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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
令和元年(2019)6月11日(火曜日)
通巻第6106号
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カーター元大統領(94歳)がトランプと会談していた
中国をいかに扱うかの手ほどきをトランプに講釈したとか。
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カーター元大統領、病院にいたと思いきや超高齢をおして地元ジョージア州の教会でときに「講和」を垂れている。先週、カーターは日曜教室に現れ、中国との競合のありかた、世界一のスーパーパワーとは何かについて語った。
カーターはトランプ大統領に長い手紙を書いていた。
それはトランプが仕掛けた米中貿易戦争の行く末を案じて、かれの信じる「解決策」を盛り込んでいたそうで、それをトランプは読んだ。カーターはトランプ大統領から直接電話を貰ったときは驚いたという。
そして日時を明らかにしなかったがカーターはホワイトハウスに招かれ、話し込んだ。「世界一のスーパーパワーの座を中国が脅かそうとしている。だから米国は対応しているのだ」とするトランプに対して、カーターは「まずその『スーパーパワー』とは何かを定義しましょう。軍事力で突出することだけがスーパーパワーではない。生活の豊かさ、とくに押しつけなくても、ソフトパワーの価値観が拡がり、影響を与えるということが本当のスーパーパワーです」などとありきたりのことを述べたそうな。
カーターは1979年に中国と国交を開いた。ニクソン訪中から国交樹立までに七年の歳月をかけたのも中国が変化し始め、文革に終止符を打ったこと、そして台湾との関係で米国は台湾を擁護するために「台湾関係法」を制定し、そのあとに国交を結ぶに至った。
「国交回復から以後、中国は徐々に従来の価値観を変え、戦争に訴えることはなくなった」とカーターは自慢げに言った。つまりカーターは「米中の軍事対決は道草であり、ソフトパワーでは米国が優位にある」と発言したらしい。
共和党内は対中タカ派が主導権を握り、その中心人物はマルコ・ルビオ上院議員だが、議会対策でいまのところ円滑化している関係を保ちながら、他方でトランプは、彼らとのチャンネルだけではなく、ハト派の意見も聞いていることは注目しておくべきだろう。
カーターとの会談に影響されたわけではないのだろうが、トランプは月末にまたG20出席のため来日する。
◇◎□◇み◎◇◎▽や◇◎▽◇ざ◇◎▽◇き○□◎▽
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(休刊予告)小誌は海外取材のため6月15日―23日が休刊となります
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW
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石平『なぜ中国は日本に憧れ続けているのか』(SB新書)
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意外な題名。だが或る面で中国が日本を憧憬していることは真実である。評者(宮崎)も過去におよそ数百の中国人と付き合ってきたが、いかにも中国人らしいマナー、人生観、拝金主義を目の当たりにしながらも、教養のある人々、とくに知識層の中国人が内面のどこかで、日本に憧れを抱いていることを会話や仕草から実感してきた。
一般庶民に到っては素朴な憧れ、物質の豊かさへの渇望から湧き上がるものだった。
だが実態は異なる。
歴史を紐解いても、遣唐使、遣隋使、遣日使の実態をみればわかる。
ところが「遣日使」として日本にやってきた大量の中国人(遣唐使、遣隋使より多い)の殆どが帰国せず、日本に残留し、やがて帰化した。鑑真は一生かけて五回渡航を試みて失敗し失明に到っても「六度目の正直」でついに日本にやって来た。
なぜそうだったのか。
徐福は秦の始皇帝の命を受けて不老不死のクスリをもとめて日本へやってきた。徐福が上陸したという伝説は全国に残り、なかでも有力視されているのは和歌山県新宮市である。そんな古き昔から中国は日本を「三神山」と呼んで憧れを抱き続けた。
