パルデンの会

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★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2024.10.07)拉致問題-新政権に望むこと

★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2024.10.07)拉致問題-新政権に望むこと1

拉致問題-新政権に望むこと1

 今回の東京連続集会は、新しい自民党総裁、内閣総理大臣が決まった直後に実
施されました。北朝鮮は日本の総理が誰になるか、また11月の米国大統領選挙の
行方を見て、次の政策を建てようとしていると思われますが、この新しい状況の
中で、どのようにして拉致被害者救出を可能にするかを考えます。

 また、7月に韓国政府から脱北者として初めて国民勲章冬柏章を授与された自由
北韓放送の金聖ミン(王へんに文)氏に、「自由北韓放送20年と拉致問題」と題
して、特別講演をしてもらいました。

 家族会からは横田拓也代表、横田早紀江さん、横田哲也さんが参加。概要以下
の通り。

西岡力救う会代表)
 みなさん、こんばんは。今日の報道で色々なことが出ています。私は一昨日、
石破総理から就任挨拶の電話をいただきました。岸田総理からも、菅総理からも
いただいていましたので私的なものではないのですが、その内容がニュースにな
るようなものではなかった、というのが私の認識です。

 横田代表にも早紀江さんにも電話がありましたので、それぞれのお話も踏まえ
ながら石破政権にどういうことを期待しているのかについて、まず家族会の皆さ
んにお話ししていただきます。

◆動きがあるかもと期待していたが
横田拓也(横田めぐみさん弟、家族会代表)
 皆様こんばんは(会場から、こんばんは)。家族会代表の横田拓也でございま
す。本日もお集まり頂きまして誠に有難うございます。

 岸田前首相は、国民大集会やその他の公の場で北朝鮮と水面下交渉を行ってい
る旨の発言をされ、北朝鮮の金与正副部長もそのことについては認めていました。

 北朝鮮との外交交渉が一筋縄ではいかないことは重々承知しているものの、も
しかしたらこの9月または10月に日朝首脳会談を含めた大きな動きがあるのでは
ないか、見える景色が変わるのではないかとのかすかな期待を持っていたのです
が、岸田首相が8月14日に、自民党総裁選挙に立候補しない意向を表明しました。
これを受けて、水面下交渉は事実上止まってしまいました。

 その後、自民党総裁選挙が行われ、石破首相が誕生しました。私たち家族会が
設立されたのが1997年で、そこから数えて石破首相が13人目の首相となります。

 これだけ多くの方々に「家族を取り返してほしい」「再会させてほしい」「北
朝鮮に強い姿勢を迫ってほしい」と訴えて来ましたが、結果的には2002年9月に
開催された日朝首脳会談以降、5人の拉致被害者しか取り返すことが出来ていま
せん。

 2002年から早くも22年が経過し、その中で家族会初代代表の横田滋、二代目代
表の飯塚繁雄さん、そして有本恵子さんのお母様他の方々が他界され、家族会の
残された親世代家族は横田めぐみの母早紀江88歳と有本恵子さんのお父様明弘さ
ん96歳お二人のみです。高齢化という厳しい現実からは逃げることは出来ず、時
間的制約がある問題です。

◆日朝国交正常化した後に拉致問題が解決は幻想
 姉横田めぐみは明日10月5日で60歳を迎えます。とても信じられません。13歳
の中学生の少女が日本国内から拉致されたにもかかわらず、47年近くも助け出す
ことが出来ない状態が続き、十分な食料・充実した医療環境がない中で毎日を必
死に生き延びているのだと思います。発言の自由・移動の自由は?奪され、逃げ
ることも許されない現状です。まさに正に明るい未来を描けない毎日が続いてい
るのです。

 なぜ助け出すことが出来ないのか、日本政府はどこまで本気で戦っているのだ
ろうか、毎日そのことを思っています。

 拉致問題解決において、最初に人権問題である拉致問題を解決した後に日朝国
交正常化という考え方が一つ、もう一つは日朝国交正常化した後に人権問題であ
拉致問題が解決できると言う考え方、前者が「入り口論」、後者が「出口論」
と言われています。

 これまでの日本と北朝鮮との間の交渉の経緯、米朝間の交渉経緯を見ている限
り、北朝鮮が善意の解釈で自分達の非を認めて物事を動かすことは決してありま
せん。つまり「出口論」という幻想に期待して、日朝国交正常化した後に拉致問
題が解決するのだと言う考えは絶対に成立しないことを十分に理解する必要があ
ります。

北朝鮮拉致被害者の動向を全員把握している

 この点で、時折話題として出て来る「連絡事務所の設置」、「合同調査委員会
の設置」という聞こえの良い考え方は、全く北朝鮮の政治体制を考えた場合は無
意味であると共に、単に北朝鮮が企んでいる時間稼ぎや幕引きに加担することを
意味します。

 彼らは厳重な監視下で拉致被害者の「誰が、どこで、いつ、何を」しているか
を把握しています。人質として厳重管理しているのです。どこに居るのかを把握
しています。あたかも、どこに居るか分からないと言う嘘の前提に立ち、連絡事
務所の設置や合同調査委員会の設置というアプローチは彼らの工作活動に手を貸
すことになるのです。

 従って、家族会も救う会拉致議連も日本政府も、一枚岩になって「全拉致被
害者を即時一括帰国せよ!」と言い続けることが重要です。石破首相の強いリー
ダーシップに期待したいと思います。

 そして家族会の方針に沿った強い外交を日本政府には貫いて頂きたいと思いま
す。国民の皆様もどうか私たちを引き続きご支持頂きたく思います

 母とめぐみが再会できるよう、拉致被害者と家族が再会できるよう引き続きの
お力添えを頂きたいと思います。

◆連絡事務所設置で誤報

 最後に、西岡会長からもお話がありましたが、一部の新聞記事で石破首相が家
族会に対して連絡事務所の設置や合同調査委員会の設置を説得したという形の記
事が出ていますが、これは正確ではありません。

 10月2日17時30分少し前に、石破首相からお電話を頂きました。私からは首相
就任の祝意を伝えた上で、「私から一言お伝えしても良いですか」と断りをした
上で、「どうぞ」と言われたので、「家族会としては、連絡事務所の設置や合同
調査委員会の設置には賛成していない」ということを私の方からお伝えしました。
総理側から「そういうことをする」と私たちが聞かされたのではありません。一
部の新聞記事はニュアンスが異なっているので、その点は皆様方にもご理解を頂
きたいと思っています。

