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「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和五年(2023)7月14日(金曜日)
通巻第7822号
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NATO首脳会議はスウェーデンの加盟承認、ウクライナ加盟は見送り
ランド・ポール上院議員「ゼレンスキーの厚かましさは何だ」
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ウクライナのNATO加盟を認めるわけにはいかなかった。もし加盟すれば戦争は「NATO vs ロシア」の直接対決の図式となり、第三次世界大戦に雪崩れ込む可能性が極めて高くなるからだ。
7月12日、リトアニア・ビリニュスのNATO首脳会議はスウェーデンの加盟を承認したが、ウクライナのNATO加盟は見送りとなった。トルコは「EU加盟を前向きに検討する」という言質をとってエルドアン大統領は条件闘争に勝ったといえる。
会議にはゼレンスキー大統領も夫妻で出席し、武器支援を要請した。ゼレンスキーは「戦後、ウクライナがNATOに入ると確信している」と強調した。しかしNATOはウクライナが何時加盟できるかの日程表さえ提示しなかった。
ゼレンスキーにとっては「俺たちはNATOの代理兵として闘っているんじゃない。それなのに。。。」という絶望的な思いだっただろう。
トランプ前大統領は、バイデン大統領のクラスター爆弾のウクライナ供与を決定したことを非難し「これによって米国民を『第三次世界大戦』に引きずり込んだ」と非難した。「われわれはクラスター弾を送るのではなく、戦争を終わらせ、無能な政権によって引き起こされる悲惨な死と破壊を阻止しようと努めるべきだ。不発クラスター弾は、戦争が終わってから数十年にわたり、無辜の人々を殺傷し、あるいは重傷を負わせることになる」と警告した。この台詞、カンボジアのフンセン首相も同じことを言っている。
米国連邦議会でもランド・ポール上院議員は、「米国は一千億ドル以上も投下したが、ゼレンスキーの厚かましさは何だ」と不満を爆発させた。
バイデン、ブリンケン、サリバン、ヌーランドの四人組は「ウクライナが弾薬不足に陥ったからだ」とし、大攻勢をかけるには(クラスターが)必要だ」と理由を述べたが、共和党でも、たとえばペンス前副大統領はバイデンの強硬な見方に同意を表明した。
共和党保守穏健派はブッシュ、チェイニーの流れをくむエリート層で、予備選ではペンス支援とデサンティス支援に割れている。彼らはネオコンに近い考え方をもち、トランプの姿勢には大きく距離を置いている。
さてゼレンスキーはNATO首脳会議に先立ち7月6日からブルガリア、チェコ、トルコなどNATO加盟国のなかでもウクライナ支援に消極的な国々の根回しに動いた。ところが、ブルガリア首脳との会談は冷たい雰囲気だったという。
ブルガリアという軍需産業輸出国から、さらなる武器支援を仰いだが、ブルガリアのルメン・ラデフ大統領とは意見が決裂していたことが明らかになった。ラデフは米空軍大學にまなびブルガリア空軍司令官をつとめた軍人出身である。
ブルガリア大統領はゼレンスキーに対して「勝利、勝利などというが、われわれがのぞんでいるのは『停戦』であり、『和平』であある。ブルガリアは戦争をしている当時者に武器を売ることは出来ない」と言明した。
こうみてくると開戦時に熱狂的だったNATOのウクライナ支援姿勢が大きく後退していることがわかる。
◎☆□☆み□☆☆□や☆◎☆□ざ☆□☆◎き☆□☆◎