パルデンの会

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“自宅警備員”1600万人という中国の現実。

自宅警備員”1600万人という中国の現実。習近平「異例の3期目」を脅かす、若者たちの高すぎる失業率

2023.08.11
 
On,December,24,,2020,,Residents,Of,Huai'an,City,,Jiangsu,Province,
 
 

激しいつばぜり合いが続く米中関係。しかし異例の3期目に突入した習近平国家主席の最大の脅威は、自身の足元に存在するようです。これまでも中国を巡るさまざまな問題を論じてきた国際政治を熟知するアッズーリ氏は今回、若年層の高すぎる失業率が習政権の安定を脅かしかねない理由を解説。さらに一党独裁への不満が募る中国の現状を紹介しています。

中国・習政権にとって最大の脅威は米国ではない。3期目を脅かす「異次元の失業率」

今日、米中対立の主戦場は台湾と半導体だ。8月でペロシ前米下院議長が訪台してからちょうど1年となった。この時、中国は台湾を囲むように大規模な軍事演習を実施し、大陸側から台湾周辺海域に複数のミサイルを打ち込んだ。そのうち一部は日本の排他的経済水域にも落下したが、それから今日までの1年間でそれ以上の軍事的緊張は見られない。

しかし、4月に蔡英文総統が中米の訪問帰りにカリフォルニアに立ち寄り、そこでマッカーシー米下院議長と会談した際、中国は同様に軍事演習を行い、中国軍機が中台中間線を超え、台湾の防衛識別圏に侵入することは今日常態化している。

半導体分野でも、中国はバイデン政権による先端半導体の対中規制に対抗する目的で、半導体の材料となる希少金属ガリウムゲルマニウムで輸出規制を開始した。今後は中国当局が具体的にどの程度厳しい規制を敷いてくるかがポイントになる。いずれにせよ、習政権は今日台湾と半導体という分野で米国への不満を募らせ、強硬な姿勢を堅持している。

習近平政権を脅かす1,600万人の「自宅警備員

しかし、異例の3期目を務めている習国家主席にとって、最大の脅威は米国ではない。我々はどうしても習政権の対外政策ばかりに着目してしまうが、今日同政権の安定を最も脅かす要因は国内にある。

中国国家統計局が6月に発表した統計によると、16歳から24歳の若年層の失業率が21.3%に上り、5月の20.8%、4月の20.4%から上昇傾向にあることが分かった。これは日本と比較しても驚くほど高い。一方、最近北京大学のある副教授がネット上で公開したコメントでは、親に依存する自宅警備員の若者ら1,600万人あまりを含めたら、実際の失業率は46.5%に達する可能性があるとされるが、その後この投稿は中国当局によってすぐに削除された。

ここでは中国国家統計局の統計をもとに論じるにしても、極めて高い数字であることは変わらない。中国ではゼロコロナ政策が3年あまりにわたって厳重に取られ、市民は自由に外出できなくなり、企業は経済活動で大きな制限を受けた。それによって中国経済は大きなダメージを受けるようになり、近年中国の経済成長率は鈍化傾向にあり、習政権にとって経済の立て直しが喫緊の課題となっている。

習政権はバイデン政権との小競り合いを続ける一方、最近訪中したイーロン・マスクビル・ゲイツら大物経営者たちを熱烈に歓迎した。習国家主席ビル・ゲイツと会談し、米中経済の重要性を共有した。習政権が米大物経営者らを歓迎するのは、中国から外資が撤退することへの恐れがある。

現在も欧米企業の間では中国依存を減らしていく動きが広がっているが、習政権は外資が次々に中国から撤退し、それによって国内経済の陰りを見せ始め、若年層の雇用問題がさらに悪化するだけでなく、その不満や怒りの矛先が自らに向かうことを恐れている。だから、イーロンマスクやビルゲイツらにさらなる投資を呼び掛けたのである。

すでに習近平政権に向けられている若者たちの怒りの矛先

しかし、既に若年層の不満や怒りの矛先は習政権に向いている。昨年秋、全人代が北京で行われた前後、一部の市民らによる不満がネット上で発見された。たとえば、北京では10月16日の全人代開幕直前の13日、北京市内北西部に高架橋から、「検査ではなく食料を、規制ではなく自由を、嘘ではなく尊厳を、文化大革命ではなく改革を!我々は奴隷ではなく市民だ!」などと赤い文字で書かれた横断幕が掲げられる動画がネット上に流出した。現場からは黒い煙のようなものが立ち上り、男性が拡声器で習氏を批判するように叫ぶ声も確認できた。

そして、上海でも同じ時期、集まった市民らが共産党退陣、習近平退陣」などと連呼し、ゼロコロナ政策を批判する動画が一時に流出し、一部は警察官と衝突したとみられる。

北京や上海で明らかになったことが、他の地域や都市でも発生していることは想像に難くない。中国を離れ、中南米のメキシコへ渡り、そこから陸路で米国に向かおうとする中国人も増えており、一党独裁体制への不満は募るばかりだ。

外から見ていると、習政権は台湾や半導体を最重要課題にしているかのように映る。だが、それは中国内政を無視した論理だろう。習政権にとってこの失業率というのは、自らの安定性を示す数値でもあり、失業率が高まれば高まるほど、政権の安定性は低下する。要は、失業率と政権安定性は反比例の関係にあると言っていい。習政権は国内経済を考えれば、逆に米国や日本に対しても過剰な対抗手段は取りにくいとも言えよう。

image by: He jinghua / Shutterstock.com

 

 

アッズーリ

 

専門分野は政治思想、国際政治経済、安全保障、国際文化など。現在は様々な国際、社会問題を専門とし、大学などで教え、過去には外務省や国連機関でも経験がある。