 今、日本でも首相が代わって、アメリカでも大統領選がまもなくあるという国
際政治の力学、動きが変わろうとしていますので、こうしたチャンスは北朝鮮
とってもチャンスになるかもしれませんので、私たちは原則論を曲げることなく
貫いていく。そして皆さんも、「私たちの同胞を全員返せ」ということを言い続
けること、これを皆様にも引き続きお願いしたいと思っています。

 これからもよろしくお願いいたします。ありがとうございます(拍手)。

◆今なお続いている拉致

横田早紀江横田めぐみさん母)

 皆様、こんばんは(会場から、こんばんは)。お忙しい中、このようなたくさ
んの方にお出でいただきまして、本当にありがとうございます。

 拉致問題は、本当に考えられないような大きな問題でありまして、もう47年
と考えられない程長い年月で、人の一生のような長い年月が経っています。

 何にも悪いことをしていない子が、学校から帰ってくる途中で、車で連れ去ら
れ、船で北朝鮮に連れていかれたまま、考えられない日々が過ぎてしまいました。

 何にも分からない。煙のように消えたままで、20年の間全く分かりませんでし
た。どうして、どこに消えたのだろう。何も残っていない。足跡もない。私たち
は子どもたち二人を連れて、近くの護国神社や海岸を泣きながら探しまわって、
「めぐみちゃん、めぐみちゃん」と叫びながら、毎日のように探していました。

 警察も一生懸命探してくれましたが、何にも分からないことが不思議で、北朝
鮮に拉致されたことが分かった20年間は、私たちは狐につままれたような感じで、
何という人生なんだろう、何だろうこれはという苦しい中を、みんな力を合わせ
て、たくさんの方に助けていただいて生きてくることができました

 北朝鮮に行っていた。そして曽我さんとか、蓮池さんとか、たくさんの日本の
若い方々が向こうに連れていかれて帰ってこられないことが明らかになって、信
じられないような思いでした。

 こんなことがあっていいのかな、と。それが今なお続いているのです。一部の
方は帰ってこられましたが、金正日に許されて帰ってきましたが、後の人たちは
「死亡した」と言い続けてここまできています。

◆「日本はこんな姿でいいのですか」と総理に

 私たちは色々な希望を持っています。(拉致被害者は)あちらで学ばされて、
一生懸命政権を支えているのだろうと、私は思うことにして、「必ず助け出して
あげます」と、そのことだけを考えて今日までやってくることができました。

 本当に日本中のたくさんの方々が、ひどい話ですが、さらわれていったままで
す。謝ることもなく、また報酬の種にしようと思っているようです。本当に恐ろ
しいことだと思います。

 世界中がこのことを知ることができるようになったのも、(救出)活動のおか
げで、皆様のご支援のおかげです。この大きなことを全世界が知るようになった
ことに、感謝しています。

 あきらめずに、今度の石破さんに、祈る思いで、力一杯頑張っていただきたい
と思っています。「日本はこんな姿でいいのですか」と私は思わず、(石破総理
に)言ってしまいましたが、「本当に何十年も放っておいていいんですか、外か
ら見たら恥ずかしいことですよ」と言いましたが、そうお思いになると思います。

 お子様がいる皆様も同じ思いだと思います。人間の根源を蹂躙していることで
す。向こう(拉致被害者)も待っていると思いますから、「必ず取り返す」とい
う思いを秘めて戦ってほしいと思います。

 これからもどうかよろしくお願いいたしますありがとうございます(拍手)。

◆13歳の少女が還暦を迎えるとは

横田哲也(横田めぐみさん弟、家族会事務局次長)

 みなさん、こんばんは。冒頭に司会からご案内がありましたが、韓国から金聖
ミン(キム・ソンミン、王へんに文)さんがいらしています。この東京連続集会
にも何回かお越しいただき、北朝鮮での地獄のような生活とか、色々は話をして
いただきました。

 その、「地獄のような生活」が今現在も北朝鮮の国民の皆さまが強いられてい
るわけで、私たちは日本人拉致被害者を取り戻すことが第一義ですが、二番目に
全員の不幸な方々を救うのも大切なことだと思っています。

 金聖ミンさんの母国である北朝鮮という国が、一日も早く平和な国になるよう
に私たちは拉致問題解決を通して、できればなと考えています。

 明日10月5日で、姉の横田めぐみが還暦になります。13歳の少女が還暦を迎え
るということは、本当に「むごい」の一言に尽きます。

 明日は新潟で毎年やっていますが、「お帰りなさいコンサート」があり、毎年
行っています。毎回、姉の同級生の方々と話をしていますが、本当に「お帰りな
さい」と言えればいいなと思うものの、今年も実現できませんでした。同級生も
そう思っていると思います。

 日本政府がどう頑張っても、北朝鮮が120%抵抗している限り解決しないので
すが、今のやり方だけで本当にいいのかについて色々な集会の度に申し上げてい
ます。「様々な手段を尽くしてもだめだった」ということではなく、あらゆる手
段を尽くしてほしいと思っています。

 石破首相は拉致問題の解決を、政権の「最優先事項」として、これまでの首相
が出してきた方針を継続してほしいと思います。またこれまでの交渉の糸を切ら
すことなく対処してほしいと思っています。

 先ほど兄からも話がありましたが、日朝双方の連絡事務所ということですが、
反対ということは同じですが、あの国に事務所を設置したとしても、日本の調査
官にどれだけのことができるかということがあります。何もできないのではない
でしょうか。

 それならやる意味はないと思うのですが、なぜやろうと考えるのか。これから
も国会議員の先生方に会うこともありますので、その主張を述べていきたいと考
えています。

◆必ず取り戻す

 北朝鮮という国では10月7日に最高人民会議が開かれ、憲法の改正等を決める
ということが報道されましたが、どれだけ時間をかけても何も解決策はでないと
思います。トップの方針が変わらない限り何も変わりません。

 金正恩がリーダーとして日本人拉致問題の解決をはかることで、日本からの経
済支援が得られ、国際社会に合流することで色々な国々からも支援が受けられ、
初めて開かれた国になると思っています。

 ロシアやイランと組んでいるのが正しい選択ではなく、何が正しいことか分かっ
てはいるでしょうから正しい選択をしてほしいと思っています。

 北朝鮮の状況がどう変わろうと、日本の政治がどう変わろうと、私たちは国民
に理解をしてもらい、政府のポスターの通り、「必ず取り戻す」ことであり、絶
対に揺るぎません。

