「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成29年(2017)1月22日(日曜日)
通算第5173号
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
****************************************
第四十五代米国大統領就任式は無事に終了した。いつものように左翼グループが暴徒化したが、予測の範囲内であり、ホワイトハウスに入ったトランプ新大統領は早速、公約であったTPPの離脱、オバマケアの見直しという大統領命令に署名した。
これからメキシコとの国境への壁の建設、NAFTAの見直し、同盟国への軍事分担増加要請など、つぎつぎと政策変更の嵐がまっているが、実は最も驚異的な難題は、北朝鮮の核兵器をいかに扱うのか、ということではないのか。
北朝鮮が米国に届くICBMの実験を行ったことは、これまでの米朝関係を変えた。
トランプは北のICBMに関して「そうはさせない」とツィッターでメッセージを発信している。
ならば「そうはさせない」という具体的中身は何か?
選択肢は三つあり、第一はICBMを単なる北のブラフと認識する態度を続ける。
第二は北が米国と直接対話をしたいための信号であるという外交の駆け引きに対応する。
第三は、しかし、従来の前者二つの選択肢を無視して、じっさいに米国が予防的先制攻撃という選択をするかである。
つまり北朝鮮の核施設を空爆で破壊して、脅威をとりのぞくという選択である。おそらく潜水艦からのSLBM発射が主力となるだろう。
実際に北朝鮮の核施設攻撃オプションは、ペンタゴンで何回か立案されたが、ときのクリントン政権が土壇場で回避し、オバマ政権ではタブー視された。
ところが北が六者会談を無視し、中国の政治的圧力を避け、ついにICBMのレベルまで達すると、予防的先制攻撃の選択肢が、米国内で公然と論じされるようになった。「フォーリンアフェアーズ」でも、論究されるとなると、ペンタゴンでもシナリオが存在しているに違いない。
トランプならやりかねない、というのが国際政治の現場感覚だろう。
しかし先制攻撃というシナリオを前にして、米国が直面する三つの難題がある。
▼残された三つの選択肢とは
第一は中国がどう動くか。これまでには「中国が北朝鮮を抑制し、影響力を行使すれば、やめさせることが出来た。なのに、しなかった」(トランプ)。もちろん中国も、この北朝鮮の核こそが、対米交渉のカードであり、下手な使い方をしないだろう。
第二に韓国がいかなる反応をするか、つまり作戦遂行後、米韓関係は緊密化するか、対決となってしまうのか、である。現実に朴権恵政権は弾劾の淵に立たされ、命運が尽きようとしているが、次期韓国政権は親北派の勝利が予測されている。
火に油を注ぐ結果が明らかな現状で、米国は軽率な行動はとれそうにない。
第三は「全面戦争」への発展を米国は考えていないという前提から発生する諸問題だ。つまり、攻撃後の北朝鮮の報復はかならず行われ韓国へ侵攻するだろう。
そのときに在韓米軍はどこまで耐えるか、北朝鮮からソウルは近く、また地下トンネルが無数に掘られている。メトロポリタン・ソウルという人口密集地(1400万人)が人質となるが、その犠牲を恐れずに米国が先制攻撃を行えるか、どうか。
1981年、イラクのオシラク原子炉をイスラエル空軍機が破壊した。米軍の協力があった。
2007年、シリアの核施設をイスラエル空軍機が破壊した。むろん、背後では米軍の協力があった。
しかし、イランの核施設はイスラエル側に破壊能力があるのに、できなかった。
北朝鮮の核施設の正確な場所を把握していない限り、作戦の成功もまた難しくなる。
こう考えてくると、残された選択は北朝鮮を交渉の場に引き出して、中国にも圧力行使を期待しての「核の凍結」ではないのか。
◎○◎○み□▽◎○や○◎○◎ざ○□▽◎き▽□◎○
平成29年(2017)1月22日(日曜日)
通算第5173号
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
トランプ政権発足、第一号はTPP離脱、オバマケア見直し命令だったが 北朝鮮の核施設破壊作戦をトランプは何時命令するだろうか?
