「天安」沈没海域などでビラ散布、北の対応に注目
2010年5月20日19時0分配信 (C)YONHAP NEWS
白リョン島でのビラ散布のようす=20日、白リョン島(聯合ニュース) 産経新聞
【ソウル20日聯合ニュース】韓国政府が海軍哨戒艦「天安」の沈没原因は北朝鮮の魚雷攻撃だと発表したなか、事故海域の黄海・白リョン島と京畿道・坡州の臨津閣で、北朝鮮向けのビラ散布が行われた。
【ソウル20日聯合ニュース】韓国政府が海軍哨戒艦「天安」の沈没原因は北朝鮮の魚雷攻撃だと発表したなか、事故海域の黄海・白リョン島と京畿道・坡州の臨津閣で、北朝鮮向けのビラ散布が行われた。
自由北韓(北朝鮮)運動連合と拉北者家族会は20日、沈没事件に関する内容のビラビラ50万枚、昨年11月に発生した大青海戦(黄海上での南北銃撃戦)などの真相を扱ったDVD1000枚、携帯用ラジオ600台、1ドル紙幣3000枚を、風船を利用し北朝鮮に向け飛ばした。
両団体は当初、現地の漁船を借り沈没海域に移動する予定だが、海洋警察が高圧ガス容器の船籍を許可しなかったため、北朝鮮が見える白リョン島・沈清閣に場所を変更し、ビラ散布を行った。
櫻井よしこブログ
『週刊新潮』 2010年1月28日号
日本ルネッサンス 第396
偽ドル・マネーロンダリング
統一発展銀行から引き出される交換札には北朝鮮政府の信用の裏打ちがあるはずだが、北朝鮮政府の信用そのものが空疎なため、為替レートは坂を転げ落ちる雪だるまのように膨れ上がり、97年には遂に1対7,000になった。
「つまり紙屑になって消えたのです。そのときから、今度はドルと北韓ウォンの直接交換が始まりました」と張氏。
その前年から金正日は北朝鮮国民に「苦難の行軍」を強いていたが、その中で300万人が餓死した。配給がとまった代わりに市場の設置が許され、市場は急拡大した。そこで通用するのは価値の裏打ちを欠くウォンではあり得ない。ドルである。
「北韓政府はまず、ドルとウォンの為替レートを1対150に設定しました。ところがレートはまたもや急落、09年の年初には1対4,000になりました。平均的労働者の月給が2,000ウォンにすぎないのに、です。北韓政府にとって米国は理念の敵、同時に資本の敵でもあります」
「賃金に市場価格を反映させ、同時に市場そのものを押さえればウォンの価値を守ることが出来ると、彼は考えたのです。しかし、市場は増刷されたウォン紙幣によって活性化し、商品価格は天井知らずとなりました。生産のない市場における輸入対消費という不均衡な経済構造が価格高騰をもたらすのは当然です」
「米国政府がスーパーKをはじめ、北韓によるドル偽造に厳しい監視体制を敷いたこともあり、北韓には大量の偽ドルが蓄積されたのです。金総書記の秘密資金を管理する39号室傘下の金融機関、大成銀行は北韓の全貿易会社に偽造ドルを割り当て、2対1で本物にして返還せよと命じました」
偽造ドル10万ドルを受け取り、本物5万ドルを上納せよということだ。北朝鮮の全機関、全貿易会社が死に物狂いでマネーロンダリングに走ったのだ。米国の摘発でさらに追い詰められると、偽造ドルは国内市場で取引きされるようになり、ただでさえ脆弱な北朝鮮の金融流通システムはさらに危機的状況に陥った。
崩れ落ちようとする巨大ダム
米国は05年9月、偽ドル、麻薬取引き、テロ支援などの理由を掲げて北朝鮮に対する金融制裁に踏み切った。北朝鮮と取引きをする金融機関に、米国の金融機関との一切の取引きを禁止するというもので、それはその金融機関の市場からの撤退、つまり閉鎖を意味していた。対象となったのがマカオの銀行、バンコ・デルタ・アジアだった。
金正日は米国の金融制裁を非常に恐れ、制裁解除に向けて必死の交渉を行った。その理由は、金正日が世界の銀行に保有している50億ドル(約4,500億円)を超える資金を引き出せなくなり、軍や組織を支配出来なくなるからだと考えられた。ところが、もっと別の理由があったと張氏は語るのだ。
「米国の制裁で北韓内でドルがさらに暴騰し、市場不安も高まり、政権の命が脅かされます。為替レートの防御能力が皆無の北韓ほど『外貨による侵略』に脆弱な国はありません。ドルの支配力こそが政権を潰しかねないのです」
だからこそ、金正日は次なる抵抗に進んだ、それが去年暮れの通貨改革だというのだ。ウォンを政府のコントロールの下に引き戻し、貨幣価値を自力で調整しようとしたわけだ。外貨闇取引所への一斉検挙も平仄が合う。だが、と張氏は反問する。
「北韓は崩れ始めた巨大ダムのようなものです。砂袋を積んで持ちこたえられるものでしょうか」