 しかし、家族会だけでは達成できませんので、これからもお力をお貸しいただ
きたいと思いますので、宜しくお願いいたします。ありがとうございました(拍
手)。

◆「次期自民党総裁立憲民主党代表に望む」声明2

西岡 今の状況をどう見るかについてお話します。

 お手元に9月11日の家族会・救う会の声明があります。実は、次自民党総裁
立憲民主党代表を選ぶ選挙が行われることが明らかになった時、早紀江さんから
電話をいただきました。「何かした方がいいんじゃないでしょうか」と。

 「テレビを見ていても、拉致問題についてほとんど議論がない。絶望するんで
すよ」と言われたんです。「自分の身体に自信がない」、「めぐみちゃんと会え
ないかもしれない」と。

 しかし私は、「私たちは政治運動ではなく国民運動ですから、どの候補がいい
とかどの党がいいという活動は控えなければならない」とお話して、「選ばれた
人にお願いに行くという、今までやってきたことをやりましょう」と言いました。

 電話を切った後、「これでよかったかな」と。あまりにも切迫感がある話を聞
いたので色々考えました。そして拓也代表に連絡をした所、「同じ連絡があった」
ということでした。それで家族会役員と相談して、政治的活動にならない範囲で
自民党総裁の候補者と立憲民主党代表の候補者たちに望むことを話すという記者
会見をしようという決断をしました。

 私たちは27年間、家族会・救う会で運動をしてきましたが、自由民主党と立憲
民主党の代表を選ぶ選挙の前に、会見をしたのは初めてのことでした。そこで誤
解を受けないようにまず声明文をまとめて、家族の方たちには思いをぶつけてい
ただこうという会見をさせていただきました。

 その時作ったペーパーがこれです。拉致問題は著しい主権と人権の侵害だ、だ
から解決は国家の最優先課題だとした上で、最優先課題になったのはいつからか
というと2006年からです。

 1977年に最初の認定被害者が出ましたが、2006年まで残念ながら最優先課題で
なかったということがこの声明の中に含まれています。

 そして2006年、今から約18年前、(第1次安倍政権の時)総理大臣を本部長と
し全閣僚を本部員とする政府拉致問題対策本部が創設され、拉致問題担当大臣を
置き、その下に独自の予算と人員を持つ事務局を設置しました。この時、「最優
先課題」とする体制ができたのです。

 この体制は民主党政権になっても維持されました。しかし、まだ解決はできて
いない。私はこのことを色々なところで言っているのですが、「なぜこんなに長
くかかったのか」と。一番の理由は立ち上がりが遅かったからです

 問題というのは発生した直後が一番解決しやすいのです。1977年に最初の認定
被害者が拉致され、2006年まで約30年間何も体制がなかった。そして横田めぐみ
さんは拉致されて47年経って還暦を迎えるわけですが、最初の30年に何もなかっ
たのです。

 この30年間の20年後(1997年)に家族会ができた。20年間は家族会の活動もな
かったのです。家族会ができても10年間は対策本部ができていなかった。そして
初代代表の横田滋さん、2代目代表の飯塚繁雄さんら多くが戦いの中で倒れて、
今親の世代が二人になったのです。

 そして岸田政権が、歴代政権の中で初めて、拉致問題について「時間的制約の
ある人権・人道問題」という言葉を使いました。これは家族会のリーダーたちが
次々に倒れていくという状況を踏まえて、本当に時間がないということで、変更
したのです。

 それまでの政権は、「国政の最優先課題である拉致問題」と核・ミサイル問題
を包括的に解決すると繰り返していました。岸田政権も「包括的に解決する」と
言いましたが、その後続けて、拉致問題だけに、「時間的制約」という言葉を付
けました。

 そうしたら北朝鮮から一定の反応がありました。外務次官声明が出たり、金正
恩氏から(能登地震の際の)お見舞いの電報がきたり、金与正副部長が、「岸田
首相が平壌を訪問することはできる」という談話がありました。

 そして今年3月には、「異なるルートで」と限定を付けて、日朝首脳会談をや
りたいと岸田首相からのメッセージが届いた」と、金与正副部長が言いました。

 先ほど、横田代表が言っていたように、「ルートがあってメッセージが届いた」。
表では外交交渉が行われたとの発表がないのに、北朝鮮が「メッセージが届いた」
と言ったのですからルートがあったのです。

 そういうことを踏まえた上で、今の自民党の総裁選挙と立憲民主党の代表選挙
が行われているということを訴えたわけです。そして、こういう経緯を踏まえて、
新しく総理になる人、第一野党の代表になる人が、(拉致問題を)どうやって解
決するのかという議論をもっとしてほしいというのが私たちの訴えです。

 だから候補者にもっと話してほしい、と。そして3つのことをお願いしました。

1.親の世代の家族が存命のうちに必ず拉致被害者を取り戻すという覚悟を持つ
こと。

 総理になろうとする候補者、第一野党の代表になろうとする候補者にはその覚
悟を絶対持ってほしいということです。

2.拉致被害者救出のシンボルであるブルーリボンを常時着用すること。

3.残された時間が少ないという危機感の中、苦渋の思いで家族会救う会が出
した運動方針である、「親の世代の家族が存命のうちに全拉致被害者の一括帰国
が実現するなら、我が国が人道支援を行うことと、わが国がかけている独自制裁
を解除することに反対しない」を重く受け止め、北朝鮮との交渉で活用すること。

「苦渋の思い」については、この場で家族会の方々が何回も話しましたのでご理
解されていると思います。また岸田総理にも直接、「人生を滅茶苦茶にされてい
る(拉致被害者の)家族として、「支援」とか、「解除」というのは、本当は悔
しい。しかし、時間がないのでこういう声明にした、とお話しました。

 その思いをよく受け止めて活用してほしい、と。政治的にならない範囲で私た
ちの思いをぶつけたものです。結果として自民党の総裁選挙は石破さん、立憲民
主党の代表には野田さんが選ばれました。

 自民党の総裁選挙では9人の候補者が出ました。私たちが会見をしたこともあっ
て、その後記者の方々が拉致問題についてかなり質問をしてくださっています。
9人の中には現拉致担当大臣と元大臣もおられ、議論をしてくださったと思って
います。

 この声明の翌日に自民党の総裁選挙が告示されたのですが、候補者9人の内7人
ブルーリボンを付けていました。その二日後に、着けていなかった二人の内の
一人も着け始める状況になりました。

 二日後に着け始めたのが石破茂さんで、その後もずっと付けておられます。総
理になるということは、自動的に拉致問題対策本部長になるわけで、だからこそ
自分として付けようと思われたのだと思いますし、それは大変嬉しいことだと思っ
ています。会見をしてよかったなあと、それを見て思いました。

