台湾とパラオという日本が統治した国が、今も中国に屈しない理由
2018.08.24
by 黄文雄『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』
台湾の総統に蔡英文氏が就任して2年。その間、中国の経済的、政治的圧力により台湾と国交を断った国は実に5カ国を数えます。今や米国と覇権を争う超大国・中国に抗うのは並大抵のことではありませんが、その「脅迫」に屈せず台湾との関係を保ち続けているのが南洋の小国・パラオです。台湾出身の評論家・黄文雄さんは自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で、中国の脅しに決して負けないパラオと台湾が国交を結び続ける「当然の理由」を紹介しています。※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2018年8月21日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。
【パラオ・台湾】中国の妨害に屈せず「日本精神」で通じ合う台湾とパラオ
● 中国の観光禁止で来訪者半減のパラオ、「量より質」で対抗へ
8月21日午前、
エルサルバドルが中国と国交樹立、
これにより台湾と断交しました。
蔡英文政権になってからの2年で、これで台湾と断交した国は5カ国となりました。現在、
台湾と国交のある国は17カ国です。しかも、
蔡英文総統が
中南米歴訪から帰国したばかりのタイミングです。
言うまでもなく、台湾との国交断交の背後には、中国による経済的、政治的圧力があります。台湾と断交する国に対しては経済援助を与え、国交を維持する国に対しては冷遇するという、いつものやり方です。
そして、この中国のやり方に苦しめられているのが、台湾と国交がある
パラオです。中国は昨年末、外交関係がないことを理由に、
パラオへの
中国人観光ツアーを禁止しました。
パラオを訪れる観光客の半分を占めていた中国人が来なくなったことで、ホテルやレストランは閑散とした状態だといいます。また、これまで同国の美しい風景目当てに殺到していた中国人投資家も去ったそうです。
しかし、
パラオのトミー・レメンゲサウ大統領は、「
集団での観光は環境に被害をもたらしている」「
パラオにとって
数が大きな利益を意味していたわけではない。われわれは
量ではなく質の政策を模索する決意をより強くした」と、中国の嫌がらせに対して、むしろ望むところだといった気概を見せています。
パラオといえば、台湾同様、
かつて日本統治下にあり、
現在も大変な親日国であることは有名です。同国の国旗は、青地に黄色の日の丸で、日本に対する親しみから、親に
日本風の名前をつけられた人も少なくありません。
戦前に日本から
パラオに移り住み、現地人と結婚して同化した
日系人もいます。
パラオ人の
4分の1が日本人の血筋だともいわれ、レメンゲサウ大統領も祖母の父が日本人の日系4世です。また、前大統領のクニオ・ナカムラも
日系人でした。
2015年に
天皇皇后両陛下が
パラオを訪問する際、レメンゲサウ大統領は「日本と
パラオは単なるパートナーシップではなく、
むしろ兄弟に近い。
日本が兄で、
パラオが弟です」と語っています。
パラオは1996年、
韓国の建設会社が建設したKBブリッジが崩落するという事故がありました。この橋は韓国のSOCIOという企業が
鹿島建設の半額の入札価格で落札し、1977年に完成したものですが、当初より
手抜き工事が噂され、陥没事故が相次いだため、
パラオ政府による補強工事が繰り返されてきましたが、それでも20年ももたずに崩落してしまったわけです。
この橋は本島の
コロール島から国際空港をつなぐ唯一の道路であり、また、電気、水道、電話などの
ライフラインが通っていたため、
パラオの首都機能が麻痺し、当時のクニオ・ナカムラ大統領は
国家非常事態宣言を発令したほどでした。
韓国のSOCIOは、1994年に崩落した韓国の聖水大橋にもかかわっていました。しかもKB橋崩落時にはすでにSOCIOは解散していたため、
パラオ政府は
損害賠償を請求することもできなかったのです。
このKBブリッジ崩落に対して、日本政府は支援を行い、
日本のODAによって2002年に「
日本・パラオ友好の橋」という新たな橋がかけられました。
そして現在、
パラオは中国からいろいろ嫌がらせを受けているわけです。やはり大中華も小中華も、思考法は同じです。相手を恫喝したり騙したりすることで、自分の欲望を叶えようとするからです。
台湾同様、パラオには「オカネ」「サビシイ」など、日本統治時代の言葉がたくさん残っています。その数は500とも言われますし、日本統治時代を経験したことがある高齢者は、流暢な日本語を話します。
台湾には「日本精神(ジップン・チェンシン)」という言葉があり、これは勇気や誠実さを意味し、嘘つきや卑怯さを表す「支那根性」の反対語となっています。パラオにも「日本精神」に似た考え方や言葉があるのでしょう、だから中国の嫌がらせや脅しには屈しないのだと思います。
かつて日本に統治され、いまなお世界でもっとも親日であり続ける台湾とパラオが、国交を結ぶのは当然の帰結なのかもしれません。