三神山とは、渤海の先に「神仙」が住むという場所で、「蓬莱」「方丈」「瀛州(東瀛とも)」と意味するが、一説には徐福は、三千の男女を引き連れて、始皇帝を騙して船団を組織させての集団亡命ではなかったのかと解説する歴史家もいる。
閑話休題。
正史のほうの『三国志』では、高句麗は「人々の性格はせっかちで荒っぽく、略奪を好む」「男女の風俗は淫らである」と莫迦にしているが、一方、日本人に関しては「倭人の風俗には節度がある」「家屋にはまじきり(部屋)がある」「倭人の葬式には、棺はあるが、郭はない。土をもりあげて墓を造る」「父子、男女の差別はない」(註「郭」は「木」扁)。
また「日本女性はつつましやかで、焼き餅を焼かない。追いはぎやこそ泥がなく、争いごとも少ない」と書かれている。
こうなると中国から見て日本は理想郷ではないか。
そして『随書』ともなると、日本の「人々の性質は素朴であり正直であり、雅びやかでさえある」となって、石平氏に拠れば「中華文明で相手のことを『雅風あり』と評価するのは、まさに最高の讃辞」だという。
かれらは日本の精神を学んで帰国したとも言える。
年間600万近く来日する中国人の若者の行動をみていると、そのことはよく理解できる。
かれらは日本でのびのびと闊達に、中国では味わえなかった自由を享受し、日本料理に舌鼓を打ちながら、日本文化のいごこちの良さに震えているではないか。
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樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1908回】
――「支那は日本にとりては『見知らぬ國』なり」――鶴見(2)
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これまで読み進んできた紀行文の書き手の多くは視点の軸足を伝統に置き、時代と伝統の齟齬ぶりを語っていたように思う。
だが鶴見はそうではなさそうだ。むしろ伝統によって形作られてきたものを「偶像」と見做し、その「偶像」を破壊しようとする試みの中に新しい時代の息吹を見いだそう。この動きを世界文明の中心が大西洋から太平洋へ――世界文明の担い手が西欧民族から東洋民族へと移る世界史的大転換の中で読み取ろう。
支那が「太平洋の樞鍵」としての日本と「和」し、世界史の新しい時代である「太平洋時代の最大因子」として応分の働きができるか否かを問い質し、そのことを確かめようとした旅であったように思う。
鶴見の旅は1922(大正11)年5月初めの北京から始まる。
その日、鶴見はアメリカでデューイから学んだプラグマティズム哲学を引っ提げて颯爽と帰国し、文学革命の旗手として縦横無尽の働きをみせる胡適を訪ねた。そんな鶴見に向って「儒教なんてものは、支那では死んで仕舞つた」と、「胡適君が、涼しさうな顔をしたまゝ、何の苦もなく言つてのけた」。かくて鶴見は「自分は思はず愕然と」する。
鶴見は胡適訪問の理由を「或る運動の正體を觀るには、その運動が産出した多くの文獻を見るよりも、寧ろ其の運動を指導して居る人々に會ふことが必要であると常に考へて居た」からだと綴る。
「今眼の前に淡泊な風に話をして居る胡適君は、三十そこそことは思へないほど若々しかつた」のだが、学者としては既に大家の域に達している。
「維新前後の日本人の中には、もつと若くして既に一家の説を成すだけの造詣を積んだ人もあつた」。胡適やそれら維新前後の若者に較べると、「今日の我々は、如何にも腑甲斐なく感じられた。自分達は、今少し愧ぢて反省しなければならない」と恥じ入る。
支那の病弊として各國人の指摘する支那人の金錢慾と言ふものは、人口過多の國で激しき生存競爭を續けた結果である」と質問し、人口増加は厳存する家族制度がもたらすものであり、新文化運動も「家族制問題の根本に觸れなくてはだめではありますまいか」と続けた。
すると「個人主義の影響が、支那の家族制度を崩壞しつゝある實例は、到る處に見受けられる。隨つて家族制度は、將來の支那の新文化運動の妨げにはならないでせう」と「胡適君はキツパリ言つた」。「一體胡適君は大層ハツキリ物を云ふ人である」との印象だ。
次いで「第二の質問である儒?のことに及んだ」。それというのも「儒?と言う階級意識の強烈なる?義の盛行する支那に於て、果して四民平等を基調とする、共和制度の成立し得べきや」との疑問を持っていたからだ。そこで「儒教の儼存する支那に於て、如何にして家族制度が崩壞致しませうか」と問い質した。
すると「胡適君が、驚くべき第二の斷案を下した」という。
さて、そいつは何?