 第一野党の代表選挙では、泉さんだけが着けており、後の方は着けていません
でした。野田代表は今付けていないと私は理解していますが、着けていただきた
いなあと思っています。

所信表明演説で「最重要課題」、「時間的制約」と

 今日、石破総理大臣が所信表明演説をしました。その中で拉致問題について、
このように話されました。

 「拉致被害者やそのご家族が高齢となる中で、時間的制約のある拉致問題は、
ひとときもゆるがせにできない人道問題、国家主権の侵害であり、政権の最重要
課題です」。

 岸田首相が使った「時間的制約」という言葉を引き継いで使ってくださってい
ます。「時間的制約のある人道・人権問題」という言葉の意味は、「核問題が動
かなくても人道支援はできるのではないか」という呼びかけに応えた言葉遣いに
なっています。これは岸田政権が使い続けた言葉遣いです。それが踏襲されてい
ます。

 そして、「国家主権の侵害」という言葉を政府は色々なところで使ってきまし
たが、それが所信表明演説に入った上で、政権の最重要課題だと言いました。岸
田政権が「時間的制約」という言葉を使い始めてから北朝鮮から反応があったこ
とを踏まえており、大変ありがたいフレーズでした。また、「最重要課題」とい
う言葉も使われ、よかったと思っています。

 その次に石破首相は、「日朝平壌宣言から20年余、残された拉致被害者たちの
ご帰国が実現していないことは痛恨の極みです」。これはこれまでの総理も言っ
てくださったことです。それから22年になってしまったのです。

 さらに、「日朝平壌宣言の原点に立ち返り、すべての拉致被害者一日も早い
ご帰国を実現するとともに、北朝鮮との諸問題を解決するため、私自身の強い決
意の下で、総力を挙げて取り組んでまいります」。

平壌宣言」という言葉が入っていることに様々な議論があることは承知してい
ますが、「平壌宣言」は安倍総理も、菅総理も、岸田総理も言及してきたことで
す。

 北朝鮮はああいう国ですから、最高指導者がサインしたことは大変重視します。
平壌宣言」では、「国交正常化をした後に大規模な経済協力をする」と書かれ
ています。北朝鮮にとってはそれがほしいものであることは間違いありません。

 私たちは、国交正常化の後の経済協力に反対するものではありません。韓国に
対してやったことですから、法制上できるのであればそれはしてもいいと思って
います。

 では正常化とは何か。日本人の被害者が一人でも抑留されていたら正常化には
ならないと思っています。

 石破総理は、「北朝鮮との諸問題を解決する」と言っていますが、もちろん核
問題も解決しなければならない。そして国交正常化になる。その後に経済協力の
話が出てくると思いますが、しかし拉致問題だけには「時間的制約」という言葉
が付けられていました。

 2006年に作られた、「最重要課題」という枠組みと、岸田政権が新しく北朝鮮
に向けて使った、「時間的制約のある人道問題」、この2つが入っているという
ことを、私は評価しています。

 そして拓也さんが言った「連絡事務所」、そして「合同調査委員会」という言
葉は入っていません。石破総理は、選挙公約では、「連絡事務所」に言及しまし
たが、自民党総裁になった後は使っていません。拓也代表に(総理から)電話が
あった時も、それは総理から出た言葉ではないということを確認しました。

 逆にこちらから「言ってもいいですか」と了解を取った上で、「家族会・救う
会は反対です」と、私たちの基本的な立場を伝えたということです

◆石破総理からの電話

 実は石破新総理とは古い付き合いで、石破総理からの電話でも、「初めまして」
ではなく、「ご無沙汰しています」から始まりました。私は、「2002年9月17日
に、『8人死亡』と言われた時、家族会が涙の記者会見をした時に、石破総理は
拉致議連の会長として、横田滋さんの隣に座っていましたよね。あの時の姿が忘
れられません」と言いました。

「その石破総理がめぐみさんたちを取り戻したら、こんな嬉しいことはありませ
ん」と。そうしたら総理は、総理の発言はあまり引用してはならないのですが、
多分大丈夫だと思うので、「私もあの時のことは忘れられない」という趣旨の話
をされました。

 あの会見は本当に感動的な会見だったことを皆さんもご承知だと思いますが、
早紀江さんが後ろからマイクを取って、「私はまだ信じません」と言った会見を
現場で聞いておられたということは、やはり他の人とは違うのではないかと思い
ます。それを是非思い出してほしい、と思って言いました。

 そして私は、「これまでやってきた積み上げを理解してほしい、その上で総理
が取り組んでほしい」という趣旨のこと言いました。

 また、「官房長官拉致問題担当大臣として留任したことがよかったと思いま
す。これまでの取組みについて林官房長官に聞いてください」と言いました。

 それについては、「よく分かりました」という趣旨のご返事があり、そして最
後に、「西岡先生の意見も聞きながら進めます」と、お世辞かもしれませんが、
そういうお話もありました。

 何か私たちを説得するために電話をかけてきたのではなかった。新任の挨拶を
されたということでした。逆に私たちの方が、何とか考えてほしいと思って言っ
たところです。

 私たちは、どの政権がいいという立場ではありませんが、解決としての方策と
して、「連絡事務所」、「合同調査委員会」の設置には反対だということは、ど
の政権に対しても言おうと思っているところです。

 繰り返しになりますが、連絡事務所を作っても何もできない。拓也さんも言い
ましたが、分かりやすい例で言うと、今世界のかなりの国では平壌に大使館があ
ります。大使館なら外交官特権がありますが、連絡事務所ではないんです。

 あるヨーロッパの大きな国の北朝鮮大使が東京に来て、家族会・救う会に会い
たいと言って会ったことがあります。「平壌に行っても何も分からない。東京に
来て専門家に会って、北朝鮮で何が起きているかをチェックする」と。そういう
状況になるのが連絡事務所です。

 拉致問題の解決のために何かできるかと言えば、それはできないのです。でも、
「日朝が大使館を置くくらいに関係がよくなった」というメッセージが国際社会
に発せられてしまう。

 私たちは国際社会に対して、「ひどい人権侵害が行われている」と言っている
のに、日本は態度を改めたというふうに映ってしまう点からも賛成できないとい
うことです。

◆「次期自民党総裁立憲民主党代表に望む」声明2

西岡 私が繰り返し申し上げているのは、今北朝鮮は状況を見ていると思います。
先ほど言いましたように、岸田総理は、「拉致と核を切り離して、拉致を先にや
ろうじゃないか」というメッセージを出した。「時間的制約」という言葉の中に、
そのメッセージを込めたわけです。

