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【NOW in お盆 】「天怒人怨」と「経衰」

 

【石平のChina Watch】     「天怒人怨」と「経衰」

産経新聞
2010.8.12 08:00
  中国では今、国土の半分を巻き込んだ大水害が猛威を振るっている。国家洪水防止総弁公室の統計では、7月26日までに中国全土で28の省(区・市)が洪水の被害を受け、被災した人は1億2400万人、死者は823人、倒壊家屋は68万軒に上ったという。被災地の都市や村々が一瞬にして大洪水にのみ込まれたような大惨事がネットでも確認され、被害の実態はもっと深刻であることが推測される。
 天災と並ぶのは人災の多発である。7月16日、大連市で石油輸送パイプラインが爆発し、28日、江蘇省南京市のプラスチック工場で大規模な爆発が起きて130人以上の死傷者を出した。そして31日、山西省臨汾(りんふん)市郊外の炭鉱会社で火薬爆発事故が起き、死者17人の大惨事となった。
 災害ではなく、犯罪による爆発・炎上事件も起きた。7月4日夜、江蘇省無錫市で鉄鋼会社の送迎バスが同会社の男性従業員による放火で炎繧オて24人が死亡した。21日、湖南省長沙市では高速道路を走った空港シャトルバスが乗客の放火によって爆発・炎上して、12人の死傷者が出た。
当局や警察を標的とする凶悪事件もあった。7月30日、長沙市の東屯税務署分局の建物内で、職員を狙った爆発が発生して、4人が死亡、11人が負傷した。翌日の31日、遼寧省丹東市では暴れた男が市内の公道で白昼堂々と警察官を刺し殺し、その4日後の8月4日、江西省萍郷(へいきょう)市で男が警察の交番にガソリンをかけて火をつけ、警察官を焼き殺した。
 個人的恨みからではなく、集団的不満から発する騒乱事件も続発している。
 7月24日、安徽省の村で地元政府が建設した大型ごみ処理工場のせいで川の水が汚染されたと抗議する下流の住民のデモ隊が警官隊と衝突した。26日、浙江省桐郷市で、金属加工工場から出た汚染物質で健康被害を受けたと訴える住民約500人が抗議のため市庁舎への突入を図り、警官隊ともみ合いになって約50人が負傷した。そして29日、江蘇省泰州市で、市の当局者が行商人を殴ったのを機に数千人による騒乱が発生し、警官隊数百人と衝突し多数が負傷した。
 このように、今年の盛夏に入ってからの中国では、天災と人災が相次ぎ、凶悪事件や騒乱事件が一斉に発生した。「世紀末」と思わせるような騒然たる世の中である。
 中国では昔から、「天怒人怨」(天が怒り人が怨(うら)む)という言葉がある。王朝が崩壊する前夜の政治的・社会的混乱状況を表す慣用語である。その際、「天怒」の兆候とされるのは天災の多発であり、「人怨」のしるしとされるのは民衆による反乱の広がりである。
 そういう意味では、今の中国はまさに「天怒人怨」のさなかにある、といえようが、「天怒」のことはともかくして、「人怨」、すなわち民衆の不満と憤懣(ふんまん)は確実に高まりつつある。
 そして今後、「経衰」とも名付けるべき経済の衰退がやってくる。最近、経済の減速が目の前の現実となっている中、中国人民大学経済学院が発表した「中国マクロ経済の分析と予測(2010年中期版)」では、中国経済がこれから世界金融危機に次ぐ「第二の不況」に陥ることが予測されている。北京師範大学金融研究センター主任の鐘偉教授が「未来10年の中国経済には悲観的だ」との衝撃発言を行ったのは8月4日のことである。
 天に怒られ、人に怨まれ、おまけに経済の繁栄にまで見放されたこの巨大国はいよいよ、大変な時代を迎えようとしている。
                   ◇
【プロフィル】石平
 せき・へい 1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大w大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。