パルデンの会

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習近平政権にとっては、チベット人もLGBTQも、一党独裁政権を脅かすリスクでしかない。今後、弾圧はますます強まりそうだ。

LGBTQからチベット人団体まで...。習近平政権「マイノリティ弾圧」の現状

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週プレNEWS

中国で習近平政権によるマイノリティへの締め付けが強まっている。 中国最大のLGBTQ組織「北京同志中心(北京LGBTセンター)」は5月15日、中国のSNS「ウェイボー(微博)」公式アカウントで活動停止を発表した。

「いつも北京同志中心への関心と支援に感謝いたします。残念ながら不可抗力のため、本日をもって北京同志中心の運営を終了することをお知らせいたします」

という告知とともに、寄付金の返金方法が説明された。 「不可抗力」とはなんなのか。中国で長年にわたってLGBTQ運動に参加している人物は、ドイツメディア「ドイチェ・ヴェレ」中国語版(5月16日付)へのイタンビューに対し、「中国政府による命令によって継続できなくなったのに違いない。このような結果は驚かない」と語っている。 活動停止の経緯を聞こうと、同センターにeメールを送り、辛穎主任のLinkedinアカウントにもメッセージを送ったが、返信がなかった。当局に厳しく監視されているのかもしれない。

同センターは、2008年に設立。件の投稿には画像も添付され、そこにはこれまでの活動への思いが記されていた。「私たちの仕事は数万人の人たちをさまざまな方法でつなぎ、ミクロからマクロに至るまで、変化を創造する努力をしてきました」などと成果を訴え、「ある日、私たちが互いに誇りを持ってまた会えることを願っています」と締めくくっている。 これに対しネットユーザーからは「歴史は記憶に残るだろう」「光のある場所で会いましょう」など政府の弾圧に負けない決意を示す書き込みが見られた。

中国のLGBTQ人口は7000万人とされているが、当局による弾圧はいまにはじまったことではない。毎年、上海で開催されていた中国最大規模のLGBTイベント「ShanghaiPRIDE(上海驕傲節)」は2020年、突如公式サイトで中止が発表された。

メッセージアプリ「WeChat(微信)」には、中国各地の大学のLGBTQコミュニティのアカウントが存在していたが、2021年にそれらはブロックされ、コミュニティに参加していた個人アカウントも次々に凍結された。中国の人権問題に詳しい、上海在住の日本人弁護士が言う。

中国共産党は、社会不安を引き起こすと判断したあらゆる種類の人物を監視したいと考えています。政府は彼ら、彼女らを監視し、周囲のすべての人を規制下に置くのです」

チベット人が歌う歌詞を検閲

締め付けの強化は、少数民族にも及んでいる。米政府系放送局「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」(5月16日付)によると、当局は、四川省青海省に住むチベット人歌手が歌う歌の歌詞の検閲を開始した。

民族精神を誇示し、チベット人の団結を呼びかけるような歌を禁止し、ラブソングやチベット語と中国語の歌詞が混ざった歌を強く推奨しているという。 こうした指示は、政府から通達があるわけではない。同メディアの取材に応じたチベット亡命政府の駐台湾代表、ケルサン・ギャルツェン氏によると、中国共産党のいまのやり方は、中国国内の情報が国外に漏れるのを防ぐため、いかなる証拠も残さず、口頭で禁止を言い渡す。こうした情報は、中国国内にいるチベット人から電話などで報告されるのだという。

近年、チベット各地で行われる新年の祝賀行事では、チベット人が中国語の歌を歌っている。共産党人民解放軍を称賛し、チベットの発展を共産党に感謝する内容の歌が増え、チベット文化や民族精神を題材にした歌はどんどん減っているという。

中国のテレビ番組に出演したことのあるチベット人アーティストは、こう打ち明ける。 「ここ数年、歌の検閲は非常に厳格で、あらゆるテレビ番組やイベントで行なわれています」 チベット人団体や寺院のイベントなどで歌った模様をインターネット上に公開したところ、歌詞に問題があるとして当局に拘束されたケースもあるという。

中国共産党を称賛する歌を歌えばチベット人からの支持を失い、チベット民族のアイデンティティについて歌えば拘束されかねない。チベット人アーティストはいま苦境に立たされている。

2022年2月には、チベット人人気歌手のツェワン・ノルブが25歳という若さで焼身自殺をした。父親の話によると、当局から脅迫などの嫌がらせが続いていたという。前出のケルサン氏はこう指摘する。 「習近平のいわゆる新時代のチベット統治戦略は、チベットの文化、宗教、言語を癌性腫瘍として排除し、伝統文化や民族感情を分裂の温床とみなしています」 習近平政権にとっては、チベット人もLGBTQも、一党独裁政権を脅かすリスクでしかない。今後、弾圧はますます強まりそうだ。

取材・文/大橋史彦 写真TCJ(在日チベット人コミュニティ)Facebook、北京LGBTセンター微博