 そこには国際情勢の判断と、日本国内で起きていることの判断と2つあります。
国際情勢については、バイデン政権のもとで北朝鮮の核問題は全く動きがないと
いうことです。そこがトランプ政権との大きな違いです。

 バイデン政権は事実上北朝鮮を放置している。これは島田さん(救う会副会長)
が後ろにいますが、米政権の動きをずっとウォッチしており、中でもワシントン
では北朝鮮問題がほとんど話題になっていないのです。

 ウクライナ戦争があり、中東でハマスのテロから始まった様々な(イスラエル
に対する)テロや、その逆の攻撃があり、そして中国が次第に覇権主義を強め、
台湾に対する軍事侵攻も辞さずと言って、戦争の準備を着々と進めているという
ことがある中で、北朝鮮は放置されているのです。

 トランプ政権の時は核実験もし、ミサイルも撃っていましたが、日本海に落ち
ロフテッド軌道のミサイルは撃ちますが、それより遠くには飛ばさなかった。
核問題で非常に緊張し、核問題で米朝が話し合いをする状況でしたから、(安倍
総理が)「核問題で米朝が話し合いをする時に拉致問題も絶対に一緒に入れても
らわなければ困る」ということが大きな課題だったのです。

 岸田政権が置かれた状況はそうではなかった。核問題は動かないだろう、そし
て親の世代の方がどんどんお亡くなりになり、早紀江さんも去年一度倒れた。有
本のお父さんは96歳になった。親の世代が被害者と抱き合うことができなくなる
かもしれないという切迫感が国内で生まれた。

 そういう中で、拉致問題を「人道・人権」という枠で、安全保障と切り離して
先にやることができないかということを私たちは提言し、岸田政権もそういう方
向のメッセージを出した。

 そして菅政権の時からですが、北朝鮮に対して、「親の世代が存命の内に被害
者を返さなければ、日本の世論は反北朝鮮になりますよ」と。

 また早紀江さんがここにいらっしゃる中で言うのはいいことではないのですが、
「早紀江さんに何かのことがあった後に、めぐみさんが帰ってきても、日本の世
論は『よかった』とはなりませんよ。なぜ親が生きている間に会わせなかったの
かということになりますよ」と。

「そういうメッセージを北朝鮮に送ってください」と言いました。菅総理から
「送りましたよ」との返事がきました。私が調べたところでも、このメッセージ
平壌の中枢に届いています。彼らは日本の世論を見れば分かるわけです。

 日本から多額の経済協力資金を取りたい。しかし、それは国交正常化の後だ。
そして日本は米が余っている。医薬品も余っている。人道支援が受けられるなら、
できることをしたい。それらを取るためには、日本の世論が、「よかったな」と
思わなければならない。それは、「親の世代が生きている間に拉致被害者を返す
ことだ」と平壌は理解した。

 そういう働きかけを菅政権以降やってくださっている。その次の岸田政権になっ
て、アメリカが動かないことが分かって、「時間的制約のある人道問題」という
言い方ら向こうから返事が来た。

 しかし今年の3月以降、「日本とは話をしない」と言いました。その後、接触
は続いたという情報を私も持っていますが、その後岸田政権の支持率が下がり、
9月に日本の総裁選挙があることは北朝鮮は分かっていますから、再選されるか
どうか分からない総理大臣と首脳会談をしても、そこで約束したことが守られる
か分からないという情勢になり、止まったのだと思います。そして、岸田さんが
総裁選に立候補しないことになりましたから、岸田政権とはやらないことになっ
たのです。

 一方、アメリカでバイデン政権が続かないことが明らかになりました。そして
トランプ前大統領の支持率がどんどん上がってきて、トランプ政権ができるかも
しれないということになった。

 石破政権は、「時間的制約がある」と、岸田政権に合わせてきた。もしトラン
プ政権になったら、トランプ氏は金正恩氏と会うと思います。金正恩氏もトラン
プ氏に会いたがっているという複数の情報があります。

 そうなるとハノイでの米朝首脳会談の再現になると思います。核問題をテーブ
ルに置いて米朝が話し合う。前回はトランプ大統領拉致問題も出した。出すこ
とができた背景には安倍総理という前提があった。

 石破総理になって、トランプ大統領が当選した時、もう一度米朝脳会談が行
われた時に、トランプ大統領拉致問題をテーブルの上に出すかどうかです。一
方ハリス氏が勝った場合、バイデン政権の延長線上になるでしょう

 そして、石破総理が言った「時間的制約のある人道問題」という言葉、岸田総
理が言ったその言葉がもう一度使われるかもしれない。

 北朝鮮とすれば、トランプ政権と核問題で、米朝で一定の妥結をする。そして
国連制裁のかなりの部分を緩和してもらう。そしてすぐ日朝首脳会談をして国交
正常化交渉に入る。その時拉致問題のカードを使う。そうしたら平壌宣言で約束
されている大規模な経済支援が貰える。但しそれは、親の世代が生きている間で
すよ、という仕組みはまだ効いている。

 ハリスの場合は、「時間的制約のある人道問題」という政策を着々と進めるし
かない。それは私たちが決めることではありません。アメリカが国民が決めた結
果となります。

 そこで、これをハンドリングする位置に石破総理が就かれて、そこで「最優先
課題だ」とおっしゃったわけです。これが今の状況です。

 残念ながらこの秋には嬉しい兆候はないのではないかと思います。それは9月
自民党総裁選挙と、11月のアメリカの大統領選挙のあとに北朝鮮が方針を決
めるだろうからです。接触はあるだろうが、本格的な交渉にはならないだろうと
思います。

 しかし、日本から支援を貰うことをあきらめてはいない。だから来年、トラン
プ政権かハリス政権が成立した後、動きが出てくるだろうと思います。早紀江さ
んにもう少し頑張っていただきたいと思います。そして向こうにいる被害者にも
頑張ってほしいと思います。

 もう一つ、今国際情勢と国内のことを言いましたが、北朝鮮の状況があります。
日本からの支援を必要とする度合いは高まってきています。一番大きな要素は中
朝関係が悪いということです。

 ごく最近も韓国の新聞が報道していて驚いたのですが、中国当局発表した8
月末までの中朝貿易の統計ですが、北朝鮮が中国に輸出した米の量は前年同時期
の輸出の90%です。北朝鮮で食糧難が続いている中で前年比10%しか米を輸出し
ていない。