****************************************
第四十五代米国大統領就任式は無事に終了した。いつものように左翼グループが暴徒化したが、予測の範囲内であり、ホワイトハウスに入ったトランプ新大統領は早速、公約であったTPPの離脱、オバマケアの見直しという大統領命令に署名した。
これからメキシコとの国境への壁の建設、NAFTAの見直し、同盟国への軍事分担増加要請など、つぎつぎと政策変更の嵐がまっているが、実は最も驚異的な難題は、北朝鮮の核兵器をいかに扱うのか、ということではないのか。
北朝鮮が米国に届くICBMの実験を行ったことは、これまでの米朝関係を変えた。
トランプは北のICBMに関して「そうはさせない」とツィッターでメッセージを発信している。
ならば「そうはさせない」という具体的中身は何か?
選択肢は三つあり、第一はICBMを単なる北のブラフと認識する態度を続ける。
第二は北が米国と直接対話をしたいための信号であるという外交の駆け引きに対応する。
第三は、しかし、従来の前者二つの選択肢を無視して、じっさいに米国が予防的先制攻撃という選択をするかである。
つまり北朝鮮の核施設を空爆で破壊して、脅威をとりのぞくという選択である。おそらく潜水艦からのSLBM発射が主力となるだろう。
実際に北朝鮮の核施設攻撃オプションは、ペンタゴンで何回か立案されたが、ときのクリントン政権が土壇場で回避し、オバマ政権ではタブー視された。
ところが北が六者会談を無視し、中国の政治的圧力を避け、ついにICBMのレベルまで達すると、予防的先制攻撃の選択肢が、米国内で公然と論じされるようになった。「フォーリンアフェアーズ」でも、論究されるとなると、ペンタゴンでもシナリオが存在しているに違いない。
トランプならやりかねない、というのが国際政治の現場感覚だろう。
しかし先制攻撃というシナリオを前にして、米国が直面する三つの難題がある。
▼残された三つの選択肢とは
第一は中国がどう動くか。これまでには「中国が北朝鮮を抑制し、影響力を行使すれば、やめさせることが出来た。なのに、しなかった」(トランプ)。もちろん中国も、この北朝鮮の核こそが、対米交渉のカードであり、下手な使い方をしないだろう。
第二に韓国がいかなる反応をするか、つまり作戦遂行後、米韓関係は緊密化するか、対決となってしまうのか、である。現実に朴権恵政権は弾劾の淵に立たされ、命運が尽きようとしているが、次期韓国政権は親北派の勝利が予測されている。
火に油を注ぐ結果が明らかな現状で、米国は軽率な行動はとれそうにない。
第三は「全面戦争」への発展を米国は考えていないという前提から発生する諸問題だ。つまり、攻撃後の北朝鮮の報復はかならず行われ韓国へ侵攻するだろう。
そのときに在韓米軍はどこまで耐えるか、北朝鮮からソウルは近く、また地下トンネルが無数に掘られている。メトロポリタン・ソウルという人口密集地(1400万人)が人質となるが、その犠牲を恐れずに米国が先制攻撃を行えるか、どうか。
1981年、イラクのオシラク原子炉をイスラエル空軍機が破壊した。米軍の協力があった。
2007年、シリアの核施設をイスラエル空軍機が破壊した。むろん、背後では米軍の協力があった。
しかし、イランの核施設はイスラエル側に破壊能力があるのに、できなかった。
北朝鮮の核施設の正確な場所を把握していない限り、作戦の成功もまた難しくなる。
こう考えてくると、残された選択は北朝鮮を交渉の場に引き出して、中国にも圧力行使を期待しての「核の凍結」ではないのか。
◎○◎○み□▽◎○や○◎○◎ざ○□▽◎き▽□◎○