チベットで異例の大規模デモ、映像が浮上 中国政府のコロナ対策に抗議か
ラサは感染対策で3カ月近く封鎖状態が続いている。チベットは中国で警備が極めて厳重な地域のひとつ。
抗議デモは26日午後に始まり、夜まで続いたとされる。
抗議デモについて、公式コメントは出されておらず、国営メディアも報じていない。
複数の動画にデモの様子
ある映像では、数百人が道路に集まり、当局者らが道路の片側を封鎖している。当局の1人は拡声器で、人々に冷静になるよう促し、「分別をもって帰ってください」と呼びかけている。
別の映像では、夜の路上に数十人がいる。男性が中国語で、「(人々は)あまりにも長い間、封鎖状態に置かれてきた。この地域にいる人の多くは、ただ働いて金を稼ぐためにやって来た。中国本土でそれができるなら、ここに来てはいない」と話している。
また、「私たちは家に帰りたいだけだ」という字幕をのせて、行進する人々を映した映像もある。
BBCはこれらの映像の一部が、最近ラサで撮影されたものだと確認している。映像は中国のソーシャルメディアからは削除されているが、ツイッターに再投稿されている。中国版ティックトックの「抖音」では、多くの人が「ラサで今夜なにがあったのか」などの言葉で検索していた。
チベット人情報筋は、米政府系放送局ラジオ・フリー・アジア(RFA)に、抗議者たちは規制が解除されなければ「火を放つ」と警告したと話した。これが何を意味するかは不明。
別の情報筋は、市民と警官隊の間の小競り合いが暴力的になる恐れがあるとした。
ラサの住民の1人はBBCに、抗議デモは見なかったが動画をいくつも見たとし、「人々は毎日家に閉じ込められ、生活はとても苦しい。ラサでは今、物価がとても高く、大家は家賃の支払いを厳しく求めている。労働者は故郷に帰ることも許されていない。出口がない状況だ」と話した。
この住民は、80日近くロックダウンの状態に置かれているという。市民らは1日に数時間、住宅群の敷地内を歩き回ることが許されているが、外には出られないという。
「(新型ウイルス感染者の)本当の数は誰にもわからない。毎日、酸素吸入を必要とする人がいると聞いている。政府は好きなように数字を発表できる」
BBCは抖音で、「ラサのロックダウンは77日目だ。いつまでこの状態が続くのかわからない。希望が見いだせない。出稼ぎ労働者の大変さを(中略)理解してもらえるだろうか」、「この3カ月間、収入がないのに、支出はちっとも減っていない」といった投稿を確認している。
現地当局は27日、ラサで新たに8人が新型ウイルスに感染したとの報告があったと発表した。
中国の「ゼロコロナ」政策は、人命を救ってきた一方で、中国の国民と経済に懲罰的な犠牲を強いている。人々はロックダウンと移動制限への嫌気を強めている。
人権団体によると、ロックダウンが始まってから、チベット人が何人か自殺したという。
2008年以来の大規模デモ
26日の抗議デモは、少なくとも19人が死亡した2008年の騒乱以降、ラサで起きた最大のものとされる。この騒乱では、中国の治安部隊が抗議者を残忍に殴打し、殺傷力を行使したとして非難された。
その直後、チベットには外国人が入れなくなり、中国軍の兵士数万人が送り込まれた。
しかし人権団体は、中国が人権を侵害し続け、政治的、宗教的な弾圧をしていると非難している。中国政府は人権侵害は一切ないとしている。
(英語記事 Videos emerge of rare Covid protests in Tibet)
中国のチベット自治区で起きた新型コロナ対策への抗議デモとみられる映像が、SNS上で拡散しています。少数民族への監視が厳しいチベット自治区で、大規模デモが起こるのは異例です。
こちらは、中国チベット自治区のラサで、26日に行われた新型コロナ対策への抗議デモとみられる映像です。
アメリカ政府系メディアなどは、参加者は数百人に上り、警察と衝突が起きたと伝えています。多くは漢族の出稼ぎ労働者で、「家に帰りたい」と訴えていたということです。
地元政府は、ラサの新規感染者は毎日数人程度としていますが、関係者によりますと、8月からロックダウンが続いています。少数民族への監視が厳しいチベット自治区で大規模デモが起こるのは異例です。
中国では各地で厳しいゼロコロナ政策が続き、市民の不満が高まっています。