 金正恩氏や側近が使うぜいたく品、北朝鮮ではそれを1号物資と言うのですが、
それを中国政府が押収して競売にかけてしまった。「1号物資だけは何とかして
ください」と北朝鮮の高官が交渉に行ったけれども、だめだった。私はこの話を
この集会でしましたが、最近韓国の新聞が書いています。

 北朝鮮のチャンマダン(市場)に中国製品がほとんどこなくなった。日用品は
ほとんど中国製品で、中国の人民元で買い物をしていたのです。すれがなくなっ
た。中朝国境が完全に壁で封鎖され、中国に逃げ出すことができなくなった。

 金正恩氏が中国に行って、「助けてください」と頭を下げれば変わるというよ
うな状況は全くない。プーチンさんはどこまで託せるか。北朝鮮戦争で必要な
物だけを出し、それも助けるのではなく貿易をしているのです。そして小麦粉等
を買っている。

 そういう状況の中で、日本からは貰える。アメリカはトランプ大統領と会えば
友好的にはなるだろうが、トランプ大統領は安全保障は約束してくれるし、制裁
は緩和してくれるが、経済支援はしない。以前にもトランプ大統領はそう言って
います。

 日本は経済制裁で約束をしている。それには石破さんは今日の演説では触れな
かった。しかし、「時間的制約」はありますよと言った。これが今の状況です。

 そういう中で、小手先の「連絡事務所」等ではなく、日本は大戦略をとって、
今国際情勢がどうなっているか、米、中、ロシアとの関係がどうなっているかを
見て、また被害者家族がどうなっているかを見た上で、石破首相が先頭に立って、
全被害者を助けてほしいと思います。

以上です。ありがとうございました。


◆自由北朝鮮放送20年と拉致問題

西岡  では第2部に移ります。今日は金聖●(キム・ソンミン、●=王へんに
文)さんに、「自由北朝鮮放送20年と拉致問題」との題で特別講演をしていただ
きます。

 今日は衝撃的なお知らせもあるのですが、おめでたいこともありました。勲章
をもらいました(拍手)。尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権になって、北朝鮮
権問題に大変力を入れています。そして、この間の北朝鮮人権活動が評価されて、
脱北者として最初だと思いますが、(国民勲章冬柏章という)勲章をもらいまし
た。

 金聖●さんは、「これは私が貰ったのではなく、脱北者の活動がもらったのだ」
と言っています。それは自由北韓放送の20年が評価されたということです。自由
北韓放送の中には、「西岡教授の拉致の話」という番組もあり、またここにも繰
り返し来てくれて、日本人拉致救出運動にも取り組んでくれています。

 20年という節目に勲章をもらったということもあり、そして皆さんに伝えたい
こともあるということで、今日東京に来てくださいました。

◆人生の最後にやるべきことの一つとして訪日

金聖● 皆様方とまたこのように会えたことを大変嬉しく思っています。皆様方
の熱意、そして被害者に対する愛情、必ず助け出さなくてはならないという決意
を、私は心にずっとしまってきました。

 実は9月5日、私は癌の治療を受けてきたのですが、私の主治医から、こういう
宣告を受けました。「あなたの人生は時間に限りがある。この状態だと明日にも
倒れる。だからまずあなたがやるべきことは、最期に対する準備だ。そしてまず
最初にやってほしいことは、生命延長装置を着けないという覚書にサインしてく
ださい」ということでした。

 私よりも歳が若くて、もっとたくさんの色々な病気を持っている北朝鮮の指導
者より先に逝くことについては、悔しくもあるのですが、私は今私が担っている
様々な役職の辞表を出しています。これでずっと私がやってきた自北韓放送の
代表についても、理事会に理由を表明して辞任しました。

 そして最後にやっておきたいことがあるのですが、その中の一つとして、今日
ここに来ました。実は後で詳しく申し上げますが、当時駐日韓国大使館の公使だっ
た洪?(ホン・ヒョン)等を通じて西岡先生を紹介され、そして日本人拉致問題
について知るようになりました。

 その中で横田めぐみさんのことを知り、調べてみたら、めぐみさんは私より2
つ年下です。そして日本の救出運動の中心でいらっしゃるそのお母さんを知るよ
うになり、めぐみさんのお母さんを何と呼べばいいのかな、と悩んだりもしまし
た。ご挨拶します(と早紀江さんに頭を下げる)。

◆日本人の救出運動と連帯したらどうかと

 それでは放送局と拉致問題について話しをします。私たちの自由北韓放送を始
めたのは2004年で、その時金大中政権が北朝鮮と野合して、放送を利用した対北
心理戦を止めたので、「私たち脱北者だけでもやろう」という覚悟を決めて、
2004年に始めました。

 そして今になって、日米韓のキャンプデービッド首脳会談で自由統一が議題な
りました。また今の尹錫悦大統領は「自由統一をする」と話をしています。私た
ちが訴えていたことが、このように大きくなってきました。

 そのような脱北者が自由北韓放送を始めた時、当時の北朝鮮の金正日が、「祖
国を裏切った脱北者たちが南朝鮮に行って、わが党を誹謗する放送局を作ってい
る。絶対許せない。爆破してしまえ。地球の果てまで追いかけて金聖●を殺せ」
という指示を出したと言われています。

 そして私たちの放送局には、人形に赤い血の色のペンキを塗って、果物ナイフ
が刺さったものが、小包として送られてきたり、あるいは別の小包を開けてみた
ら、死んだねずみの死骸が6匹出てきたり、そのような脅迫を受けました。

 皆さんにお配りした資料の3ページに写真が出ていますが、韓国内の左派勢力
が毎日のように放送局の前に来て、抗議デモをやり、集会をやり、そして脅迫を
してきました。

 その中で5人の脱北者が、「何ができるのか。これをやって正しかったのか」。
怖くもなり震えもきて、どうしたらいいかと思っていた時に、西岡先生が訪ねて
きました。

 その時、東京で勤務していた韓国人外交官の洪?さんも来て、「苦しい中でやっ
ているけれども、日本人の救出運動と連帯したらどうか」という提案をしました。
私たちはその時初めて日本人拉致問題について知ったのです。

 当時2,000万ウォンかけてスタジオを作ったのですが、そこから大家さんが
「出ていけ」というので追い出され、地下室で暮らしていたのですが、その時洪?
さんが、部屋を見まわして、「何か手伝うことはないか」と聞いたので、「テレ
ビがない」と言ったら小さなテレビを買って持ってきてくれました

 当時私たちは理事会でこのような議論をしたことを覚えています。金正日
権の独裁性、あるいは人倫にもとる行為をしていることはまちがいないのだが、
100年経って見ると、独裁者だったが人民生活を向上させるために努力してきた。
白いご飯と肉のスープを食べさせるために努力してきたと記録されるかもしれな
い。

