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「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和四年(2022)5月30日(月曜日)
通巻第7351号
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南太平洋の島々も中国の経済植民地化するのか?
王毅外相が8ヶ国を抜き打ち訪問、米豪英仏を刺激した。
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南シナ海に七つの人工島を造成した中国は、そのうちの三つに滑走路を建設した。岩礁を埋め立て、ベトナム、マレーシア、ブルネイ、インドネシア、フィリピンの領海を侵犯しても「ここは昔から中国のテリトリーだ。文句あるか」と開き直った。
最初は小さな岩礁に掘っ立て小屋を建て、漁民の避難施設だと嘯いた。西側は油断した。いまや中国の行政区分で三沙市。住民票も発行されている。
王毅外相(兼国務委員)は5月27日から十日間かけての『南太平洋』島嶼国家群訪問の旅に出た。
まずはソロモン諸島。首都ホニアラでソガバレ首相と会見し、中国は治安安定のために警察部隊を派遣し、「平和のため」の安全保障協定を結んだ。ソロモン諸島は2019年に台湾と断交し、北京と国交を開き、驚くほど短時日裡にチャイナタウンが出来ていた。背後にダラー外交がある。
2021年に反中暴動が発生し、チャイナタウンの一部が焼き討ちされた。豪は空挺団を派遣して治安回復に努めた。豪にとっては裏庭であり、中国よりの姿勢転換はキャンベラの神経を逆なでするが、チャイナマネーに魅入られたソガバレ政権にとって中国の示す条件のほうが、潤うのである。
ソガバレは王毅にたいして「マスク、ワクチン、医療援助に感謝し、今後のインフラ建設での共同を期待したい。中国は信頼できるパートナーだ」と発言した。
ロイターは、「南太平洋には新冷戦が訪れた」とし、緊張の高まりを警告したが、中国は「過剰で大げさな警戒だ、西側メディアが故意に緊張を煽っている」とした。
この日、東京ではクワッド首脳会議に引き続き、アジア全体を包摂するIPEF(インド太平洋経済枠組)構築の話し合いがもたれていた。
ソロモン諸島訪問のあと、王毅外相は27日にキリバス、28日にサモア、29日にフィジーを訪問し、さらに次の南太平洋に浮かぶ島嶼国家群を訪問する。
トンガ
バヌアツ
パプアニューギニア
東チモール
キリバスでは気象変動、コロナ対策などが協議され、タネチ・マアマク首相は中国が医療チームを派遣してくれたことに感謝し、「中国はひとつ」の原則を守るとした。キリバスは2019年に台湾と断交した。
28日に王毅外相はサモアへ到着し、フィアメ・ナオミ・マタア首相兼外相(女性)と会談した。そして経済技術文化協定に署名し、中国のBRIに期待すると述べた。
米国と豪は、王の南太平洋訪問を警戒を持って見守っており、また豪の新外相ペニー・オンは王毅然に先立って28日にフィジーを訪問し「わわれわれは『南太平洋のファミリー』である。中国の軍事的脅威に対応しているときに、中国カードを切るとは何事か」と婉曲に抗議を表明した。フィジーはバイデン政権のすすめるIPEFには南太平洋で最初に参加の名乗りを上げている。
中国はフィジーにおける豪外相ペニーの発言を捉え、豪は都合よく「ファミリー」だなのと言い逃れ、典型的なダブル・スタンダード外交を展開している、と反論した。
▲急速に中国に接近する南太平洋
5月29日、王毅外相はフィジーに到着した。
フィジーは南太平洋フォr-ラムの事務局もおかれて、地域の政治センターであり、中国がもっとも力を注ぐ島嶼国家である。王と会見したフランク・バイニマラマ外相は「フィジーは独立主権国家だ。どのような国からも指図は受けない」とし、米豪に対しては中国との絆も主権国家の判断であり、中国に対しても米国主導のIPEF参加は主権行為だと述べた。王毅然に発言からは、南太平洋諸国のIPEFへの参加状況に異様な関心を持つことがわかる。
