パルデンの会

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 黒竜江省、吉林省、遼寧省で産児制限撤廃へ

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宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021)2月23日(天皇誕生日、火曜日)
通巻第6808号 
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 黒竜江省吉林省遼寧省産児制限撤廃へ
  東北三省の構造的不況の経済をさらに悪化させる怖れと反対論も
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 2015年に中国が「一人っ子政策」をやめてから六年になるが、施行後、むしろ新生児誕生数は減った。
2020年の新生児は中国公安部の調べで1003万5000名だった。
 すでに中国も少子高齢化、とりわけ労働人口の激減が顕著となり、建設現場などには北朝鮮の労働者に加えて、ベトナムラオス、カンボジア、また家庭のお手伝いさんやベビーシッターはフィリピンからの出稼ぎが目立つようになった。

 2021年2月18日、中国政府「国家衛生健康委員会」は、遼寧吉林黒竜江の東北3省で、夫婦1組あたり原則2人までとしてきた産児制限の撤廃を検討するとした。
 東北三省は中国の貧困地帯で、重要な産業は空洞化した。旧満州代に日本が残したインフラで、嘗ては中国でもっとも先進的産業地帯だったが、石炭、鉄鋼が廃れ、急激に活況を失った(ただし国家衛生健康委員会と国家統計局の数字は異なっており、後者のデータでは2019年の出生は1465万人になっている)。

 米ジェイムズタウン財団の『チャイナ・ブリーフ』(2021年2月11日号)に依れば、東北三省もさりながら江蘇省浙江省でも人口減少が見られ、浙江省の温州で出生率は19%減、江蘇省の泰州では33%減となった。

日本企業は遼寧省に集中して投資してきた。だが人材確保もむずかしく過去十年ほどは上海、天津、広州へと方向を切り替え、大連のジャパンヴィラッジ(森ビルの裏手は日本レストラン、バアが集中していた)は閑古鳥、瀋陽からは伊勢丹などが一斉に撤退してきた。
中国では急速な都市化などを背景に少子化が全国的に深刻になっている。

 したがって産児制限を撤廃したところで、少子化に歯止めはかからないだろう。
 原因は教育費の高騰、子育て環境の劣悪さなどが云々されているが、本当のところ、中国の若い世代は将来に夢を抱いていないからである。
 中国語でいうと「未富先老」。

 「幸福を語らない倫理学虚無主義に過ぎない」と三木清は言ったが、日本ばかりか中国も人生の幸せを語ることが激減し、目先のコスト、経済的効果、庶民の関心さえも、マンション投資、株でいくら儲かるか等と視野が急速に狭まった。

 富裕層は子女を海外へ留学させるが、一般庶民は国内の高校を出すことさえままならず、一人っ子だからこそ両親、祖父母、兄弟総動員して出資し、死にものぐるいで大学へやったのだ。ところが、2020年7月の大学新卒者840万人の半分に就労先が無かった。夢は消えた。


 ▲チャイナ・ドリームは何処へ消えたのか

 右肩あがりの上昇気流に乗っている時は、気分も高揚し、なんとかいけそうという楽天主義が生まれる。

経済停滞、不況、就職戦線氷河時代となれば、日本と同様な事象が出来するのだ。そのうえ、中国は言論表現の空間では窒息寸前、発言するにも監視システムをつねに意識するから言動に細心の注意をはらう。
友人とも心底の友情をはぐくめない。日本では若者達の自殺が急増したが、中国人は恥を知らないから自殺しないと言われてきた。これも様変わり、若者の自殺が増えているのである。

 したがって産児制限撤廃の提案は、むしろ反対論を活発化させ、遼寧省などのオンラインでは「経済をますますあっかさせる」と露骨な反対意見が行き交っている。

 経済なき道徳は耐えられるが、道徳なき経済は犯罪であると二宮金次郎が言った。特許、企業機密、ノウハウを盗み、優秀な学者、エンジニアを高給やおんなを餌に釣って、摸倣技術を改良することに中国は驀進してきた。
まことに「道徳なき経済は犯罪」を地でいった中国、産児制限撤廃議論も、経済と直接結びつくとは。
   ◎☆◎◎み☆◎□☆や□◎◎☆ざ◎◎□☆き◎☆◎◎