パルデンの会

チベット独立と支那共産党に物言う人々の声です 転載はご自由に  HPは http://palden.org

チベットの現状と今後の運動展開 その3

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成29年(2017)3月23日(木曜日)弐
        通算第5233号
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   ♪より転載

チベットの現状と今後の運動展開」

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アジア自由民主連帯協議会 会長 



中国の場合には、その民主主義がないから国民も果たして国を積極的に支えているかどうか。だからあなたたちのほうがいつ壊れてもいいような政府だ、とはっきりと言いました。
  われわれのほうは少なくとも別に誰か指導者が落ちても、どの政党が落ちても、別の政党が出てくる。だからわれわれのほうが強いということを、メディアが一番反論しています。実際上、いま南シナ海東シナ海尖閣諸島の問題では記事にもなっているけど、いま中国はインドに対しても挑発的な行為をどんどんやっています。インドのすぐそばの国々に対し、ちょっかいを出している。だから、いまアジア全体の平和と安全を考えるときに、一番のがんになっているのは北京政府だと思います。しかし、その北京政府のアキレス腱は私たちです。

  60年たっても、まだチベット人の心を支配しているのはダライ・ラマ法王です。今回、北京政府は、ダライ・ラマ法王は人をだますような上手な俳優になったとか言って批判しています。これは、法王が中国の頭の固い人たちの脳みそは少し欠如していると言ったことに対する反論です。同じインタビューの中で、インタビュアーのコメディアンが、焼身抗議をやっている人たちについて質問しました。

  しかし法王は、これについては私は答えたくない、答えたらまたその家族にまでいろいろ影響を及ぼすから。
そこで法王は、たとえ話として、例えば法王は最近モンゴルにいらした。モンゴルへいらしたら、モンゴル人はみんなウオッカばかり飲んであまり建設的に仕事をしていない。法王はモンゴル人に、あなたたちはウオッカを飲むよりも馬の牛乳を飲みなさいということをおっしゃったら、いまモンゴル人の多くの人たちが酒はやめたということをおっしゃっています。

法王は間接的に、たぶんまだ、自分の言葉一つによって国内にいる人たちがいろいろな動揺をしたりする。だから自分の言葉の影響力ということを、法王自身が一番認識している。

  法王は去年、ウランバートルへ行かれた。モンゴルは自国の主権の問題ですから、法王を招待して実現したのです。
 もう一つの質問は、「法王が最後の法王であるか」というものだったのです。
なぜかというと、いま北京政府が一番気にしている。北京政府から見ると、チベット問題は法王がもし他界したらどうにでもなると思っているから、台湾もある意味では時間稼ぎのようなもので、特に2012年、今の習近平政権ができてからは一度も対話ができてないです。

  彼らが言うには、法王はお坊さんの衣を着たオオカミだとか、今回のように人をだますのが上手な役者だとかいろいろ言っているのですが、一番の問題は彼ら自身が誠意を持っていないことです。法王、あるいはチベット側からは対話を通して北京政府を一度も裏切ってないと思う。
むしろ、私たちは過剰な期待を持ち過ぎてしまい、振り回されている。誠意を示すべきなのは北京政府です。そして、国際社会の一員としての立場も。

歴史と正統

  歴史は私たちが行うさまざまな運動の正当化にすぎないと思う。正当性があるということ。例えばチベットは中国に一度も直接支配を受けたことはない。中国人に、ではチベットを支配していた人、チベットの総督だった人の名前を言えと言ったら、言える人はいないと思います。
少なくとも1950年以前にはです。中国だけではありません。インドの支配も受けていませんし、どこの国の支配も受けていません。
そういう正当性に関しては、歴史は大切です。

  しかし大事なことは、未来につながるのは今の人たちの意思です。今の人たちの意思を考える場合に、私は残念ながら、私たち外にいる人間と中にいる人間の間に差があるような気がします。これは私個人の考えです。私たち外にいる人間は一生懸命に頑張っています。あちらでデモをやり、こちらでデモをやり、あちらでイベントをやり、一生懸命頑張っています。しかし、本質的なものに対し私たちはいま十分に声を出せるかというと、社会に今いるものですから、どうしても世論を?受け取る。国内にいる人たちは、毎日自分たちはいやな中国人と一緒に生活しなければならない。毎日差別を受けている。毎日不自由を感じている。毎日監視されている。車にも全部GPSを付け始めている。上にいるがどんどんこちら側に対して。そのうち、たぶん人間にも何か、そういうのを付けるかもしれない。

  ですから中にいる人たちは、特に1987年から事実上はまだチベットに対する戒厳令が生きています。当時の喬石さんの命令で無差別に撃っていいことと、5名以上の人間が許可なしに集まった場合には集会と見なされる。ですから、いま単独行動を取るしかない。単独行動を取ることは焼身行為しかない。もし中国が言うようにチベットがみんな幸せになって近代化していったら、たぶん焼身行為をする必要はないと思います。