拉致問題金正日政権のアキレス腱になる

 しかしこの外国人拉致という問題については、弁解のしようがない悪辣性を証
明する問題だ。これは金正日政権のアキレス腱になるのではないか。この問題を
解決することが独裁政権の牙城をつぶすことにつながるのではないか。外国人を
拉致するということは、彼らは国際社会の一定の地位を得ていたが、外国人を拉
致したことが明らかになったら地位を脅かすことができるのではないか」、その
ような議論をしました。

 その後、日本の拉致被害者救出運動と私たちは自然に、協力、交流をずっとし
てきました。そして日本には、自由北韓放送支援委員会ができて、日本国民の寄
付を私たちはずっと受けてきました。

 また、お亡くなりになった横田滋さん、飯塚?雄さんが率いる家族会代表団が
放送局に何回も訪れ、支援金を贈ってくださいました。

 拉致問題担当の女性大臣(西岡:山谷先生のことだと思いますが)のインタビュー、
あるいはソウルで行われた北朝鮮自由週間の行事に参加するために訪韓された大
臣との5時間にわたる面談(西岡:これは松原仁さんだと思いますが)、それは
ら放送局員と日本の国会議員の面談、これは何回もやりました。

 安倍首相初め3人の首相との面談、あるいは夕食会など様々なことをこの間やっ
てきました。

 そしてこの15年間、西岡先生がスタジオを訪れて、録音して、拉致問題解決の
ための特別番組の放送(西岡:これは月1回言って、10分か15分くらいの番組を4
本くらい録音して、週1回流してもらっています)は、自由北韓送の中で一番
寿命の長い番組になりました。

 またこの3年間は、皆さんはあまりご存じないかもしれませんが、自由北韓
送の番組で毎日8分から10分くらい、一人ひとりの被害者家族の声を北朝鮮にずっ
と流しています(西岡:録音したものです)。

 最近国民大集会大集会で早紀江さんが、金正恩委員長に訴える挨拶をなさった
のですが、この内容を朝鮮語に翻訳して北朝鮮に放送することをやりながら、私
たち放送局の職員はみんな胸が熱くなりました。

 私たちは最近も、ターナー・米北朝鮮人権特使、あるいはアメリの上院、下
院の議員のメッセージを貰ったり、日本の国会議員のメッセージを貰ったりしま
すが、その時いつも日本人拉致問題についても、私たちの方から質問をして、そ
れについて肯定的な反応を得てきました。

 このような私たちの活動に対して、実は台湾の民主基金からアジア民主人権賞、
そして国境なき記者会から自由言論賞、また先ほど西岡先生が話をしてください
ました、今年の7月14日には、尹錫悦大統領から国民勲章冬柏章を授与され、ま
た韓国弁護士会からは北朝鮮人権賞をもらいました。

北朝鮮からの全データを西岡さんに

 そしてもう一つ、実は北朝鮮内部にも私たちの放送への協力者がどんどん生ま
れ、この間様々な内部情報、動画、データ等が提供されました。これも私たちに
対する賞だと思っています。

 日本の北朝鮮問題の専門家である西岡先生に、提供されたデータを抗癌剤
療で苦しい中ですが、整理して、すべてをここに入れて持ってきました。2テラ
(兆)バイトの情報のUSBです。文書で8万ぺージのものを差し上げます(拍手)。

 一部を紹介しますと、韓国軍の捕虜が北朝鮮に抑留されて帰ってこられない人
が、我々の通信員のカメラの前で、「私は韓国人の軍人だ。抑留されて帰れない。
故郷はここだ。ここに弟がいる。誰々がいる」と話している映像、あるいは公開
処刑の映像、人民裁判の映像等多数があるのですが、残念ながら拉致被害に関す
る情報はありません。

 あるいは北朝鮮の工作機関である偵察総局に属する敵工局、敵に対する心理戦
やハッキングをする部のハッカーが自由北韓放送にハッキングをかけてきて、実
際被害も受けたのですが、その内一人を6か月かけてこちらの協力者にしたとい
うやりとりの資料も入っています。

 ここにも来てくださいました私の友人の記者が記事にした北朝鮮経済5か年
計画の資料、あるいは改正された労働党規約、刑事裁判に関する資料等がありま
す。

 実は拉致被害者に関しても、なかったわけではないのです。西岡先生の番組で、
拉致被害者に関する情報をくれれば報奨金を出す」ということを繰り返し放送
した結果、様々な情報が提供され、めぐみさんのものとされる髪の毛も来ました
が、違いました。

 そこには拉致被害者の確かなものはないですが、このような情報をなぜ差し上
げたのは、「敵を知れば百戦百勝」という言葉があるように、相手を知らなけれ
ばならない。北朝鮮そのものを知るためには貴重な情報だという観点から差し上
げたものです。

 偵察総局のハッカーの話をしましたが、300人から600人くらいが中国に出てい
るのですが、その内一人を私が説得して、私たちの協力者にしたと言いましたが、
その人から平壌住民290万人のデータを貰いました。

 (西岡:これは社会安全部という北朝鮮の警察が作ったデータですが、私もそ
れを持っていますが、探してみると曽我ひとみという名前が出てきました。夫は
ジェンキンスと書いてありました。向こうからすると本籍はまだ北朝鮮で、一時
帰国という扱いでしたので抹消されていないのです。あるいは韓国拉致被害者
の名前も出てきます。残念ながらめぐみさんたちの名前はなかった。工作機関の
中にいる人は一般住民とは別のデータに入っています。曽我さんは工作機関の外
にいたのです。そういうデータを貰いました)。

 (入手先を言っても大丈夫かと聞きましたら、「もう大丈夫」とのことでした。
 このデータは日本の情報機関は皆喜んでいました。誰か北朝鮮の人が出てきた
ら、平壌に住んでいる人が多いですから、ソートをかけると、党員かどうか、血
液型まで出てきます。民族でソートすると「日本」とたくさん出てきます。日本
人妻の人たちです。平壌に住んでいる人で、どの人がどんな職業かまで全部出て
きます。北朝鮮のことを観察している情報機関は欲しくてしょうがない基礎資料
が出てきました。
(「朝鮮日報」が大きく報道しましたが、最初はここから出たものです)。

拉致問題を解決しなければ主権を放棄する行為である

 ちょうどこの9月27日に、2002年に小泉純一郎総理が訪朝し、5人の被害者を帰
国させた時、超党派の国会議員が集まる拉致議連会長を務めていた石破茂元自民
党幹事長が、次期首相に選ばれたと聞きました。