フィジーは中国べったり外交で首都の南太平洋大学には孔子学院がある。海岸線のリゾートホテルは豪からの観光客より中国人が目立つ。すでに華字紙が発行されている。
さてこれから訪問する四ヶ国である。このなかで、中国が力点を置くのはパプアニューギニアと、APEC加盟申請中の東チモールである。
パプアニューギニアは2018年11月のAPEC開催のおり、国際会議場を中国が建てて寄付した。首都ポートモレスビーの中国大使館は要塞のごとし、中心部のショッピングモールにはファーウェイ、オッポなど中国のスマホ販売店ばかり。
▲パプアニューギニア、東チモールも中国外交には重要
インドネシアからの分離独立から二十年を経た東チモールでも既に小規模のチャイナタウンがあり、幹線道路、発電所、橋梁工事などはJICAが出資し(53億円の円借款)、中国企業が工事を請け負っている。
数年前に、バリ島経由で首都のディリへ飛んだが、中央部だけが一応町並み、しかし用水路はどぶ川で、港へ行くと中国のコンテナ船が停泊していた。
この東チモールに、すでに20社の中国建設業が進出しており、南部の港湾を中国が整備して海底パイプラインの利権を狙う。ホルタ大統領は中国の一帯一路を前向きに支持しており、APEC加盟を申請している。
トンガは地震の復旧が急がれるが、この島の唯一高層ビルは中国大使館だ。トンガは捕鯨が栄えたが、いまは魚業のほか、これという産業がない。
バヌアツは1500万円の不動産投資でパスポートが取得できるため、夥しい中国人が住んでいる。中国経営のホテル、商店街は80%が中国人経営である。
かくして南太平洋の島々も中国の経済植民地化するのだろうか?
現在、南太平洋諸国で台湾との外交関係があるのはマーシャル群島、パラオ、ナウルの三ヶ国だけである。
南太平洋は旧英国領が多いが、現在、タヒチとニューカレドニアはフランス領、したがって米、豪に加えて英国、フランスも権益を持っている。
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中国の大学新卒は1076万人。ところが激しい求職活動が見られない
Z世代は「ほどほどに働き、残りは趣味と遊び」という人生観
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夢を描かない、人生に成功を期待しないのが1995年から2005年あたりに生まれ、中国経済が右肩カーブで上昇していた時代をのほほんと過ごした中国人の若者たちで、「Z世代」と言われる。
中国の夢を説く習近平の演説にしらけた反応しかしない。
大金持ちになる、新発明、新ビジネスモデルで起業し、ビルゲーツのように大金持ちになりたい。こうした直截な夢を描き、日々努力した世代は過去の価値観を抱く旧世代となって、なにしろ「中国の夢」をかなえてくれた馬雲は共産党にいじめられ財産を没収された。あの事件以後、Z世代は、しょせん、金持ちになっても仕方がないじゃないか。だ。
二昔前の中国人の若者は目が輝き、野心がぎらぎらしていた。獲物を追う猟犬のように儲け話にはくらいついた。
大學在学中に起業する先鋭的な集団だった。いつしか彼らも一流大学を出ても共産党にコネがなければろくな職場がないことを悟り、適度に稼いで余暇は遊んで暮らすことを目標にし、結婚はいない、しても子供は作らないという自分だけの世界に閉じこもる。
新生児出生率たるや、日本より低くなり、寝そべってゲームに熱中し、出前でピザをとり、彼女はいなくても良い、わずらわしいことは避ける。この団塊世代が、七月に新卒となる。およそ1074万人。職探しを積極的にはしないで、モラトリアム延長をもとめて就職浪人、大学院、あるいは欧米へ留学を夢見る。
往時の中国人のイメージ枠からもはみ出したZ世代の着地点はどこなのか?
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