新型ウイルス、排せつ物からの感染示す兆候 下痢の患者ら見逃し? AFPBB News
2020/02/08 12:19
© Jason Redmond / AFP 米ワシントン州ノースベンドで、中国湖北省からの渡航者でまだ症状が出ていない人々を隔離する建物の外に置かれた手洗いを促す看板(2020年2月6日撮影)。【AFP=時事】新型コロナウイルスに感染した患者に腹部症状と軟便の症状が見られたとする論文が米医学誌に発表され、科学者らが7日、下痢が同ウイルスの2次感染を引き起こしている可能性があると明らかにした。新型コロナウイルスの主な感染経路はせき・くしゃみなどによる飛沫(ひまつ)感染とみられているが、早期に症例を調査した研究者らは、呼吸器症状のある患者に重点を置き、消化管に異常のある患者を見落としていた可能性がある。
© Peter PARKS / AFP SARS感染者が多数出た、2003年当時の香港の集合住宅アモイガーデンの外に立つ警察官(2003年3月31日撮影)。中国人研究者らが米国医師会雑誌(JAMA)に発表した論文によると、中国湖北(Hubei)省武漢(Wuhan)にある病院の患者138人のうち14人(10%)が、発熱や呼吸困難といった症状を示す1日または2日前に下痢や吐き気を訴えていたという。
© NOEL CELIS / AFP 通常は交通量の多い中国・上海のビジネス街、陸家嘴の閑散とした道路を捉えた航空写真(2020年2月7日撮影)。英サウサンプトン大学(University of Southampton)のウィリアム・キービル教授(環境衛生)は英サイエンスメディアセンター(Science Media Centre)に対し、「2019-nCoV(新型コロナウイルス)は、尿にも排出される重症急性呼吸器症候群(SARS)のウイルスと同様、非定型の腹部症状のある患者の排せつ物で発見されており、このことは感染力の高いふん口感染(排せつ物を介した経口感染)を示唆している」と述べた。
© NOEL CELIS / AFP 通常は交通量の多い中国・上海のビジネス街、陸家嘴の閑散とした道路を捉えた航空写真(2020年2月7日撮影)。新型ウイルスがSARSと同じコロナウイルスであることを考えれば、ふん口感染の可能性は科学者にとって全く驚くべきことではない。
© NOEL CELIS / AFP 閑散とした中国・上海の外灘で、マスクをして歩く人々(2020年2月7日撮影)。カナダ・トロント大学(University of Toronto)のデービッド・フィスマン(David Fisman)教授(疫学)は、排せつ物を介した感染拡大はウイルスを封じ込める上で新たな課題となる恐れがあるものの、流行を「増幅」させがちな医療機関内の問題になる可能性があると述べた。
© NOEL CELIS / AFP 通常は交通量の多い中国・上海の虹口地区の閑散とした道路を捉えた航空写真(2020年2月7日撮影)。
© NOEL CELIS / AFP 通常は交通量の多い中国・上海の虹口地区の閑散とした道路を捉えた航空写真(2020年2月7日撮影)。
中国で発生した新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。7日朝までに、中国本土での感染者は3万1161人、死者は636人となった。集団感染が確認されている大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」から、新たに41人の陽性反応があり、日本国内で報告された感染者は86人に上った。中国国内では、湖北省武漢市をはじめ「封鎖都市」が激増している。少なくとも34都市との報道もあり、1億6000万人近くが、事実上の“幽閉状態”とみられる。「外出禁止」も含めると70都市以上との指摘もある。国内外では、初動対応に遅れた習近平国家主席率いる中国政府への不満が噴出し始めた。中国の国際的地位の低下も確実で、このまま新型肺炎の封じ込めに失敗すれば、共産党一党独裁体制が崩壊しかねないとの見方もある。
《武漢肺炎拡散加速 中国34座城市封城》
台湾紙「自由時報」(6日付)などによると、中国では現在、浙江省杭州や、河南省鄭州、江蘇省南京などで住民の移動を制限する「封鎖式管理」が実施されており、少なくとも34都市に上るという。
中国の各都市の正確な人口を把握するのは難しいが、メディアや金融機関の資料をもとに加算すると、計約1億5695万人(推計)となった。日本の総人口(約1億2600万人)より多い。中国の人口は約14億人(中国国家統計局調べ)だけに、約11%が封じ込められていることになる。
共産党独裁国家の情報発信や、「中国ベッタリ」と揶揄(やゆ)される世界保健機関(WHO)の見解はそのまま信用できないが、中国本土の感染者や死者は確実に増えているようだ。
実際の感染拡大をどう見るべきか。
数理モデルを活用して、感染症の予防に取り組む第一人者、北海道大学医学研究院(理論疫学)の西浦博教授は4日、都内で記者会見した。
西浦氏は「2月第1週までに、中国国内での感染者が10万人に達するのは間違いない」「(感染者が10万人規模となれば)死者数は数百人というレベルでは収まらなくなる」「この感染は5月ごろまでは続く」との推計と分析を発表した。
英国と米国の研究チームも先月末、2月4日までに武漢市だけで感染者が最大35万人になるとの研究結果を明らかにしている。
中国政府は現在、34もの都市を封鎖し、日本の人口より多い人々を閉じ込めている。今後、尋常ではない被害規模となる危険性がある。
このためか、米国やオーストラリア、ニュージーランドなどは、中国全土を訪問した外国人の入国を暫定的に禁止した。新型肺炎の感染拡大次第では、国際社会による「中国批判」が吹き荒れかねない。
国際政治学者の藤井厳喜氏は「初動対応の遅さや情報操作など、共産党独裁国家・中国の体質があらわになった。今後、世界に信用されず、やりたい放題が通じなくなるのは間違いない。世界第2位の経済大国といっても、資本主義社会の技術と資本を利用したまでだ。そんな国が、米国との貿易戦争に勝てるはずもない。いずれ中国経済は世界経済から『隔離』される。終わりの始まりだ」と語った。
■人民解放軍にまで感染広がれば…
中国国内からも反旗を翻す動きが出た。
名門・清華大学の許章潤教授(停職処分中)が、習近平指導部の対応を厳しく非難する、以下のような文書をインターネット上に公開した。
「感染症を前に統治機能は働かず、製造大国と言いながらマスクの調達すら危うい」「彼ら(習指導部)は無数の生命がバタバタと倒れているときに、自らの功績をたたえている恥知らず」「人民はもう恐れない」
政治体制の転換を訴える直言といえる。
中国事情に詳しい評論家の石平氏は、「武漢市当局はかなり前から、中央政府に新型肺炎の深刻さを報告していたが、何ら指示がなかったとされる。これが初動対応の遅れにつながった。次々と都市が封鎖され、機能不全に陥った地方の不満は高まっている。習氏の『個人崇拝』が崩れつつあるのは確かだ。今後、人民解放軍にまで感染が広がれば、中国全土で暴動が起きかねない。共産党体制が揺らぎ、天下大乱となる」と予測した。
日本は大丈夫なのか。
石平氏は「日本政府は即刻、中国にいる邦人全員に帰国勧告を出すべきだ。『都市封鎖』の広がりを受け、入国制限の対象を中国全土に広げなければならない。それこそ危機管理だ」と語っ