 当選の所感で、「日本を安全、安心できる国にする」と言ったそうですが、そ
の前提条件として、自国民拉致問題の解決に全力を傾けて下さることを、私は外
国人でありますが、望みたいと思います。

 そして石破首相の過去の発言を見ると、「制裁だけでは帰国させることができ
なかった。外交交渉が必要だ」とおっしゃっているので、石破新首相が、金正恩
委員長と直接対談して、外交的な方法で拉致問題解決の完成を期待したいと思い
ます。

 外国人であり、脱北者である金聖●から申し上げますが、拉致問題は主権侵害
であり、拉致問題を解決しなければ主権を放棄する行為であることを忘れてはな
らない。

 これまで日本国内と国際社会で自国民拉致の深刻性を強調し、その解決のため
に努力してきた日本政府のやってきたことを、石破政権が継続することを望みま
す。

 27歳で独裁政権世襲し、権力の維持のために腹違いのお兄さんや叔父さんも
毒殺、処刑した金正恩が失敗に失敗を続け、今は先代の遺訓さえも破って、「統
一をしない」というヒステリーさえ起こしている中で、拉致問題決という原則
と家族の訴え、自国民の知性と政府の努力があれば、親の世代が生存している間
に被害者全員を帰国させるという皆さんの決意は必ずかなうと確信いたします。

 私は実は羨ましかったです。韓国には数万人の脱北者がいますが、尹錫悦政権
になって少しは変わってきましたが、北朝鮮に対して堂々と物を言うこともない
時代が続いている中で、日本では総理が中心となる拉致問題対策本部ができて、
家族支援もやり、ラジオ放送もやって、情報活動も活発にやっている姿を見まし
た。

 また家族会が横田さんたちを中心に、固く団結をして、絶対取り戻すと訴える
姿、それを支える救う会の姿、そしてここにいらっしゃる皆さんが、日本の知性
を代表する皆さんが、最後まで皆さんの訴えを聞き、共に戦っている姿を見て、
本当に韓国ではないものだと羨ましく思いました。またこのような皆さんの姿が
あるならば、必ず親の世代が生きている間に被害者を取り戻すことができると、
私は信じるものであります。

 新しく自由北韓放送の代表になった人は、実は北朝鮮でも恵まれた家庭に生ま
れて、金日成総合大学を出た人ですが、韓国に来て金正恩政権の実態に触れて、
立たなければならないと決意をして新しい代表になりました。

◆日本人拉致問題北朝鮮民主化の突破口

李シヨン(イ・シヨン、女性) 皆さん今晩は。私は、金聖●代表と8年、一緒
に仕事をしてきました。

 私は北朝鮮を脱出しようと2年間準備をしました。その2年間で私北朝鮮にい
る家族との別れも準備してきました。しかし、家族を置いて出発する時は本当に
心が痛かったです。今も家族を思い出して、寝ていても覚めることがあります。

 突然、家族と別れなければならなかった家族会の皆さんのお気持ち、地獄に突
然連れていかれた被害者のことを思うと、胸が熱くなります。

 私たち自由北朝鮮放送は20年間、北朝鮮に対して外の情報を入れること、また
民主化を進めること、そして拉致問題について語ることをやってきました。

 日本人拉致問題は、過去にもそうだったし、今も未来もそうですが北朝鮮
主化の突破口になると思っています。なぜなら、いくら独裁者が住民を洗脳教育
をし、歴史を捏造したとしても、外国人拉致問題は隠しようのない犯罪であり、
ひどい人権侵害だからです。

 私たち自由北韓放送は、過去も今も未来も、被害者が帰ってくるまで、家族の
メッセージを北朝鮮に送り続けようと思っています。ですからここにいらっしゃ
る日本の皆さんも、元気を失わないで、自由北韓放送を通じての皆さんのメッセー
ジが被害者に届く、そしてそれが被害者の希望になると、信念を持って、最期ま
で一緒に頑張ってくださればありがたいと思います。

 金聖●代表は、私が横にいる間ずっとそうですが、そしてこれからも、命が奪
われる時まで、北朝鮮民主化のために戦っていかれる方です。

 そこで韓国でも、アメリカでも、協会に通っているキリスト教信者たちが、金
聖●代表のために毎日お祈りを捧げてくれています。

 お祈りの中味は、金聖●代表は北朝鮮が真の民主化がされるまで、私たちと共
にいること、そして神様の国ができること。また金聖●代表が神様に会いに行か
れる日があるならば、大きな苦痛なく会いに行かれるようにお祈りをしています。
皆様も同じ気持ちを持ってくださればありがたいと思います。

金聖● ありがとうございます(拍手)。

西岡 ありがとうございます。自由北韓放送支援委員会というのがあり、私が委
員長をしています。救う会が窓口になって支援金を集めていますので、今後も共
に戦っていきたいと思っています。

 金聖●さんは、脱北者の中の精神的なリーダーなので、いろんないいことがあ
るのですが、金聖●さんに「この人に会いたい」と頼むと全部紹介してくれます。
「最近来たこの人」というと、金聖●さんが電話するとみんな会ってくれます。
それで私も、元工作員という人にたくさん会いました。

 拉致被害者の情報がないというのは、それだけ厳しい工作機関の中に入れられ
ているということですが、その工作機関から来た人たちしか知らないんです。そ
ういう人を紹介してもらったりしてきました。今私たちの手に全く情報がないの
ではないのです。

 しかし、北朝鮮が今それを一番知りたがっています。最後の談判の時が近づい
ていますから、相手にすることができないことがあります。本当にこの20年間、
私たちのために様々な協力をしてくださった方であります。

 「どうしても最後に家族会の人とお別れしたい」ということで、今日来てもら
いました。もう一度金聖●さんに、そして新しい代表に拍手をお願いいたします
(拍手)。

 11月に国民大集会をやろうと思っています。石破首相にも来てもらって、やる
準備をしています。またご案内をいたします。今日はありがとうございました
(拍手)。

以上


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■石破首相にメール・葉書を
首相官邸のホームページに「ご意見募集」があります。
下記をクリックして、ご意見を送ってください。
https://www.kantei.go.jp/jp/iken.html

葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 石破茂殿

救う会全国協議会ニュース

発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)
TEL 03-3946-5780 FAX 03-3946-5784  http://www.sukuukai.jp
担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905
カンパ振込先:郵便振替口座 00100-4-14701 救う会
みずほ銀行池袋支店(普)5620780 救う会事務局長平田隆太郎
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