  確かに、いま北京政府は、特に習近平になってから、例えば今回も310日の決起記念日の前にチベットのお寺にお坊さんたちを呼んでお金を配っています。お寺に対しても、協力的なお寺に対してはお金を配っています。個人でも1100ドルぐらいのお金。それは中国としては二つの意味があります。一つは、チベット人の仲を悪くさせるために、わざと、一部の人たちは協力者だ。

そして協力者に対してはご褒美をあげ、同時にほかのチベット人からすると、あいつらは売国奴だということになる可能性がある。そうやってチベット人の仲を悪くさせるための意図的な行為。もう一つは、たぶん中国は再び外国から彼らが選んだ学者、視察団を利用し始めました。このような人たちがそういうところへ行き、中国はこんないいことをやっている。

アジア諸国の同情と限界

  インドネシアなどは最近、チベット問題を非常にたくさん書いてくれるのですが、一昨年、イスラム系の国々の人たちをウイグルに連れていき、ウイグルの教会でちゃんとお祈りしているようなところを見せ、それを帰ってきてからみんなに書かせている。チベットでは昔からやっていたことです。ついでに彼らに、チベットのことを洗脳しています。
  だから、いまインドネシアとか、あの辺の新聞はチベットについてはしょっちゅう書いています。書いているけど、それは中国がチベットですばらしいダムをつくったとか、世界で一番高いところの空港ができたとか、そういういいことをたくさん書いている。彼らはまだ中国のそういうやり方に対し免疫ができていないから。

  北京政府は、2010年ごろから宗教委員会がお坊さんたちの認定に対し干渉する法律までつくりました。これは僕の推測ですが、たぶん法王が政教分離をやったことに対し、一つは、ダライ・ラマ法王はチベットだけではなくチベット仏教全体の法王です。ですから、次のダライ・ラマどうこうと言ったときには、チベット人だけの問題ではありません。チベット仏教界全体の問題です。
モンゴル、ブリヤートカルムイク、ラダック、ブータン、あるいはアルナーチャル、広範囲の人たちがチベット仏教徒です。そして、さらにいま世界中にチベット仏教徒が増えています。しかし、もしそれが、政教が一致だったら、これはチベットに限定される。もう一つは、たぶん法王ご自身がチベット人の性格を一番ご存じです。法王がいらっしゃるときに民主化すれば、法王がそれを見届け、法王の下で着実に少しずつ成長していくかもしれない。
もし法王がいらっしゃらなかったら、われわれは騎馬民族ですから、みんなで誰かに従おうというのはあまりしません。一人一人がボスなのです。

  そういう意味では、法王の一番の業績は、海外において、あるいはチベット社会において、民主主義の土台をつくってくださったこと。これは歴代の法王がしなかったことで、たぶん14世が歴史に残ることだと思います。

一方において私たちは何もかも法王任せにしていて、そのおかげで逆にみんな法王の言葉まで勝手に解釈して、そして何かすると、いや、それは法王の意思に反するとか。それにより、北京政府も逆にそれを精いっぱい利用している。

難民として誇れることは三つ

私たちが難民になって誇れることは三つあると思います。一つは、いま申し上げた法王のご指導の下で民主主義の制度、民主主義は宗教ではありません。民主主義はあくまでも一つの政治のシステムにすぎないのです。だから、そのシステムを導入する知恵、その制度については法王が土台をつくってくださっている。

  もう一つは、難民社会を中心にしてチベット仏教チベットを世界中に知ってもらう意味で、ほかの難民よりもたぶん成功していると思います。

  三つ目は、国が持っていないものを法王が持っています。
中国が持っているのは核兵器です。しかし私たち人間一人ひとりの中にも核兵器のようなものはあります。
この核兵器をコントロールする意味では、北京政府のリーダーたちは法王のまねはできない。だから彼らは法王が怖い。北京政府があした民主化しますということで自由な選挙をやる。この場合にチベットも含めてやったら、恐らくマンデラではないけど法王が大統領になる可能性はあると思います。中国人に対しても、習近平に勝つ可能性は十分にあると思います。この三つは私たちの強みです。

  しかし弱いところは、いま中国が崩れかかっているのに、それに対し準備がないことです。
チベット問題そのものの正当性。環境問題は中国にもたくさんあります。インドにもあります。人権問題も同じだと思います。
私は日本へ来て近代教育を受け、人権は大切ではないことを言っているわけではありません。
環境が大事でないということでもありません。実際、生きていく上において、私たちが日ごろ忘れている空気でさえも、汚染されていたら大変です。それぞれの国の税金の使い方により、この空気がどうなるかということを考えたときに、それぞれの政府のそのやり方は非常に考えなければならないことだと思います。

  そろそろチベット国外においても、政党政治のようなものは段階的にこれからの活動としては出現してくるだろうと思う。
それがないと、次のビジョンがあまり生まれてこないのです。
亡命政府としては、政党をつくってもいい。政党はあるとおっしゃっています。実際、確かにあります。一番初めにできたのは1970年代にチベット共産党ができました。それから、チベット民主党ができました。国民民主党ができました。

