中国のチベット文化抹殺政策を許すな
自治区とはいうものの、現状は自治から程遠いばかりか、チベットの宗教・文化の抹殺が進行中である。抗議して焼身自殺を図ったチベット族は140人を超えている。民族の自決権を踏みにじる暴虐を黙って見過ごしてはならない。
政府が後継選びに介入
式典では、兪正声・人民政治協商会議主席が演説し、経済発展によって住民の生活水準が大幅に向上したことを強調。人民解放軍や武装警察などによるパレードも行われ、中国国旗や習近平国家主席の肖像を掲げた人たちが練り歩いたという。自治を祝うより、共産党政権の制圧下にあることを誇示する狙いがあからさまだ。
成立50年を前に、中国共産党と政府はチベット自治区情勢を話し合う中央チベット工作座談会を5年ぶりに開き、習主席は「独立派との断固たる戦い」を表明した。特に看過できないのは、習主席が優遇政策を通してチベットの経済と生活の向上を目指す一方、共産党が唱える価値観や標準語の浸透を目指すとしたことだ。
軍事的にチベットを制圧し、多数の僧侶、市民を虐殺し、寺院を破壊してチベット仏教を弾圧した段階から、今度は物質的生活の向上を背景に共産党の価値観へと洗脳する、民族のアイデンティティー抹殺の最終的段階に持ち込もうとしていることが分かる。
このような中国政府の姿勢に対し、亡命政府のサンガイ首相は「後継者を決める権利はご本人(ダライ・ラマ)だけにある」と牽制(けんせい)している。
このような仕打ちを国際社会が容認しているわけではない。しかし中国の政治・経済的な影響力が増す中、非難の声が小さくなっているのではないかと危ぶまれる。
日本は厳しい姿勢を
今月予定されている習主席の訪米を前に、米国の国会議員たちが首脳会談でチベットの人権問題を議題に取り上げるよう、オバマ米大統領に要望している。東・南シナ海での力による政策だけでなく、チベット問題についても中国に圧力を加えなければならない。
日本政府もこの問題で、より毅然(きぜん)とした厳しい姿勢を取るべきである。
(9月16日付社説)