《QED》
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★読者の声 ★READERS‘ OPINIONS
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抗日英雄として韓国民のヒーローとなっている安重根ですが、伊藤博文暗殺当時は、韓国での評価は決して高いものではありませんでした。高宗からして安重根を「物事の理事を解さない流浪人」と唾棄にも等しく切り捨てています。韓国の知識人たちの反応も「馬鹿なことをしてくれた」「国の恥」という見識が大勢でした。ソウルでは1万人規模の伊藤追悼集会が行われ、全国各地に広がったといいます。
ところが、日本の愛国者などに安重根を評価する声があり、これが戦後、韓国で、「日本人も尊敬している安重根」→「罪深い日本人さえ安重根の正論を認めざるを得なかった」→「安重根の行動は正義に違いない」という論法の飛躍があった、と著者推測します。
閔妃は戦前の悪女の代表から今や「明成皇后」「誇り高く慈悲深い国母」「日帝の飢狼によって殺害された悲劇の王妃」とされています。国費を私的に浪費し、国政に介入した閔妃が、慈悲深いはずはなく、戦前は言うに及ばず、戦後70年代までは、映画にしても徹底的な憎まれ役として描かれていました。それが、80年代以降完全に逆転したイメージ・ロンダリングが行われるようになったのです。
このきっかけを作ったのが、伽耶大学客員教授の崔基鎬氏によると「日本の愚かな女性作家が閔妃に同情的な本を書いた」ことにあるというのです。愚かな作家が書いた本とは角田房子著「閔妃暗殺―朝鮮王朝末期の国母」です。閔妃殺害を三浦公使の単独計画と決定づけ、日本人の贖罪意識に訴えかけるものでした。「悲劇の王妃」というイメージはこの本から韓国に伝播したのでした。閔妃の息子でのちの純宋は現場にいて、母親を殺したのは、訓練隊隊長の禹範善だと証言したばかりか、日本に亡命していた禹を刺客を送って殺害しています。根拠のないウソを書いた本が基になり、閔妃神話が生まれてしまったわけです。
(「史実を世界に発信する会」 茂木弘道)
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(読者の声2) 5月末封切りの映画ゴジラ(キング・オブ・モンスターズ)をハノイで鑑賞した。2Dで入場料は7.5万VND(ハノイ)だから日本円で353円になる。日本の入場料が1300円とすれば約三分の一弱。「安い!」
21世紀を迎えた2001年にはゴジラ映画(ゴジラミレニアム2001)に形相がとても怖い「白目」のゴジラが登場した。白目ゴジラの誕生設定はいままでと異なる。この「白目ゴジラ」はなんと太平洋戦争で死んでしまった旧日本兵の怨念の集合体なのだ。
そして2016年の「シンゴジラ(バンコクで鑑賞した)」は明らかに日本政府のお役所対応、「北」との外交や福島原発を暗喩していた。シンゴジラは私の一番好きなゴジラ映画でグロテスクだ。ゴジラ(第四形態)の肌は原爆を受けて焼けただれたヒロシマの被爆者の方々のようで痛々しかった。
感想は、日本も原爆攻撃やミサイル攻撃やEMP攻撃を一度、受ければ国民の意識が変化して復活するのではないかということ。
原爆攻撃ではすでに遅きに失するが、宮崎先生が桜チャンネルの「討論闘論」の最後でおしゃった「令和の改新」のクーには外部環境が絶望的に厳しくなる前提が必要と思う。国民は国家間外交なんてほとんどが考えておらず、拉致被害者なんて「気の毒な他人事」と思っているように見受けられる「能天気」加減だから、「全体主義国家に核ミサイルで狙われていますよ」ということを実感する必要があるという意味である。
(R生、ハノイ)
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(休刊予告)小誌は海外取材のため6月15日―23日が休刊となります
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