようだが、それでも彼すら会談の席で習近平に一席説教をぶとうと準備しているようだ。

 政府専用機のドアが開くとき、習近平は自分に向かってくるありとあらゆる批判の声に答える準備ができているのだろうか?
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