  しかし、ほとんどは仲良しのクラブみたいなことで、まだ政党としての形は整えていません。そういう候補者も出していません。そういう意味では、運動の展開の流れとしては、中国人に対してもわれわれは何を求めているかということを、もう少し明確にする意味でも、そういう政党がちゃんと出てきて主張があったらいいなと私は思います。
  今後の活動の展開ということについては、残念ながら現在、私は亡命政府の議員でもないし役人でもないので、こうだということは言えません。

 政党の本格化を急がなければならない

そろそろそういう政党政治、しかも中国に先駆けて政党政治を行うこと。そして、それが明確な目標を持たないと。今やっていることは、ただ抵抗しているだけです。
僕は今まで支援してくださった方々、いま支援してくださっている方、これから支援しようと思っている方々に対しても、やはりチベット運動というものの今までの流れ全体を考えてみて、次の段階を考えてほしい。このことをきょう、強く申し上げたいと思いました。

  もう一つは、やはりチベットだけではできません。このチベット問題を解決するためにはウイグルやモンゴルとか。しかし、残念ながら先週もどこかのチベットの会合にいきなり誰かがウイグル人を連れてきて、チベットウイグルが一緒になったなんて言っても、そんなに簡単ではありません。基礎的な人間関係が必要です。
  1990年代にありました
今回、僕は学校を替わるものでいろいろ整理したら、当時の雑誌がいくつか出てきました。それを読むと、あのころは、モンゴル人とチベット人と東パキスタンの人にしょっちゅう会っていました。そのころの人たちはお互いの基礎的な信頼関係、人間関係が十分にできていた。残念ながら今のところ、まだ私たちはそういうことが十分にできていません。そこにアジア自由民主連帯協議会が多少なりとも、そういう場を公論としてつくることが目的で今やっているわけです。

  いまチベットとモンゴルはウイグルのおかげで、ある意味で本当に助かっている。ウイグルは一生懸命です。抵抗している。
だから彼らはアメとムチを使います。かつてわれわれを弾圧しているときはモンゴルを非常に優先して、モンゴルにアメを与え、われわれにムチを出していました。
今はウイグルにムチを出し、国境線にもすごい警備をしたり、ウイグル人に外からテロとの関係があるとかいうことを言っている。かつてわれわれに対しても同じことを言っていました。アメリカがやらせているとか。まあ、多少本当です(笑)。しかし、アメリカ人に命令されてやっているわけではなく、われわれがやることをアメリカが援助しているにすぎなかったと思う。

 モンゴル、ウィグル、チベットを使い分けた「飴と鞭」

  私たちは、いきなりチベットはこれから引っ越しますからと言って、地図上にハサミを入れて切って、どこかへ持っていくようなことはできません。
長い歴史の中で仲良くやった時代もあります。お互いにそれによって得たこともある。法王がときどき冗談でおっしゃるのですが、われわれチベット人はおいしいものを食べようと思ったら中国です。精神的に高めようと思ったらインドで哲学です。
チベットの政治制度はモンゴルでした。ですからダライ・ラマ法王のダライもそうだし、ホトクトとか、ザザルとか、そういう肩書、日本語も西洋からバロンとか伯爵、男爵を取り入れた時代があったのですが、チベットの場合、1950年代までは内閣の大臣、大臣だけではなく個々の位はザサルなのか、モンゴルの肩書を使ったのです。チベット人はモンゴルが大好きです。これも満州人のおかげです。

  お互いに対等、平等の下で暮らすことができないことはないと思う。
どちらかが属国になり、どちらかが宗主権があるとか、あるいは支配者になることはたぶんあと100年たっても成功しないと思う。1000年たっても、たぶんチベット人、あるいはモンゴル人が生きている限りは、喜んでそういう支配を受けることはない。

  残念ながら小さい国の運命は小さい国で何とかなるわけではありません。
今後の米中関係、中印関係、あるいは日本もアジアにおいてだんだんと主役の一つになりつつあると思います。

 トランプ大統領チベット問題に取り組むか?

この辺がチベット問題も含め、現在の中国に対し、何をどう考えるかです。ローマ法王レーガン大統領はソ連を崩壊させることに成功しました。今のトランプさんはこれからどれだけやるか分かりませんが、レーガンさんを手本にしているということで、いま見ている限りでは多少、レーガンさんのかつてやった、例えばソ連との軍事競争、そして東ヨーロッパの国々に対し民主化運動を側面から応援してやり出した。

  そういう意味で、今たぶんトランプさんは一応、試しに例えば一つの中国ということに特にこだわる必要はないのではないか。民間の利益を考えながら変えることもあり得るということを言ったりしている。

  あるいは中国は、ティラーソン国務長官が長官を任命するかどうかと外交委員会で話したときに、今後、北京政府は法王と対話するように自分は力を貸すと言い、そして法王と会うことについても前向きな姿勢を示したり、それからインドが法王をアルナーチャル州にお招きすることに中国は怒っています。

 それから、アメリカの大使が亡命政府の総理大臣を食事に招くとか、これは全部政治上の演出です。それぞれがメッセージを送る。
相手を試しながらやっている。そういう意味で、いま中印関係においても、あるいは米中関係においても、チベット問題は台湾問題と同様に中国が言う核心的利益、すべて駆け引きの材料になるということです。
ネゴシエーションの材料になるということです。
その4に続く